河川砂防技術基準 設計編 技術資料

国土交通省 水管理・国土保全局
原典を見る

本ページは原典を学習用に再構成したものです。最新・正式な内容は原典をご確認ください。

第8節 樋門

8.1 総説

8.1.1 適用範囲

<考え方>

本節は、樋門を新設或いは改築する場合の設計に適用する。ただし、既設の樋門の安全性能の照査にも構造形式や現地の状況等に応じ必要かつ適切な補正を行ったうえで準用することができる。

当該施設の横断する河川又は水路が合流する河川(本川)の堤防を分断して設けるものは水門、堤体内に函渠を設けるものは樋門であり、水門と樋門とでは河川管理施設等構造令の適用が異なる。施設の設置に当たっては、用途、施設規模、施工性、経済性等を考慮して水門と比較検討のうえ施設形式を決定する。通常、支川がセミバック堤(半背水堤)の場合は水門を採用し、自己流堤の場合は樋門を採用することが多い。また、河川管理施設等構造令では、樋門と樋管の区別はなく、通常樋管と称しているものも樋門に含めて取り扱うこととしている。

<標 準>

本節は、樋門(樋管を含む)を新設或いは改築する場合の設計に適用する。

<関連通知等>

  1. 建設省河川局長通達:河川管理施設等構造令及び同令施行規則の施行について、昭和51年11月23日、建設省河政発第70号。

8.1.2 用語の定義

<考え方>

樋門は、本体と胸壁、翼壁、水叩き、遮水工、基礎及び管理橋、操作室等の付属施設の各部位によって構成される。このうち、本体は、ゲート、函渠(管渠を含む)、遮水壁、門柱、ゲートの操作台で構成される。そのほか、樋門の設置に伴い、一体で整備するものとして、護床工、護岸、高水敷保護工がある。

樋門のゲートが引上式の場合の各部位の名称は図8-1による。

図 8-1 樋門の各部位の名称(ゲートが引上式の場合)

<標 準>

次の各号に掲げる用語の定義は、それぞれ以下に示す。

一.柔構造樋門:沈下を許容する直接基礎の樋門

二.剛構造樋門:非たわみ性構造の函渠で、沈下の影響を無視できる直接基礎の樋門

三.残留沈下量:函渠直下における函渠設置後の地盤の沈下量

四.樋門周辺の堤防:樋門本体直上及びその周辺の堤防で、開削や地盤改良等の施工の影響を受ける範囲或いは抜け上がり等の樋門の影響を受ける範囲

8.2 機能

<考え方>

樋門は、堤防機能及び設置目的を達成するために必要な機能を有することが求められる。

<必 須>

樋門は、ゲートを全閉することにより、堤防機能を有するよう設計するとともに、ゲート全閉時以外において、当該施設の設置目的に応じて、取水機能、排水機能、舟を支障なく通行させる機能を有するよう設計するものとする。

<関連通知等>

  1. 建設省河川局水政課長、治水課長通達:河川管理施設等構造令及び同令施行規則の運用について、昭和52年2月1日、建設省河政発第5号、建設省河治発第6号、最終改正:平成11年10月15日建設省河政発第74号・河計発第83号、河治発第39号。

8.3 設計の基本

<考え方>

設計に当たっては、以下の事項について検討し、設計に反映することが求められる。

1)基本方針

樋門の設計に当たっては、樋門が堤体内に函渠を設ける施設であること及び「8.2 機能」に加え、以下の事項を基本とする必要がある。

2)環境及び景観との調和、維持管理の容易性、施工性、事業実施による地域への影響、経済性及び公衆の利用等を総合的に考慮することを基本とする。

3)函軸方向は、堤防方向に直角にすることを基本とするが、高規格堤防特別区域内での函軸方向は、滑らかに通水され、土砂等の堆積のおそれがない場合は、堤防法線に対し直角にしなくてもよい。

4)樋門の構造形式は、柔構造樋門を基本とする。ただし、基礎地盤が良質な場合は、剛構造樋門を採用してもよい。

5)樋門は、樋門に求められる機能を満たすために、土砂が堆積しにくい構造となるよう設計するとともに、維持管理上、堆積土砂等の排除に支障のない構造となるよう設計するものとする。

<必 須>

設計に当たっては、以下の事項を反映するものとする。

1)樋門は、計画高水位(高潮区間にあっては、計画高潮位)以下の水位の流水の作用に対して安全な構造となるよう設計するものとする。また、高規格堤防設置区間及び当該区間に係る背水区間における樋門にあっては、前述の規定によるほか、高規格堤防設計水位以下の水位の流水の作用に対して耐えることができる構造となるよう設計するものとする。

2)樋門は、計画高水位以下の水位の洪水の流下を妨げることなく、周辺の河岸及び河川管理施設等の構造に著しい支障を及ぼさず、並びに樋門に接続する河床及び高水敷等の洗掘の防止について適切に配慮された構造となるよう設計するものとする。

3)樋門は、樋門周辺の堤防との不同沈下は空洞化をできるだけ小さく留める構造となるよう設計するものとする。

4)樋門は、常用電源が喪失した場合においても必要最小限な開閉操作ができるよう設計するものとする。

<標 準>

1)設計に当たっては、樋門に求められる機能を満足するように樋門の位置、函渠の配置、樋門の敷高、構造形式を設定するとともに、設計の対象とする状況と作用に応じた安全性能を設定し、照査によりこれを満足することを確認する。

<推 奨>

1)設計に当たっては、施工の合理化、省力化を図るため、函渠等のプレキャスト化、ユニット化の採用を検討することを推奨する。

2)長期間継続する基礎地盤の残留沈下は、本体の変位・断面力に大きな影響を及ぼすので、地盤改良等の対策工を行い、事前にできるだけ小さくするよう努める。

3)事前の地盤調査は、土層構成、土質、地下水の状況などを把握し、設計に必要な地盤性状及び土層の特性等の条件を設定するため、ボーリング調査・原位置試験及び室内土質試験の組合せで実施することが望ましい。なお、事前の地盤調査結果より軟弱地盤や透水性地盤が想定される場合には、各々の課題に対応した原位置試験等の調査・試験を実施したうえで設計に反映するよう努める。

4)樋門が接続する河川の河床又は水路の敷高と本川の河床との間に落差があるなどの状況により、内水位が本川水位より高くなる場合には、樋門と堤体との接触面に沿って内水が堤外に浸透することがある。この場合、長年の間に樋門と堤体との接触面付近に大きな空隙が生じ、洪水時に突然堤防決壊を引き起こすこともある。したがって、このような場合には、内水が堤外に浸透することについても十分留意する必要があり、接続する河川又は水路の取付護岸は必要な区間に遮水シートを有するコンクリート護岸等とするとともに、翼壁の接続部の水密性を保つようにすることが望ましい。

