騒音に係る環境基準の評価マニュアル(一般地域編)
平成27年10月 環境省
1. はじめに
1.1 本評価マニュアルの目的
本マニュアルは、「一般地域」における環境基準の達成状況を評価する方法及びそのための騒音の把握方法を示すことを目的とする。これにより、「一般地域」の騒音の実態把握及び環境基準に基づく統一的な評価が可能となり、対策の必要性や効果の把握、施策の立案を行う上での必要なデータを得ることができ、総合的な施策の推進に資するものである。
なお、環境影響評価に係る手続きや騒音問題に対処する場合においても本マニュアルに準じた方法で行うことが望ましい。
解説
「騒音に係る環境基準について」(平成10年9月30日環境庁告示第64号、以下本マニュアルにおいて「告示」という。)において、一般地域における環境基準の達成状況の地域としての評価方法(以下、地域評価という。)については、「原則として一定の地域ごとに当該地域の騒音を代表すると思われる地点を選定して評価するものとする。」(告示)とされた。
本マニュアルは告示に基づき、環境基準の類型ごとに達成状況を把握する考え方を採用している。
1.2 本マニュアルで用いる用語の意味
(1) 騒音一般に関する用語の意味
①騒音レベル(LA)
A特性音圧の2乗を基準音圧(20μPa)の2乗で除した値の常用対数の10倍で、単位はデシベル(dB)。A特性音圧レベルともいう。
②等価騒音レベル(LAeq,T)
ある時間範囲Tについて、変動する騒音レベルをエネルギー的な平均値として表したもの。時間的に変動する騒音のある時間範囲Tにおける等価騒音レベルはその騒音の時間範囲Tにおける平均二乗音圧と等しい平均二乗音圧をもつ定常音の騒音レベルに相当する。単位はデシベル(dB)。
③時間率騒音レベル(LAN,T)
騒音レベルが、対象とする時間範囲TのN%の時間にわたってあるレベル値を超えている場合、そのレベルをN%時間率騒音レベルという。なお、50%時間率騒音レベルLA50を中央値、5%時間率騒音レベルLA5を90%レンジの上端値、95%時間率騒音レベルLA95を90%の下端値などという。単位はデシベル(dB)。本マニュアルでは特に混同のおそれがない場合には単にLANと表す。
④最大騒音レベル(LA,Fmax)
騒音の発生ごとに観測される騒音レベルの最大値。単位はデシベル(dB)。
⑤最小騒音レベル(LA,Fmin)
騒音の発生ごとに観測される騒音レベルの最小値。単位はデシベル(dB)。
⑥総合騒音
ある場所における、ある時刻の総合的な騒音。
⑦特定騒音
総合騒音の中で音響的に明確に識別できる騒音。騒音源が特定できることが多い。
⑧残留騒音
総合騒音のうち、すべての特定騒音を除いた残りの騒音。
⑨暗騒音
ある特定の騒音に着目したとき、それ以外のすべての騒音。
解説
①騒音レベル(LA) A特性音圧(pA)とは、周波数重み特性Aを通して測定される音圧実効値(パスカルで表した大気中における圧力の瞬時値と静圧との差の二乗の時間平均の平方根)である。単位はパスカル(Pa)。
②等価騒音レベル(LAeq,T) 変動する騒音のレベルのエネルギー的な平均値であり、音響エネルギーの総暴露量を時間平均した物理的な指標であるため、異なる音源からの騒音の合成やしたり、逆に特定の音源の寄与割合を求める等の演算の合理性に富む。このことにより音響的な計算が簡便であり、予測計算方法も単純化される。また、睡眠影響やアノイアンス(人に感じられる感覚的なうるささ)との対応にも優れているとされている。
エネルギー的な総暴露量を反映しているため、発生頻度が少なくレベルの高い騒音(例えば、たまに通過する大型車類など)に対しても比較的敏感な指標である。しかしその反面、測定時に突発的に発生した高レベルの特異音などの測定値への影響が大きく、特に騒音があまり大きくない場所(交通量の少ない道路沿道や一般地域など)における測定では特にこの点に注意を要する。