5)排水のための樋門を設ける場合で、樋門から合流する河川(本川)までの間で段差等が生じており、魚類等の移動のため必要があるときは、当該河川及びその接続する水路の状況等(必要な場合には関係者の意見を含む)を踏まえ、段差等の傾斜緩和、水深の確保等に配慮した構造とすることが望ましい。

6)施工時では、盛土載荷前などの沈下に影響する施工段階に応じ、函体の沈下量を計測して設計時に想定された沈下量以内となっているか観測を行うことが望ましい。また、沈下が想定よりも大きい場合には、門柱や継手において異常が生じていないか、グラウトホールから函体底部と地盤の間隙がないかなどの確認を行うことが望ましい。

<関連通知等>

  1. 国土交通省河川局:美しい河川景観の形成と保全の推進について、平成18年10月19日、国河環第40号、国河治第94号、国河防第376号。

  2. (財)国土技術研究センター:柔構造樋門設計の手引き(Ⅰ 共通編、Ⅱ 基礎構造編)、平成10年11月。

8.4 基本的な構造

8.4.1 函渠の内空断面の設定

<考え方>

函渠の内空断面は、内空幅と内空高で表される。内空高は流下断面に余裕高を加えた高さ、流下断面は計画高水流量又は計画排水量が流下する断面である。

函渠の断面を大きくしすぎると、河積が函渠で急縮することにより、流速が緩くなり、土砂が堆積しやすくなる。流下能力の観点のみから函渠の幅員を設定すると、支川の幅に比べて函渠の幅員が狭くなることがあり、流木等流下物の影響や縮流によるエネルギー損失の影響が大きくなるため洪水の円滑な疎通に支障を来すことがある。また、堆積土砂の排除にも支障が生じる。このようなことから、求められる機能に加えて、維持管理を勘案し、経済性も考慮して、適切な断面を設定することが必要となる。

排水を目的とする樋門にあっては、支川の計画高水流量の流下を妨げず、函渠内の流速が接続する支川の流速に比べて著しく増減することがないよう函渠の内空断面を設定する必要がある。このうち、内水排水を目的とする樋門にあっては、内水対策の計画排水量に対応した函渠の内空断面とする必要がある。なお、計画排水量については、計画する樋門の流域(集水区域)、計画規模並びに降雨の分布を定め、流域内の現況及び将来の土地利用状況を考慮して算出する。

取水を目的とする樋門にあっては、取水計画上問題とならない範囲において対象渇水時の計画取水量が確保できる函渠の内空断面とし、また、舟の通行が見込まれる樋門にあっては、舟の通行に支障を及ぼさない函渠の内空断面とする必要がある。

樋門の内空幅は、門数を2連以上に増やせば増やすほど小さくなって、大水流下物による閉塞の可能性が増大する。流木等流下物による閉塞は、洪水の円滑な疎通を阻害するばかりではなく、ゲートの開閉にも支障を及ぼしかねない。また、ゲートが横方向に極めて細長い形となる場合には、ゲート構造及び開閉機構等が同じ内空幅のゲートに比べ大規模となるため不経済なゲートとなる。以上の観点から、樋門の内空幅は、流木等流下物に対する配慮とゲートの構造上の制約という相反する要素の調整を図って適切なものとする必要がある。

2連以上の函渠の隔壁の端部は、ゲート戸当たりのため中央部の隔壁より厚くなることが多いが、函渠端部の通水断面が中央部より狭くなることがないよう、図8-2のように通水断面を確保する必要がある。

図 8-2 2連以上の函渠端部

<必 須>

函渠の内空断面は、支川の計画高水流量(取水の用に供する樋門にあっては計画取水量、舟の通行の用に供する樋門にあっては計画高水流量及び通行すべき舟の規模)、維持管理を勘案して設定するものとする。なお、河川(「準用河川」を含む)以外の水路が河川に合流する箇所において当該水路を横断して設ける樋門については準用するものとする。

<標 準>

函渠の内空断面は、次により設定することを基本とする。

1)内空断面

函渠の内空断面は、内空幅・内空高とも1m以上とすることを標準とする。

ただし、函渠長が5m未満であって、かつ、堤内地盤高が本川の計画高水位より高い場合においては、内空幅・内空高とも0.3mまで小さくすることができる。また、2門以上の函渠端部の内空幅は、函渠中央部の内空幅と同一とする。

2)排水機能が求められる場合の余裕高

流木等流下物が多い場合を除き、函渠の余裕高は、樋門が横断する河川又は水路の計画高水位に次に掲げる値を加えた高さ以上とする。

  • 計画高水流量が50m³/s未満の場合:0.3m
  • 計画高水流量が50m³/s以上の場合:0.6m

ただし、支川の計画高水流量が20m²/s未満の場合、上記の値を流下断面の水深の1割以上とすることができる。なお、函渠が沈下した場合にも流下能力を確保するため、函渠の余裕高に残留沈下量を加える。

3)ゲートの門数

できる限りゲートの門数を少なくするよう設計することを基本とする。やむを得ず2門以上のゲートが必要となる場合には、それぞれの函渠の内空幅が5m以上を基本とする。ただし、内空幅が内空高の2倍以上となるときは、この限りでない。

<推 奨>

函渠の内空断面積が流下断面積の1.3倍以内の場合には、函渠側壁の内側を支川の計画高水位と堤防の交点の位置とすることを推奨する。こうした場合に、函渠の内空断面積が流下断面積の1.3倍以上となるまで函渠の総幅員(内空幅と中央部の隔壁幅の総和)を縮小することができる。

図 8-3 樋門の断面説明図(流下断面積が1:1.3以内の場合)

8.4.2 函渠長

<考え方>

函渠の長さは、計画堤防断面の川表、川裏の法尻までとなるように設定する必要がある。これは、樋門の機能を確保するように敷高や函渠の内空断面等を設定した結果、堤防断面を切り込まざるを得ない樋門の構造となる場合があるためである。このような場合でも、堤体強度の低下をできるだけ避けるために切り込みを必要最小限とする必要がある。

<標 準>

函渠長は、計画堤防断面の川表、川裏の法尻までとなるよう設計することを基本とする。

<推 奨>

函渠長は、堤防の土留めを目的とした胸壁の配置を考慮して決定する必要がある。函渠頂版の天端から胸壁の天端までの高さは、胸壁が樋門の上の堤防の土留壁として機能することを考慮すると、0.5m程度とし、高くても1.5m以下とすることが望ましい。

図 8-4 函渠長

8.4.3 門柱の天端高

<考え方>

門柱は、主に引上げ式ゲートの開閉を行うために設け、ゲートの開閉が容易な構造とする必要がある。また、門柱の天端高は、ゲート全開時のゲート下端高が取水、排水、舟の通行に支障を及ぼさない高さを確保するとともに、ゲートの維持管理・更新のための戸溝からの取外し等に必要な高さを確保する必要がある。同様に、管理橋の桁下高もそれらに支障を及ぼさない高さとする必要がある。

<標 準>

門柱の天端高は、ゲート全開時のゲート上端部にゲートの管理に必要な高さを加えた高さを確保し、管理橋の桁下高が計画堤防高以上となるよう設計することを基本とする。

<推 奨>

ゲートの管理に必要な高さとしては、引上げ余裕高(0.5m程度)のほか滑車等の付属品の高さを考慮することが望ましい。柔構造樋門等で門柱部の沈下が予測される場合は、予測される沈下量を見込んで天端高を設定することが望ましい。

図 8-5 引上げ余裕高

8.4.4 材質と構造

<考え方>

使用材料は、設置目的に応じて要求される強度、施工性、耐久性、環境適合性等の性能を満足するための品質を有し、その性状が明らかなものでなければならない。このため、JIS等の公的な品質規格に適合し、その適用範囲が明らかな用途に対して使用することが望ましい。公的な品質規格がない材料の場合には、材料特性が樋門に及ぼす影響を試験等によって確認するとともに、品質についてもJIS等の規格と同等であることを確認する必要がある。

(1) 使用料

<標 準>

設置目的に応じて要求される強度、施工性、耐久性、環境適合性等の性能を満足するための品質を有し、その性状が明らかにされている材料を使用することを基本とする。

<推 奨>

鉄筋コンクリート構造物(プレキャスト製品を除く)に用いるコンクリートの設計基準強度24N/mm²、鉄筋の材質SD345を推奨する。

(2) 主な構造

<考え方>

樋門を構成する主な構造としては、函体、遮水壁、門柱、胸壁、ゲートの操作台があり、これらは、鉄筋コンクリート構造又はこれに準ずる構造とし、必要な安全性を確保する必要がある。また、樋門の安全性を確保するため、函体、遮水壁、門柱、胸壁、翼壁、水叩き、遮水工は、部材の安全性の確保と継手部の水密性の確保によって、全体として必要な水密性を有する構造となるよう設計する必要がある。ここで、必要な水密性を有するとは、部材の損傷や劣化、継ぎの開きや角落し等により樋門周辺の堤防の土砂が吸い出されることのない状態を確保する意味であり、部材によっては多少の漏水が生じる状態は許容される。

<必 須>

函体、遮水壁、門柱、胸壁、ゲートの操作台は、鉄筋コンクリート構造又はこれに準ずる構造とする。函体、遮水壁、胸壁、翼壁、水叩き、遮水工は、部材の安全性と継手部の水密性の確保によって、全体として必要な水密性を有する構造となるよう設計するものとする。

ゲートは、鋼構造又はこれに準ずる構造とし、ゲートは確実に開閉し、かつ、必要な水密性を有する構造となるよう設計するものとする。

ゲートの開閉装置は、ゲートの開閉を確実に行うことができる構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

函渠、翼壁、水叩きは必要に応じ継手等によって屈とう性を有する構造とし、護床工は地盤の洗掘や変形に追随する構造となるよう設計することを標準とする。

<例 示>

鉄筋コンクリート構造に準ずる構造には、鋼管及びダクタイル鋳鉄管の事例がある。新しい材料として高耐圧ポリエチレン管、FRP管等の採用が考えられるが、構造的に解決すべき課題もあるため、今後のさらなる調査研究が望まれる。

鋼構造に準ずる構造には、ステンレス製ゲート、アルミ製ゲート等がある。

(3) 設計用定数

<標 準>

設計に用いる各種定数は、適切な安全性が確保できるよう、使用する材料の力学特性を考慮し、必要に応じて調査・試験を実施したうえで、設定することを基本とする。

① ヤング率

<標 準>

設計に用いるヤング率は、使用する材料の特性や品質を考慮したうえで適切に設定することを基本とする。

<推 奨>

ヤング率として、以下の値を用いることが望ましい。

1)ヤング係数

  • コンクリートのヤング係数は、2.5×10⁴ N/mm²
  • 鋼材のヤング係数は、2.0×10⁵ N/mm²

2)ヤング係数比

  • 許容応力度による設計を行う場合の鉄筋コンクリート部材の応力度の計算に用いるヤング係数比は15

② 地盤に係る定数

<標 準>

ボーリング調査、サウンディング調査、現位置試験、室内土質試験を組合せた地盤調査(既往調査含む)や周辺の工事履歴、試験施工等に基づき総合的に判断し、施工条件等も十分に考慮したうえで、地盤に係る定数を設定することを基本とする。

<推 奨>

1)基礎底面と地盤との間の摩擦係数と付着力

基礎底面と地盤との間の摩擦係数と付着力として、以下の値を用いることができる。

表 8-1 摩擦角と付着力

条件摩擦角 ϕB\phi_B(摩擦係数 tanϕB\tan \phi_B付着力 CBC_B
土とコンクリートϕB=2/3ϕ\phi_B = 2/3 \phiCB=0C_B = 0
岩とコンクリートtanϕB=0.6\tan \phi_B = 0.6CB=0C_B = 0
土と土又は岩と岩ϕB=ϕ\phi_B = \phiCB=CC_B = C

ただし、ϕ\phi:支持地盤のせん断抵抗角(度)、CC:支持地盤の粘着力(kN/m²)

2)地盤の許容鉛直支持力

地盤の許容鉛直支持力は、荷重の偏心傾斜及び基礎の沈下量を考慮した地盤の極限支持力に対して、表8-2に示す安全率を確保していることが望ましい。

表 8-2 安全率

常時地震時施工時
322

荷重の偏心傾斜及び基礎の沈下量を考慮した地盤の極限支持力は、次式により求めることができる。平板載荷試験により求める場合には、載荷試験の結果により確認した地盤の粘着力C、せん断抵抗角ϕ\phiを用いて以下の式に従って算出することが望ましい。

Qu=A{αkcNc+kqNq+12γ1βBeNr}Q_u = A' \left\{ \alpha \cdot k \cdot c \cdot N_c + k \cdot q \cdot N_q + \frac{1}{2} \cdot \gamma_1 \cdot \beta \cdot B_e \cdot N_r \right\}

ここに、

  • QuQ_u:荷重の偏心傾斜を考慮した地盤の極限支持力(kN)
  • cc:地盤の粘着力(kN/m²)
  • qq:載荷重(kN/m²)、q=γ2Dfq = \gamma_2 D_f
  • AA':有効載荷面積(m²)
  • γ1,γ2\gamma_1, \gamma_2:支持地盤および根入れ地盤の単位体積重量(kN/m³)。ただし、地下水位以下では、水中単位体積重量を用いる。
  • BeB_e:荷重の偏心を考慮した基礎の有効載荷幅(m)、Be=B2eBB_e = B - 2e_B
  • BB:基礎幅(m)
  • eBe_B:荷重の偏心量(m)
  • DfD_f:基礎の有効根入れ深さ(m)
  • α,β\alpha, \beta:基礎の形状係数
  • kk:根入れ効果に対する割増係数
  • Nc,Nq,NrN_c, N_q, N_r:荷重の傾斜を考慮した支持力係数