③時間率騒音レベル(LAN,T) LA50をはじめ、時間率騒音レベルは統計的な指標である。したがって、異なる音源による寄与を合成したり、複合的な騒音から分解することは原理的に不可能であり、複合的な騒音影響の把握や予測計算などでは取り扱いが難しい。
また、ある時間内でレベルの高い騒音が発生しても、その頻度が少なければLA5やLA10は増加するがLA50はほとんど増加しない。このようにLA50は安定した測定値が得られやすいが、逆にレベルの高い騒音の発生に対して敏感な指標ではない。
他方、時間率騒音レベルは、(LA5、LA50、LA95)等の一組の時間率騒音レベルがわかれば、その騒音の統計的性質がある程度わかることになり、騒音エネルギーの平均的暴露量を反映したLAeqだけでは把握できない騒音の統計的な特性を把握する上では重要な指標であるといえる。
④最大騒音レベル(LA,Fmax) 対象とする時間範囲に発生した騒音レベルの最大値(時間重み付け特性Fによる騒音計の指示値の最大値:LA,Fmax)も、測定対象以外の騒音の混入によるLAeqの変動要因を把握するための参考指標となる。
⑤最小騒音レベル(LA,Fmin) 対象とする時間範囲に発生した騒音レベルの最小値(時間重み付け特性Fによる騒音計の指示値の最小値:LA,Fmin)も、暗騒音を把握するための参考指標となる。
⑥総合騒音 従来は「環境騒音」とも呼ばれていた。その場所、その時刻における全ての騒音をいう。
⑦特定騒音 (主に人間の耳で)聞き分けられる個々の騒音であり、何が騒音源であるか特定できることが多い。
⑧残留騒音 総合騒音からすべての特定騒音、即ち音源の特定できる騒音を除いた残りの騒音であり、特に都市部においては都市全体を覆う(指向性の感じられない)遠方の道路交通騒音などが主な騒音源であると考えられる。なお、従来からこの残留騒音を指して「暗騒音(バックグラウンドノイズ)」と呼ぶ場合も多くみられたので注意が必要である。
⑨暗騒音 ある特定の騒音に着目したとき、それ以外のすべての騒音を暗騒音という。したがって、たとえ着目している騒音以外のある騒音の方が大きく支配的であっても、それは暗騒音(の一部)である。
(2) 測定法、測定機器に関連する用語の意味
①基準時間帯
一つの等価騒音レベルの値を代表値として適用しうる時間帯をいう。(「騒音に係る環境基準」では、昼間(6:00~22:00)と夜間(22:00~6:00)を基準時間帯としている。)
②観測時間
騒音レベルを測定する際の対象とする時間をいい、騒音の状態を一定と見なせる時間とする。本マニュアルでは、当面観測時間の長さは1時間とする。
③実測時間
観測時間のうち実際に騒音を測定する時間をいう。例えば本マニュアルでは、道路交通量が一定以上で時間内の変化が小さいような場合には、観測時間1時間のうち実測時間を10分間とする。
④騒音計
「騒音計」とは、騒音レベル(LA)を測定する計測器をいう。計量法第71条の条件に適合した騒音計を使用すること。
⑤周波数重み付け特性
騒音計に用いられている周波数補正特性(回路)をいう。人間の聴覚が音の周波数により感度が異なることなどを考慮して決められた。騒音レベルの測定にはA特性を用いる。
⑥時間重み付け特性
騒音計やレベルレコーダに用いられている音圧実効値を求めるための特性(回路)をいう。指針の振れ速さを変えるので動特性とも呼ばれる。F特性(速い動特性、FAST)とS特性(遅い動特性、SLOW)の2つが用いられ、時定数で表すとそれぞれ0.125秒と1秒である。
⑦ウインドスクリーン
マイクロホンに風が当って発生する風雑音の影響を抑制するためのスポンジ状のキャップをいう。屋外で測定を行う場合は、騒音計のマイクロホンには必ずウインドスクリーンを装着する。
⑧音響校正器
騒音計の感度を校正するための機器をいう。本マニュアルでは、マイクロホンも含めて騒音計が正常に動作することを確認するために使用する。
⑨レベルレコーダ