(4) 鉄筋コンクリート部材の最小寸法

<標 準>

鉄筋コンクリートの部材の最小寸法は、耐久性、強度を有するために必要なかぶり及び施工性に配慮し設定することを基本とする。

<例 示>

鉄筋コンクリートの部材の最小寸法は、施工性を重視し主鉄筋を内側に配置するため、0.4mが用いられる場合が多い。

8.4.5 樋門周辺の堤防

<考え方>

樋門周辺の堤防は、樋門の施工による埋戻し部分も含まれる。その影響範囲は、対象とする事象によっても異なるが、抜け上がりまで含めれば、堤防縦断方向に堤防高さの2~3倍以上に及ぶ。「8.5 安全性能の照査等」に当たっては、樋門周辺の堤防が一連区間の中の弱点でないことが前提となっており、必要に応じて「第2節 堤防」に準じて安全性の照査を行い、前後区間と比較して相対的に安全性が低下しないように強化対策を行う必要がある。

<必 須>

樋門周辺の堤防が一連区間と比較して相対的に弱点とならないように設計するものとする。

<標 準>

樋門周辺の堤防に用いる土質材料は、堤防に適したものを選定し、十分に締固めを行うものとする。また、樋門周辺の堤防の断面形状は、樋門本体による止むを得ない切り込みを除き、隣接する堤防の大きさ(堤防高、天端幅、堤体幅)及び計画堤防の大きさを上回る大きさを基本とする。

必要に応じて「第2節 堤防」に準じて堤防の安全性の照査を行い、一連区間と比較し相対的に安全性が低下しないよう必要に応じて強化対策を行う。

<関連通知等>

  1. (財)国土技術研究センター:河川土工マニュアル、平成21年4月。

8.5 安全性能の照査等

8.5.1 設計の対象とする状況と作用

<考え方>

樋門の設計に当たっては、常時、洪水時、地震時、高潮時及び風波時の安全性能を確保することが求められる。全ての樋門について、常時、洪水時及び地震時、さらに高潮区間に設けられる樋門は高潮時、湖岸堤等に設けられる樋門は風浪時についても照査する必要がある。照査に当たっては、広域地盤沈下量、基礎地盤の特性、維持管理に必要となる前提条件を設定する必要がある。なお、前提条件は、土質地盤調査等に基づき設定する必要がある。

設計の対象とする作用については、本体やゲート等の自重、計画高水位(高潮区間にあっては計画高潮位)以下の水圧、地震動として河川構造物の供用期間中に発生する確率が高い地震動及び対象地点において現在から将来にわたって考えられる最大級の強さを持つ地震動、土圧、風の影響等の他、地震時には津波による波圧、高潮時には波浪による影響が考えられ、設計の対象とする樋門の状況に応じて適切に組合せて設定する必要がある。

なお、必要に応じて施工時についても安全性能の照査を行う。

<標 準>

安全性能の照査に当たっては、設計の対象とする状況と作用を次の表のように設定し、これを踏まえて照査事項を設定することを基本とする。常時、洪水時及び地震時については全ての樋門において設定し、これに加えて、高潮区間の樋門の場合には高潮時、湖岸堤等に設ける樋門の場合には風浪時について設定することを基本とする。

取水や舟の通行等治水以外の設置目的を有する場合には当該設置目的に応じた常時の作用を適切に設定することを基本とする。

樋門の状況作用
常時自重(死荷重)、活荷重、地盤変位の影響、土圧、水圧、揚圧力、風荷重、温度変化の影響、コンクリートのクリープ及び乾燥収縮の影響、負の周辺摩擦力の影響、雪荷重、プレストレス力等
洪水時自重(死荷重)、活荷重、地盤変位の影響、土圧*、水圧、揚圧力、風荷重、温度変化の影響、コンクリートのクリープ及び乾燥収縮の影響、負の周辺摩擦力の影響、雪荷重、プレストレス力等(※計画高水位、高潮区間にあっては計画高潮位)
高潮時高潮位における波浪による波圧
風浪時風浪による波圧
地震時自重(死荷重)、地震動、活荷重、地盤変位の影響、水圧、揚圧力、温度変化の影響、地盤の影響*、雪荷重、プレストレス力等(※地震時動水圧、液状化の影響)
その他津波による波圧、副振動、セイシュによる影響、施工時荷重、流木の衝突、舟の衝突

高規格堤防設置区間及び当該区間の背水区間の樋門の照査に当たっては、計画高水位での静水圧を高規格堤防設計水位での静水圧に置き換えて行うことを基本とする。

<関連通知等>

  1. 国土交通省:ダム・堰施設技術基準(案)、平成28年3月。
  2. 国土交通省水管理・国土保全局:河川構造物の耐震性能照査指針・解説-Ⅰ、共通編-、平成24年2月。
  3. 国土交通省水管理・国土保全局:河川構造物の耐震性能照査指針・解説-Ⅳ、水門・樋門及び堰編-、令和2年2月(令和2年6月一部追記)。
  4. 国土交通省水管理・国土保全局河川計画課長、治水課長:河川津波対策について、平成23年9月2日、国水計第20号、国水治第35号。

<推 奨>

樋門の設計に当たっては、次の作用を考慮するのが望ましい。

1)自重(死荷重)

自重(死荷重)は、適切な単位体積重量を用いて算出する。材料の単位体積重量は、表8-3、表8-4の値を参考に定めるものとする。

土の単位体積重量は、一般的な値を示したものであり、土質試験データがある場合は、その値を用いて設計することが望ましい。コンクリートについても、できるだけ試験データによることが望ましい。

表 8-3 土の湿潤単位体積重量(kN/m³)

地盤土質緩いもの密なもの
自然地盤砂及び砂礫1820
自然地盤砂質土1719
自然地盤粘性土1418
盛土砂及び砂礫2020
盛土砂質土1919
盛土粘性土1818

表に示す土の湿潤単位体積重量に対して飽和単位体積重量は1kN/m³程度重く、地下水以下の飽和重量は水の重量10kN/m³(9.8kN/m³の丸め)を差し引くため、地下水位以下にある土の湿潤単位体積重量は、それぞれの表中の値から9を差し引いた値としてよい。

地下水位は施工後における水位の平均値を考える。

表 8-4 材料の単位体積重量(kN/m³)

材料単位体積重量
鋼・鋳鋼・鍛鋼77.0
鋳鉄71.0
アルミニウム27.5
鉄筋コンクリート24.5
プレストレスを導入するコンクリート(設計基準強度60N/mm²以下)24.5
プレストレスを導入するコンクリート(設計基準強度60N/mm²を超え80N/mm²まで)25.0
コンクリート23.0
セメントモルタル21.0
木材8.0
歴青材(防水用)11.0
アスファルト舗装22.5

2)活荷重

活荷重は、自動車荷重及び群集荷重とする。自動車荷重は必要に応じ、大型の自動車の交通状況に応じてTL-25荷重を考慮する。群集荷重は、管理橋及び操作台等に3.5kN/m²の等分布荷重を考慮する。

3)地盤変位の影響

地盤変位の影響とは、地盤の変位が樋門本体に与える影響のことであり、設計上は解析対象物の軸線上の変位分布として扱う。

  1. 地盤の沈下による変位(沈下)

地盤の沈下による変位(沈下)としては、樋門の施工後に生じる地盤の残留沈下量分布とする。

  1. 地盤の水平変位による変位(側方変位)

地盤の水平変位による変位(側方変位)としては、樋門の施工後に生じる基礎地盤の側方変位量分布とする。

4)土圧

① 胸壁・翼壁に作用する土圧

胸壁・翼壁に作用する土圧は、原則として表8-5の区分に従って適用する。

表 8-5 土圧の区分

種別常時地震時
胸壁静止土圧地震時主働土圧
翼壁(U形タイプ)静止土圧地震時静止土圧
翼壁(逆T形タイプ)主働土圧地震時主働土圧

a)静止土圧

胸壁・翼壁に作用する静止土圧は、次式による。

Phd=K0(γh+q0)P_{hd} = K_0 (\gamma \cdot h + q_0)

ここに

  • PhdP_{hd}:任意の深さの水平土圧強度(kN/m²)
  • K0K_0:静止土圧係数(通常は K0=0.5K_0 = 0.5 と考えてよい)
  • γ\gamma:土の単位体積重量(kN/m³)
  • hh:任意の深さ(m)
  • q0q_0:上載荷重(kN/m²)

b)主働土圧

主働土圧は、次式による。

Pa=KA(γh+q0)P_a = K_A (\gamma \cdot h + q_0)
KA=cos2(ϕθ)cos2θcos(θ+δ)[1+sin(ϕ+δ)sin(ϕα)cos(θ+δ)cos(θα)]2K_A = \frac{\cos^2(\phi - \theta)}{\cos^2 \theta \cdot \cos(\theta + \delta) \left[ 1 + \sqrt{\frac{\sin(\phi + \delta) \cdot \sin(\phi - \alpha)}{\cos(\theta + \delta) \cdot \cos(\theta - \alpha)}} \right]^2}

ここに

  • PaP_a:任意の深さの主働土圧強度(kN/m²)
  • KAK_A:主働土圧係数
  • ξA\xi_A:主働崩壊角(度)
  • γ\gamma:土の単位体積重量(kN/m³)
  • hh:任意の深さ(m)
  • q0q_0:上載荷量(kN/m²)
  • α\alpha:地表面と水平面のなす角(度)
  • θ\theta:壁背面と鉛直面のなす角(度)
  • ϕ\phi:土の内部摩擦角(度)
  • δ\delta:土圧作用面の種別に応じた壁面摩擦角(度)。土と土の場合:δ=ϕ\delta = \phi、土とコンクリートの場合:δ=ϕ/3\delta = \phi/3

ただし、ϕα<0\phi - \alpha < 0 のときは sin(ϕα)=0\sin(\phi - \alpha) = 0 とする。

上載荷量 q0q_0 は必要に応じて考慮する。ここで用いる角度は反時計回りを正とする。

c)地震時主働土圧

胸壁・翼壁に作用する地震時主働土圧は、次式による。

pEa=KEA(γh+q0)p_{Ea} = K_{EA} (\gamma \cdot h + q_0')
KEA=cos2(ϕθ0θ)cosθ0cos2θcos(θ+θ0+δE)[1+sin(ϕ+δE)sin(ϕαθ0)cos(θ+θ0+δE)cos(θα)]2K_{EA} = \frac{\cos^2(\phi - \theta_0 - \theta)}{\cos \theta_0 \cdot \cos^2 \theta \cdot \cos(\theta + \theta_0 + \delta_E) \left[ 1 + \sqrt{\frac{\sin(\phi + \delta_E) \cdot \sin(\phi - \alpha - \theta_0)}{\cos(\theta + \theta_0 + \delta_E) \cdot \cos(\theta - \alpha)}} \right]^2}

ここに

  • pEap_{Ea}:任意の深さの地震時主働土圧強度(kN/m²)
  • KEAK_{EA}:地震時主働土圧係数
  • ξEA\xi_{EA}:地震時の主働崩壊角(度)
  • γ\gamma:土の湿潤単位体積重量(kN/m³)
  • hh:任意の深さ(m)
  • q0q_0':地震時の上載荷重(kN/m²)
  • α\alpha:地表面と水平面のなす角(度)
  • θ\theta:壁背面と鉛直面のなす角(度)
  • ϕ\phi:土の内部摩擦角(度)
  • δE\delta_E:土圧作用面の種別に応じた地震時壁面摩擦角(度)。土と土の場合:δE=ϕ/2\delta_E = \phi/2、土とコンクリートの場合:δE=0\delta_E = 0
  • θ0\theta_0:地震時合成角(度)、θ0=tan1kh\theta_0 = \tan^{-1} k_h または θ0=tan1kh\theta_0 = \tan^{-1} k_h'

ただし、ϕαθ0<0\phi - \alpha - \theta_0 < 0 のときは sin(ϕαθ0)=0\sin(\phi - \alpha - \theta_0) = 0 とする。また、q0q_0' は地震時に確実に作用するもののみとし、活荷重は原則として含まないものとする。

ここで用いる角度は反時計回りを正とする。

図 8-6 地震時主働土圧

d)地震時静止土圧

翼壁・翼壁に作用する地震時静止土圧は、次式による。

P0E=P0+(PHEPH)P_{0E} = P_0 + (P_{HE} - P_H)

ここに

  • P0EP_{0E}:地震時静止土圧合力(kN)
  • P0P_0:常時の静止土圧合力(水平成分)(kN)
  • PHEP_{HE}:主働土圧状態を仮定した場合の地震時の土圧合力の水平成分(kN)
  • PHP_H:主働土圧状態を仮定した場合の常時の土圧合力の水平成分(kN)

② 函体に作用する土圧

a)鉛直土圧

函体上面に作用する鉛直土圧は、次式により算定する。

Pvd=αγhP_{vd} = \alpha \cdot \gamma \cdot h

ここに

  • PvdP_{vd}:鉛直土圧強度(kN/m²)
  • α\alpha:鉛直土圧係数(α=1.0\alpha = 1.0 と考えてよい)
  • γ\gamma:土かぶり土等の単位体積重量(kN/m³)
  • hh:函体の土かぶり厚さ(m)

b)水平土圧

  1. 剛性函体

剛性函体の側壁に作用する静止土圧は、次式により算定する。

Phd=K0γhP_{hd} = K_0 \cdot \gamma \cdot h

ここに

  • PhdP_{hd}:任意の深さの水平土圧強度(kN/m²)
  • K0K_0:静止土圧係数(通常は K0=0.5K_0 = 0.5 と考えてよい)
  • γ\gamma:土の単位体積重量(kN/m³)
  • hh:任意の深さ(m)