測定中の騒音レベルの変動の監視、暗騒音レベルを確認するため、騒音レベル等の時間変化を記録紙にペン書き記録する機器をいう。一般の騒音測定では、時間重み付け特性を備えるレベルレコーダに騒音計の交流出力信号を接続して用いる。
解説
①基準時間帯 この時間帯区分は全国で一律に適用される。
②観測時間 観測時間の長さは、騒音の時間変動特性を考慮して適切に定められるべきである。このような騒音時間変動の特性は対象箇所により一律ではなく、一般化することは難しいが、当面は観測時間を1時間単位とする。
④騒音計 測定には、計量法第71条の条件に合格し、JIS C 1509-1の仕様に適合する騒音計(サウンドレベルメータ)を用いる。JIS C 1509-1に適合する騒音計が使用できない場合、JIS C 1502又はJIS C 1505に適合する騒音計を使用してもよい。騒音計の更新や新規購入時には、JIS C 1509-1に適合する機種を選定する。
使用時の留意点は「3.4 測定機器」を参照すること。なお、計量法第71条の条件とは、騒音に係る環境基準の告示において、「測定は、計量法第71条の条件に合格した騒音計を用いて行うものとする。」としており、この条件を満たさない騒音計で測定した結果は環境基準の基準値と比較して評価することはできない。計量法第71条は、検定合格の条件を定めるものであり、計量法第71条の条件に合格した騒音計とは、検定に合格している騒音計である。検定に合格していることは、有効期間内の検定証印等(検定証印又は基準適合証印)が付されていることで確認が可能である。また、騒音を測定・評価し、公表することは計量法上の証明に当たることから、計量法の観点からも有効期間内の検定証印等が付されていない騒音計は使用することできない(計量法第16条)。
検定の技術基準は、特定計量器検定検査規則(以下「検則」という。)で規定されているが、検則が平成27年4月1日に改正公布され、平成27年11月1日に施行されることとなった。今回の改正では、JIS C 1509とは別に検則に引用するために平成26年12月に制定されたJIS C 1516(国際規格であるIEC 61672-1:2013及びIEC 61672-2:2013と整合)を引用することで、「使用環境に応じた性能要求事項及びその検査方法等の追加」、「検定公差及びその検査方法を厳格化」、「校正方法の国際整合化」などの変更が実施された。これにより、平成27年11月1日以降に型式承認を受ける騒音計は、改正検則に合格することとなる。
なお、改正検則には経過措置が設定されている。平成27年10月31日までに型式承認を受けた騒音計は平成29年10月31日までは製造可能である。したがって、平成27年11月1日以降に騒音計を購入した場合でも、改正検則に基づく検定に合格しているとは限らないので注意が必要である。これらの騒音計を含めて改正前検則により型式承認を受けた騒音計(以下「旧型式騒音計」という。)は、平成39年10月31日までは、改正前検則の基準により検定に合格することが可能である。
⑧音響校正器 3年を超えない周期で音響校正器の校正を行うべきである。音響校正器の校正は、通常、製造業者等で行うものであり、使用者が独自に行うことはできない。また、校正に使用するマイクロホンの標準器は、国家計量標準にトレーサビリティが確保できる計量器であるべきであり、国家計量標準にトレーサビリティが確保できる標準器による校正は、以下の二つの場合が考えられる。
- JCSS登録事業者またはそれと同等とみなせる海外の登録事業者による校正であること。(この場合、校正された音響校正器にはJCSS校正証明書が付されていることが望ましい。)なお、同等とみなせる海外の登録事業者とは、例えば、国際試験所認定協力機構(ILAC)又はアジア太平洋試験所認定協力機構(APLAC)の相互承認取決に署名している機関から、ISO/IEC 17025への適合について認定、登録を受けている事業者のことをいう。