活荷重による水平土圧は、土かぶり厚さに関係なく函体両側面に上載荷重を載荷させて、次式により算定する。

Phde=K0q0P_{hde} = K_0 \cdot q_0

ここに

  • PhdeP_{hde}:上載荷重による水平土圧強度(kN/m²)
  • K0K_0:静止土圧係数(通常は K0=0.5K_0 = 0.5 と考えてよい)
  • q0q_0:上載荷重 q0=10q_0 = 10 kN/m²
  1. たわみ性函体

たわみ性函体の設計は、剛性特性に応じた各々の設計法による。

5)水圧

① 静水圧

樋門の上下流水位について、樋門の操作上考えられる組合せを検討する。ただし、地震時慣性力及び地震時動水圧と計画高水位時における水圧は、同時に作用しない。

ゲート引上げ時には、流水から受ける力を必要に応じて考慮する。

② 地震時動水圧

地震時動水圧は、ウエスターガードの近似式により計算する。

③ 胸壁・翼壁に作用する残留水圧

胸壁・翼壁の前面の水位と背面の水位の間に水位差が生じる場合は、この水位差に伴う残留水圧を考慮する(下図参照)。

感潮区間の場合は、前面潮位差の2/3の水圧差を対象とする。

図 8-7 残留水位の設定方法(常時)

図 8-8 感潮区間の残留水位

6)揚圧力

揚圧力は、樋門の操作上考えられる樋門の上下流の水位差が最大となる水位により求める。

7)風荷重

風荷重は3kN/m²とする。

8)温度変化の影響

温度荷重は、温度変化を±15℃とし、膨張係数を鋼で0.000012、コンクリートで0.00001として計算する。

9)コンクリートのクリープ及び乾燥収縮の影響

① コンクリートのクリープひずみ

コンクリートのクリープひずみは次式により算定することができる。

εcc=σcEcφ\varepsilon_{cc} = \frac{\sigma_c}{E_c} \varphi

ここに、

  • εcc\varepsilon_{cc}:コンクリートのクリープひずみ
  • σc\sigma_c:持続荷重による応力度(N/mm²)
  • EcE_c:コンクリートのヤング係数(N/mm²)
  • φ\varphi:コンクリートのクリープ係数

② コンクリートのクリープ係数

プレストレスの損失量及び不静定力を算出する場合のコンクリートのクリープ係数は、表8-6の値とする。

表 8-6 コンクリートのクリープ係数

持続荷重を載荷する時のコンクリートの材令(日)4~7142890365
早強ポルトランドセメント使用2.62.32.01.71.2
普通ポルトランドセメント使用2.82.52.21.91.4

③ コンクリートの乾燥収縮度

プレストレスの損失量を算出する場合のコンクリートの乾燥収縮度は、表8-7の値とする。

表 8-7 コンクリートの乾燥収縮度(普通及び早強ポルトランドセメント使用の場合)

プレストレスを導入する時のコンクリートの材令(日)3以内4~72890365
乾燥収縮度25×10⁻⁵20×10⁻⁵18×10⁻⁵16×10⁻⁵12×10⁻⁵

10)負の周辺摩擦力の影響

軟弱地盤の層厚が厚い等で負の周辺摩擦の影響が大きいと予想される場合には、遮水矢板等から樋門本体へ伝達する負の周辺摩擦力の影響について考慮する。

11)雪荷重

雪荷重は、雪の単位堆積重量と積雪深の積として求める。一般に多雪地方においては、雪荷重3.5kN/m²を見込めばよい。積雪深は、既往の積雪記録、構造物上での積雪状態などを考慮して設定する。積雪のない地方では考慮する必要はない。ただし、積雪が少ないために積雪深を決定できない場合は、雪荷重を1kN/m²としてよい。

12)プレストレス力

プレストレス力は、プレストレスを与えた直後(プレストレッシング直後)のプレストレス力とその後に生じるコンクリートのクリープ、乾燥収縮及び緊張材のリラクセーションが終わったときの有効プレストレスについて考慮する。

13)地震動

地震動は、構造物の重量に河川構造物の耐震性能照査指針 共通編に規定する水平震度を乗じた水平力とし、これを水流方向及び水流直角方向に作用させる。

14)その他荷重

堤防及び樋門の安全を図るうえで以下の必要な荷重を考慮する。

① 波圧

以下の波圧を考慮する。

a)波浪及び風浪

高潮区間や湖岸堤等で必要に応じて考慮する。

b)津波

津波遡上区間で必要に応じて考慮する。

② その他

  • 副振動、セイシュによる影響
  • 施工時荷重
  • 流木の衝突
  • 舟の衝突

<関連通知等>

  1. (社)日本道路協会:道路橋示方書及び土木構造物設計マニュアル(案)に係わる設計・施工の手引き(案)【樋門編】、平成13年2月。
  2. 国土交通省:土木構造物設計マニュアル(案)に係る設計・施工の手引き(案)【樋門編】、平成13年12月。
  3. (財)国土技術研究センター:柔構造樋門設計の手引き、平成10年11月。
  4. (公社)日本道路協会:道路土工、擁壁工指針、平成24年版。
  5. (公社)日本道路協会:道路土工、カルバート工指針、平成21年版。
  6. 国土交通省:ダム・堰施設技術基準(案)、平成28年3月。
  7. 国土交通省:河川砂防技術基準調査編、平成26年4月版、第21章 海岸調査 第5節 波浪調査。
  8. 建設省河川局:河川砂防技術基準(案)設計編、平成9年9月、第7章 海岸保全施設の設計 第2節 設計基礎条件。

8.5.2 安全性能の照査

<考え方>

樋門における安全性能の照査は、「8.5.1 設計の対象とする状況と作用」に示す状況と作用毎に、照査の条件として適切な外水位及び内水位の組合せを設定し、安全性能について照査する必要がある。

また、樋門における安全性能の照査は、構造や材料の特性に応じた設計手法を適用してモデル化を行い、最も不利な断面力が生じる作用に対して、安全性能が確保できるようにする。なお、最も不利な断面力が生じる作用とは、考慮すべき荷重の組合せのうち、発生応力等が構造物に対して最も不利に働く荷重の組合せをいう。

<標 準>

樋門は、「8.5.1 設計の対象とする状況と作用」に対し、以下の事項について安全性能を設定して照査することを基本とする。

1)常時の安全性能 2)洪水時の安全性能 3)耐震性能 4)風浪等に対する安全性能

<推 奨>

安全性能を照査するに当たっては、以下の手法によることが望ましい。

1)鉄筋コンクリート部材設計

  • 部材の設計に用いる断面力は、弾性理論により算出する。
  • 部材の設計は、許容応力度設計法によって行う。

2)鋼製の門扉の部材設計

部材の設計は、許容応力度設計法によって行う。

(1) 常時の安全性能

<考え方>

樋門の自重や樋門周辺の堤防からの土圧、さらに軟弱な地盤上に樋門を新設する場合には基礎地盤の強度不足又は大きいことによる地盤変位(残留沈下や側方変位)の影響により、洪水等の外力の作用を受けずとも、構造物の安全性が損なわれる可能性があるため、函渠及び胸壁の応力度、基礎の沈下量、支持力等について常時の安全性能の照査を行う必要がある。

また、樋門の基礎或いは地盤改良等による地盤の沈下抑制の影響によって、基礎を含む樋門本体部と周辺地盤との不同沈下による局部的な沈下が生じる。この段差は樋門周辺の堤防に悪影響を与える可能性があるため、樋門周辺の堤防との境界部における不同沈下について照査する必要がある。

<標 準>

樋門の自重や樋門周辺の堤防からの土圧等の作用や地盤変位の影響等の諸条件を設定し、発生する応力度、変位や支持力等を評価し、許容値を満足することを照査の基本とする。

また、沈下抑制対策を行った場合には、盛土終了後に残留する樋門本体位置とその周辺の堤防の圧密沈下量の差分を評価し、許容値を満足することを照査の基本とする。許容値を満足しない場合は、対策工を検討し、そのうえで許容値を満足することを照査する。

新規築堤や引堤のように、樋門とともに樋門周辺の堤防を新たに築造する場合には、樋門周辺の堤防の安全性の照査を行うことを基本とする。

(2) 洪水時の安全性能

<考え方>

樋門は、ゲート全閉時において、計画高水位(高潮区間にあっては計画高潮位)以下の水位の流水の作用に対して安全な構造が求められる。

<標 準>

洪水時の安全性能は、ゲートへの水圧、床版への揚圧力、本体・ゲート・付属施設(操作室・管理橋等)の自重、土圧が作用する状態で、以下の項目について照査することを基本とする。

1)函体の安全性

自重、洪水時の土圧や水圧が作用した状態で函体が安定する(浮き上がらない)ことを確認する。内空高よりも大きい土被りがある函体は照査を省略できる。

2)発生応力

樋門及びゲートの部材に発生する応力が「8.5.3の許容応力度」以下となることを確認する。

3)耐浸透性

樋門と堤体との接触面における浸透に対して、所定の安全性を確保する。

4)ゲート閉鎖の確実性及び水密性

ゲート閉鎖の確実性(床版及び戸溝に土砂が堆積しない、確実な閉操作が可能なこと)、水密性を確保する。

<推 奨>

1)耐浸透性

耐浸透性照査における所要の安全性は、地盤の土質区分、堤防断面形状、考慮する水頭差、遮水工の配置、深さ、長さ、不同沈下が生じる場合にはルーフィング発生による浸透路長の減少を考慮したうえで、レインの式による浸透経路長を満足することを確認する。

CL3+lΔHC \leq \frac{\frac{L}{3} + \sum l}{\Delta H}

ここに、

  • CC:荷重クリープ比(CvC_v:遮水工の鉛直方向の加重クリープ比、ChC_h:遮水工の水平方向の加重クリープ比)
  • LL:本体及び翼壁の函軸方向の浸透経路長(m)
  • l\sum l:遮水矢板等の鉛直方向及び水平方向の浸透経路長(m)(lvl_v:鉛直方向の浸透経路長、lhl_h:水平方向の浸透経路長)
  • ΔH\Delta H:内外水位差(m)

表 8-8 加重クリープ比C

地盤の土質区分C
極めて細かい砂又はシルト8.5
細砂7.0
中砂6.0
粗砂5.0
細砂利4.0
中砂利3.5
栗石を含む粗砂利3.0
栗石と礫を含む砂利2.5
柔らかい粘土3.0
中くらいの粘土2.0
堅い粘土1.8

2)ゲート機能

ゲート機能は、同様の敷高・堤模及び操作形式の樋門・水門における操作の確実性を確認できれば機能を確保しているとみなすことができる。なお、堆砂傾向については、必要に応じて水理模型実験を実施して確認する。

(3) 耐震性能

<考え方>

樋門の耐震性能の照査は、河川構造物の耐震性能照査指針に基づき実施する必要がある。レベル1地震動に対しては、地震によって樋門としての健全性を損なわないか否かを照査する。レベル2地震動に対しては、治水上又は利水上重要な樋門については、地震後において樋門としての機能を保持し、それ以外の樋門については、地震による損傷が限定にとどまり、樋門としての機能の回復が速やかに行い得ることを照査する必要がある。

<標 準>

耐震性能の照査に当たっては、レベル1地震動に対して地震によって樋門としての健全性を損なわないことを照査し、レベル2地震動に対して樋門としての機能を保持する、或いは樋門としての機能の回復が速やかに行い得ることを照査の基本とする。

<推 奨>

レベル1地震動及びレベル2地震動の設定及び応答値の算定は、基本的に静的照査法を用いることができる。レベル2地震動の照査において静的照査法では適切な応答値を算定できない構造の場合には、動的解析を用いた照査を行う必要がある。

<関連通知等>

  1. 国土交通省水管理・国土保全局:河川構造物の耐震性能照査指針・解説-Ⅳ、水門・樋門及び堰編-、令和2年2月(令和2年6月一部追記)。

(4) 風浪等に対する安全性

<考え方>

高潮時及び風波時の波浪並びに計画津波水位以下の津波に伴い、ゲートに波圧・津波荷重が作用する。ゲートの照査に用いる波圧及び津波荷重はダム・堰施設技術基準(案)、防波堤の耐津波設計ガイドラインに基づき設定する必要がある。

樋門周辺の堤防は波の打ち寄せによる侵食に加え、場合によっては堤内地への越波を生じ、堤内地の浸水及び樋門周辺の堤防表法面が洗掘することにより堤防の安全性が損なわれる可能性がある。樋門周辺の堤防に対する照査は、堤防と同様にうちあげ高及び越波量により照査を行う必要がある。

<標 準>

風浪等に対する本体の安全性能の照査は、本体が受ける水圧及び波圧の作用に対して安全性を評価し、許容値を満足することを照査の基本とする。風浪等に対する樋門周辺の堤防の安全性の照査は、「設計編 第1章 河川構造物の設計 第2節 堤防 2.7 安全性能の照査等」を満足することを基本とする。

<関連通知等>

  1. 国土交通省:ダム・堰施設技術基準(案)、平成28年3月。
  2. 国土交通省:防波堤の耐津波設計ガイドライン、平成25年9月。

8.5.3 許容応力度

<標 準>

許容応力度等は、使用する材料の基準強度や力学特性を考慮して、適切な安全性が確保できるように設定することを基本とする。

<推 奨>

許容応力度として、以下の値を用いることが望ましい。

1)コンクリートの許容応力度

表 8-9 コンクリートの許容応力度(N/mm²)

設計基準強度許容曲げ圧縮応力度許容付着応力度許容せん断応力度
248.01.600.39

なお、せん断応力度は、せん断力を部材幅(b)×有効高(d)で割った平均せん断応力度。せん断応力度の照査は、支点が直接支持となっているものは支点の前面より1/2hだけ内側で行ってよい。(h:はり高)