- 国家計量標準にトレーサビリティが確保できる標準器を所有する製造業者による校正であること。(この場合、校正された音響校正器には、試験成績書及びトレーサビリティ体系を証明する書類が付されていることが望ましい。)
⑨レベルレコーダ JIS C 1512に適合するものを使用する。ただし、レベルレコーダの値を読み取って等価騒音レベルを求めてはならない。
1.3 対象とする騒音の範囲
「一般地域」で対象とする騒音は、人間活動により発生する騒音である。環境基準の適用対象外である騒音や、環境基準に基づく騒音の評価の妨げとなる騒音は除外して評価を行う。
解説
ここで言う「人間活動により発生する騒音」は、工場・事業場騒音、生活道路における道路交通騒音、営業騒音、近隣生活騒音等である。
2. 評価方法
2.1 評価の対象と評価方法
「一般地域」における騒音環境基準の達成状況の地域としての評価は、原則として一定の地域ごとに当該地域の騒音を代表すると思われる地点を選定して行う。環境基準の達成状況は、原則として環境基準の類型ごとに把握する。
解説
「一般地域においては、騒音の音源が不特定・不安定であるが、道路に面する地域と比べると地域全体を支配する音源がなく、地域における平均的な騒音レベルをもって評価することが可能であると考えられることから、原則として一定の地域ごとにその地域を代表すると思われる地点を選んで評価することが適当である」(平成10年5月22日中環審第132号、以下本マニュアルにおいて「答申」という。)とされたものである。
2.2 評価区域の設定
環境基準の類型ごとにおおむね一定の面積となるように評価区域を設定し、その地点数の割合をもって環境基準達成割合を把握することが考えられる。この場合、評価区域は、連担する1つの基準類型区域を土地利用状況、人口分布等を考慮して分割することにより設定する。
解説
評価区域の設定を行う場合には、町丁目、道路網、国勢調査の調査区等を分割の目安として、類型別面積や類型別人口(住居等戸数)を把握するための調査を行うことが考えられる。
メッシュ法を排除するものではないが、評価区域ごとの面積、人口等のデータを整備して設定する場合には既存の統計区域とするほうが簡便である。
「一定の面積あたり」あるいは「一定の人口あたり」に1箇所選定し、評価地点の均一性を確保(例:「人口一万人あたり1箇所」等)することが望ましいが、地点の選定は基本的には地方公共団体の裁量に委ねるものとする。1つの市町村について1つの類型区分につき数箇所でもよい。
3. 騒音等測定方法
以下の測定方法は、「2. 評価方法」に示された、「一般地域」の地域における環境基準の達成状況を把握・評価するために行う、騒音等の測定方法を示すものである。
3.1 測定地点の設定
当該地域の騒音を代表すると思われる地点は、特定の音源の局所的な影響を受けず、地域における平均的な騒音レベルを評価できると考えられる地点として設定する。
解説
「一般地域」において環境基準の達成状況の地域としての評価を行う場合は、一定の地域ごとに当該地域の騒音を代表すると思われる地点を選定する必要があり、これは、特定の音源の局所的な影響を受けず、地域における平均的な騒音レベルを評価することが可能であると考えられる地点として選定する。
従って、当該地点は、必ずしも住居等の建物の周囲にある地点である必要はなく、例えば空き地であっても、当該地域の騒音を代表すると思われる地点であれば選定してよい。
測定地点の選定にあたっては以下の事項に留意する。
- 評価区域内にある住居等全体の暴露状況を把握できる地点を選定する。
- 特定の発生源による騒音が支配的で、継続して発生している地点は避ける。
- 住居近傍は、生活音の影響を受けやすいため避ける。
- 地域の総合的な騒音の把握のため、公共施設の屋上等の地点も考えられる。
- 継続的に測定を行うことができる地点が望ましい。
- 可能であれば地域内の住居の平均的な道路からの距離を考慮して選定する。
なお、特別の事情がなければ、設定された測定地点において継続的に測定を行うことが望ましい。
3.2 測定項目
測定項目は昼間と夜間の等価騒音レベルLAeqとする。また、騒音レベルの分布特性を把握するため、時間率騒音レベルも測定することが望ましい。
解説
騒音レベルは、基準時間帯(昼間(6:00~22:00)、夜間(22:00~6:00))の等価騒音レベル(昼間:LAeq,16h及び夜間:LAeq,8h)を測定し、計量単位はデシベル(dB)を用いる。
なお、求める値は、ある特定の1時間値や時間帯内の最大値ではなく、基準時間帯(昼間16時間、夜間8時間)を通じたエネルギー平均が原則となる。ただし、基準時間帯の中を騒音が一定とみなせるいくつかの時間(すなわち観測時間)に区分し、観測時間別の等価騒音レベルを測定した後、それらのエネルギー平均値を積分することにより求めてもよい。
特に、「一般地域」の地域評価の測定においては、評価区域内の音源の種類、分布が不特定かつ多様であるため、測定値が安定するためには長時間の測定を必要とする。このため、「一般地域」の地域評価の測定においては、原則として自動連続測定とすることが望ましい。
時間率騒音レベルは、発生要因等測定地点の騒音の特性を把握し、対策を考える上で重要な情報をもたらすものであり、LAeq測定時にLA5、LA10、LA50、LA90、LA95を併せて把握することが望ましい。また、除外音の混入の有無をチェックするためにもLA,Fmaxを、暗騒音をチェックするためにLA,Fminを、同時に把握しておくことが望ましい。
「一般地域」においては、様々な音源が想定されるため、基準時間帯毎に主要な音源を把握・記録しておくことが望ましい。
3.3 測定の時期と時間
(1) 測定時期
騒音の測定は、1年を代表すると思われる日を選び行う。通常は騒音レベルが1年のうちで平均的な状況となる日で、土曜日、日曜祝日を除く平日に行う。
解説
告示では、「評価の時期は、騒音が1年間を通じて平均的な状況を呈する日を選定するものとする。」としている。この平均的な状況を呈する日としては、秋季の平日が考えられる。騒音レベルは季節的に大きな変動は見られないこと、天候等が安定していることから測定は秋季に行うことが望ましい。また、曜日により大きく変動することが考えられるが、「平均的な状況」として平日に行うこととする。
季節的にはその他の季節に行うことも可能であるが、年末年始、帰省時期、夏休み等教育機関の休みの時期は避けるべきである。
(2) 観測時間に区分して間欠的に測定を行う場合の実測時間
観測時間に区分して間欠的に測定を行う場合の実測時間は原則として10分間以上とする。
解説
観測時間に区分して間欠的に測定を行う場合の実測時間とは、実際に騒音を測定する時間であり、騒音レベルの変動等の条件に応じて観測時間の一部、例えば観測時間が1時間であれば、毎正時から10分間等を実測時間とする(図3-1参照)。この場合、連続測定した場合と比べて統計的に十分な精度を確保しうる範囲内で適切な実測時間を定めることが必要である。
「一般地域」においては、10分間測定により観測時間あるいは基準時間帯(評価時間)の代表値を得ることは困難であることが多いが、深夜等で人の活動に伴う騒音発生がほとんどないような場合には、少なくとも10分間以上の実測時間の測定で観測時間代表値としてもよい。
なお、必要な測定時間が確保できない場合に、短時間の測定結果に基づいて環境基準の達成状況を推測することも考えられる。その場合には、短時間の測定結果から基準時間帯を通しての等価騒音レベルを推測できる根拠が必要である。
3.4 測定機器
騒音計は、計量法第71条の条件に適合した騒音計を使用する。
解説
測定には、計量法第71条の条件に合格し、JIS C 1509-1の仕様に適合した騒音計を使用するものとし、かつ検定証印等の有効期間内であることが必要である。
なお、その他留意すべき点を以下に示す。
- レベルレコーダは、突発音等をチェックするために活用することができる。ただし、レベルレコーダの値を読み取って等価騒音レベルを求めてはならない。
- 測定にあたっては、騒音計の電気校正及び音響校正等による動作確認を必ず行う。動作確認には、音響校正器を用い、音響校正器が発生する音に対する騒音計の表示値と騒音計の取扱説明書に記載されている値とを比較して騒音計の感度を点検する。
- 音響校正器を用いて騒音計の指示値を確認する際に、騒音計が表示すべき値は騒音計の型式ごとに決まっている。騒音計が表示すべき値は必ずしも音響校正器の公称発生音圧レベルに等しいとは限らないため、取扱説明書に記載されている値を確認すること。
- 騒音計の表示値と取扱説明書に記載されている値との差が±0.7 dB以上異なっている場合、故障している可能性があるため騒音計の点検修理が必要である。
- 本マニュアルによる測定では、操作ミス防止の観点から、レベル指示値の調整が適切に行われていることを前提として、測定現場において音響校正器を用いて騒音計のレベル指示値の調整は原則として行わない。
- 普通騒音計及び精密騒音計を規定していたJIS C 1502及びJIS C 1505は2005年に廃止されたが、普通騒音計はJIS C 1509-1のクラス2の騒音計に、精密騒音計はクラス1の騒音計に対応している。
- 平成27年4月1日の検則改正により、検定合格の条件がJIS C 1509-1に概ね整合したJIS C 1516により定められるようになった。しかし、JIS C 1516にはJIS C 1509-1に規定されるEMC(電磁両立性)に関する仕様・試験方法等が一部規定されないことから、引続きJIS C 1509-1に適合する騒音計を使用することとした。
- JIS C 1509-1にはEMCに関する性能が規定されており、これに適合する騒音計は、電磁波などによる影響が規格の許容限度値以内である。一方、これに適合していない騒音計は、強力な電磁波による影響を受けていたとしても、それを確認する手段がなく、またその際には騒音計の性能は保証されない。
3.5 騒音測定方法
(1) マイクロホンの位置
マイクロホンは、地域の広域的・全体的な騒音状況を把握する目的から、塀や建物等による局地的な遮蔽あるいは反射の影響を避けうる位置に設置する。
解説
環境基準に係る測定においては、告示にもあるように、「住居等の用に供される建物の騒音の影響を受けやすい面における騒音レベルによって評価」することとされており、その位置としては「建物から1~2m」とされている(「騒音に係る環境基準の改正について(平成10年9月30日大気保全局長通知)」)。
「一般地域」における環境基準の達成状況の地域としての評価は、一定の地域ごとに当該地域の騒音を代表すると思われる地点を選定して行うものであり、特定の音源の局所的な影響を受けず、地域における平均的な騒音レベルを評価できると考えられる地点として設定する必要がある。
そこで、塀や建物等による局地的な遮蔽や反射の影響、あるいは近傍の住居等における生活音の影響を避けうる位置に設置する必要があり、この意味からある程度広い空間のある場所で測定することが望ましい。
(2) 測定点の高さ
マイクロホンの高さは、地域内の住居等の生活面の平均的な高さとする。
解説
環境基準に係る測定は、「住居等の建物の騒音の影響を受けやすい面における騒音レベルによって評価する」ものであり、地域における平均的な騒音レベルにより「一般地域」の環境基準の達成状況の地域としての評価を行うものであるため、測定の高さすなわちマイクロホンの高さは、当該地域内の住居等の生活面の平均的な高さとする必要がある。
これは通常は地上1.2mとなると考えられるが、一律にこの高さに設定しなければならないものではない。評価対象地域の住居等の状況を勘案して測定の高さを設定することを意味しており、例えば低層住宅地であれば1.2m~5.0mの範囲で設定することが可能である。
(3) 騒音計の動特性
騒音計の動特性(時間重み付け特性)はF特性(速い動特性、FAST)とする。等価騒音レベル(LAeq)のみを計測する際はF特性(速い動特性、FAST)、S特性(遅い動特性、SLOW)いずれでもよい。
解説
騒音計の動特性は、時間率レベルを算出する場合に必要となる。なお、等価騒音レベルの対象とする騒音の瞬時A特性音圧は、騒音計内部で演算するので動特性に影響されない。
3.6 除外すべき音の処理
除外すべき音の処理は、分析時に実測時間を細かく区分して、除外すべき音が発生したときの時間区分のデータを除いて統計処理する。
解説
①除外すべき音
航空機騒音、鉄道騒音及び建設作業音は、「騒音に係る環境基準」を適用しないものとされている。これらの騒音が「騒音に係る環境基準」の評価において測定値に影響を与える場合は、測定・評価の対象から除外する。
(注)航空機騒音及び新幹線鉄道騒音については別に環境基準が定められている。 (注)在来鉄道騒音には環境基準がないものの、新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針値が示されている。また建設作業騒音にも環境基準はないが、騒音規制法第15条に基づき規制基準値が定められている。
以下の音については除外して評価する必要がある。
a) 平常でない自然音 鳥の鳴き声、虫の声、木の葉擦れの音等の自然音が等価騒音レベルの測定値に影響を与える場合(騒音レベルは高くないが、長時間続く自然音)は測定・評価の対象から除外する。
b) 通常は発生しない人工音 パトカーが近くを通過する際のサイレン音、整備不良・マフラー改造によって異常に大きな音を発生させる車両の騒音等の発生時間は短いが、騒音レベルが高い音は測定・評価の対象から除外する。
c) 測定による付加的な音 測定を実施することにより発生する音で、異常にLAeqを高くしている場合の音は測定・評価の対象から除外する。測定員への話かけや測定員に吠える犬の声、測定器等を避けるための自転車の急ブレーキ等は除外すべき騒音である。また、咳払い等、測定者自身が発生する音にも注意する。
表 3-2 除外すべき音の判断の事例
| 除外すべき音 | 騒音源の事例 |
|---|---|
| a) 平常でない自然音 | 風雨・枯葉など自然に係る音、カエル・カラス・セミ・秋の虫など動物等の鳴き声等 |
| b) 通常は発生しない人工音 | 事件・事故、暴走族の通過、救急・緊急車両、選挙活動、防災無線等行政的に必要な音、古紙回収などのスピーカーを使った移動販売等 |
| c) 測定による付加的な音 | 測定者に対する話しかけ、測定を見つけての自転車ブレーキ音、犬の鳴き声、測定器に対するいたずら、たまたま測定点の前面に停車した清掃車等 |
前もってこれらの騒音が発生しないような適切な場所、測定時期、測定時間を選定することが重要である。また、測定機器の設置に配慮し、測定を実施中である旨の注意表示等を行うとよい。
なお、発生時間が極端に短い音で等価騒音レベルに影響を及ぼさない騒音については、除外しなくてもよい。
②除外すべき音の処理方法
観測時間内を、適切な実測時間に区分し、区分ごとのLAを連続的に求めておき、後に現場での記録(騒音レベル瞬時値のデジタルデータ、レベルレコーダのチャート紙、野帳等)あるいはLA,Fmax、LA5等から判断して、異常な測定値が観測された実測時間区分を除いた残りの測定値をエネルギー平均して、その観測時間のLAeqとする。この方法による場合でもLAeqの計算に用いるデータの長さは最低10分間確保する。
除外すべき音の処理方法は前述の方法の他、以下による。
a) 除外を要する音を録音し、除外の必要性を判断する 除外すべきか疑いのある音のみを補助的に録音する。除外すべきか疑いのある音とは、設定レベルを超える音が発生した場合に録音を開始するよう設定するもので、測定現場の等価騒音レベルに15~20dB加算したレベルが目安となる。また、一定時間間隔で、例えば10秒間録音するよう設定し、レベルが高くなくても発生時間が長い音について、前後の騒音レベルと比較して測定結果に影響があると判断する場合に除外する方法もある。
b) 騒音計の一時停止機能(ポーズ)により削除 騒音計の一時停止機能(ポーズ)により削除する。測定員は適切な対応がとれる距離で待機する必要がある。
c) 実測時間(例えば10分間値)の値を取得し、後にLAeq、LA,Fmax、LA50等から判断して除外 除外すべき音の発生があったことを測定員が判断して、野帳に発生時間等を記入し、後で該当するデータを削除する。LAを連続記録し、野帳等を参考にして除外する。夜間無人測定などは、除外すべき音の発生があまりないと判断される場合に限る。
3.7 騒音測定時の環境条件
騒音測定時の天候条件として、降雨、降雪・積雪時などは測定を行わない。また、風雑音の影響を低減するために、騒音計のマイクロホンには必ずウインドスクリーンを装着することとし、ウインドスクリーンがあっても、風雑音や電線その他の風切り音により測定値に影響がある場合は測定を中止する。
解説
降雨、降雪・積雪時は、常態の騒音が測定できないことから測定は中止する。
(注)降雨音や濡れた路面により騒音レベルの上昇が予想される反面、積雪による吸音等による低下も考えられる。また社会経済活動が変化して、常態と異なる可能性が高い。
風雑音については、ウインドスクリーンを付けることによって風速5m/s程度までは影響を少なくすることができる。地上付近で長時間風速5m/s以上が続く場合は測定を中止する。
なお、測定当日の気象データ(風向、風速、気温、湿度)、天候については、測定するかまたは最寄りの気象台から入手して記録しておくことが必要である。
3.8 測定結果の整理方法
(1) 測定結果整理様式
騒音測定結果は、以下の騒音の測定方法別に帳票に整理する。
- 一定の実測時間を定め、騒音測定を行った場合
- 観測時間をいくつかの実測時間区分に分け、連続測定を行った場合
解説
①一定の実測時間を定め、騒音測定を行った場合の整理方法
基準時間帯のLAeqは、観測時間別LAeqのエネルギー平均により求める。基準時間帯の時間率騒音レベルは、実測時間に得られた観測時間別の値を算術平均することでは正確には算出できないが、運用上は算術平均値を基準時間帯時間率騒音レベルとして扱ってもよい。
②観測時間をいくつかの実測時間区分に分け、連続測定を行った場合の整理方法
観測時間別LAeqは、有効な実測時間区分別LAeqをエネルギー平均することにより求める。基準時間帯のLAeq、時間率騒音レベルは、①と同様に処理する。
(2) 測定結果の表記方法
騒音測定結果の処理及び表記は、観測時間別LAeqからエネルギー平均により基準時間帯騒音レベルを求める。処理の途中では、有効数字3桁、小数点1桁表示とし、最終的な基準時間帯騒音レベルを公表する場合などは、四捨五入した後、整数表示とする。
また、基準値等と比較する場合は、整数化した騒音レベルを用いて行う。
解説
整数化した騒音レベルを基準値等と比較し評価する場合は、例えば基準値が60 dBであれば、整数化した後の61dB以上の騒音レベルを基準値が超過すると判定する。
表 3-4 騒音レベルの測定結果の例(単位:dB)
| 地域の類型 | 昼間 | 夜間 |
|---|---|---|
| AA | 50.1 | 39.8 |
| A及びB | 54.6 | 45.3 |
| C | 60.8 | 50.4 |
表 3-5 整数化後の騒音レベルの表示例(単位:dB)
| 地域の類型 | 昼間 | 夜間 |
|---|---|---|
| AA | 50 | 40 |
| A及びB | 55 | 45 |
| C | 61 | 50 |
※ 太字の測定点が環境基準60dBを超過している。