無筋コンクリートの許容応力度は、道路橋示方書・同解説 Ⅳ.下部構造編(平成24年3月26日)による。

2)鉄筋の許容引張応力度

表 8-10 鉄筋の許容引張応力度(N/mm²)

応力度、部材の種類鉄筋の種類 SD345
荷重の組合せに衝突荷重或いは地震の影響を含まない場合 一般の部材※1180
荷重の組合せに衝突荷重或いは地震の影響を含まない場合 厳しい環境下の部材※2160
荷重の組合せに衝突荷重或いは地震の影響を含む場合の許容応力度の基本値200
鉄筋の重ね継手長或いは定着長を算出する場合200

※1 通常の環境や常時水中、土中の場合(操作台に適用)

※2 一般の環境に比べて乾湿の繰返しが多い場所や有害な物質を含む地下水位以下の土中の場合(函渠、胸壁、遮水壁、門柱、翼壁に適用)(海洋環境などでは別途かぶりなどについて考慮する)

3)鋼材の許容応力度(ゲート等の機械設備を除く)

表 8-11 構造用鋼材の母材部及び溶接部の許容応力度(N/mm²)

区分及び応力度の種類SS400 / SMA400WSM490SM490Y / SM520 / SMA490WSM570 / SMA570W
母材部 引張140185210255
母材部 圧縮140185210255
母材部 せん断80105120145
工場溶接 全断面溶込みグループ溶接 引張140185210255
工場溶接 全断面溶込みグループ溶接 圧縮140185210255
工場溶接 全断面溶込みグループ溶接 せん断80105120145
工場溶接 すみ肉溶接、部分溶込みグループ溶接 せん断80105120145
現場溶接 引張原則として、工場溶接と同じ値とする。
現場溶接 圧縮原則として、工場溶接と同じ値とする。
現場溶接 せん断原則として、工場溶接と同じ値とする。

4)許容応力度の割増し

地震、温度変化等の短期荷重を考慮する場合は、表8-12による許容応力度の割増しを行なうことができる。下記以外の荷重の組合せによる許容応力度の割増しを考慮する場合は、個々の状況に応じて適切に定める。

表 8-12 許容応用力度の割増し

短期荷重割増率(%)
温度変化の影響15
風荷重25
地震動50
温度変化の影響+風荷重35
温度変化の影響+地震動65
施工時荷重50

8.6 各部位の設計等

8.6.1 本体

(1) ゲート

① ゲートの構造

<考え方>

ゲートは全閉することによって、洪水時又は高潮時において、計画高水位(高潮区間においては計画高潮位)以下の水位の流水の作用、風浪等における波圧に対して安全な構造となるよう設計する必要があり、河川水が堤防内に入り滞留することを防ぐため、原則として川表側に設ける必要がある。

ゲートは、確実に開閉し、かつ、必要な水密性を有する構造とするため適切なゲート形式を選定する必要がある。樋門のゲートは、一般的に引上げ式のローラゲート、スライドゲート、マイターゲート、フラップゲートが使用されているが、操作の確実な点では引上げ式のローラゲートが最も優れている。しかし、フラップゲートやマイターゲート等の水圧、浮力で開閉するゲートは、頻繁に操作が必要な感潮区間や、中小河川で出水頻度が多く出水時間が早い場合、或いは高潮による急激な水位上昇が発生する場合などに有利であり、高齢化による操作員の減少、安全の確保という背景と操作の確実性という要請などを踏まえると有力な選択肢となり得る。そのため、樋門のゲート構造については、施設の規模、背後地の土地利用状況、個々の状況(管理上、構造上の条件等)を総合的に勘案して選定する必要がある。なお、ゲート形式をフラップゲート又はマイターゲートとする場合は、不完全閉塞を起こす可能性は非常に少なく、不完全閉塞が起こったとしても、治水上著しい支障を及ぼすおそれがないと認められ、かつ、引上げ式ゲートとした場合に、出水時の開閉操作にタイミングを失うおそれがあること、川裏の予備ゲート又は角落し等を設けることにより容易で、かつ、確実に外水を遮断できる構造であることが必要である。

<必 須>

ゲートは、確実な開閉が行えるとともに必要な水密性を有する構造とし、残留沈下及び傾斜を考慮して設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

ゲートは、洪水時、高潮時及び風浪等が作用した場合において、全閉することによって堤防の代わりとなり得るように川表に設けることを基本とする。

ゲート形式及び規模は、本体の形式・規模及び戸当り等、他の設備との配置を考慮して、設計条件を満足するように決定することを基本とする。

扉体構造はプレートガーダ構造を基本とする。

ゲートの基本寸法は、制約条件を考慮して、「8.4 基本的な構造」に準じて決定することを基本とする。

戸当りの形状はゲートの形式に適合したものとし、扉体支承部からの荷重を安全にコンクリート構造物に伝達することができるように寸法、強度及び剛性を有することを基本とする。

<例 示>

河川や設置場所の特性に応じて門柱レスゲートの採用事例がある。門柱レスゲートの主な構造形式を表8-13に示す。

表 8-13 門柱レスゲートの主な構造形式

開閉形式ゲート形式主な主動力方式
ヒンジ形式起伏ゲート無動力式
ヒンジ形式マイターゲート無動力式、機械式、油圧式
ヒンジ形式フラップゲート無動力式、機械式、油圧式

② 開閉装置

<考え方>

樋門は、平常時は全開又は一部開放しており、洪水時又は高潮時にゲートを全閉し堤防機能を確保する必要があることから、確実にゲートを開閉できる開閉装置の設置箇所は、ゲート形式に応じて適切に設定する必要がある。

開閉装置の形式は、標準で示すものの他、使用頻度、流量調整の有無、締切力の有無、操作室のスペース、維持管理等を検討し、選定する必要がある。一般的によく利用される開閉装置形式は、ラック式、ワイヤーロープウインチ式、油圧シリンダ式などがあり、小・中型ゲートでは操作性がよく、扉体自重による急降下も可能なラック式の採用が多い。

開閉装置は、操作の確実性や容易さを考慮し、電動機を原則とする。なお、小規模樋門のゲートでは、経済性を考慮して人力による開閉操作の採用も考えられるが、この場合は、操水位、ゲート形式、自重降下の有無、人力での操作力と操作時間(一般に10kgf以下で操作時間10分未満程度が限界)等を考慮して、所定の機能等を確保する必要がある。

予備電源を設けることにより、常用(商用)電源が暴風雨等において停電した場合でも対応することができ、必要最小限の機能を確保できる。中・小型のゲートでは、ゲート形式と自重降下の有無、開閉装置形式、管理体制等を考慮して、人力による方式も採用でき、この場合、常用(商用)電源の代わりとなる予備電源を省略することもできる。

予備動力を設けることにより、主動力が使用不可能となっても、ゲートを操作することができる。予備動力は、電動機による方式が望ましいが、中・小型のゲートでは、ゲート形式と自重降下の有無、開閉装置形式、管理体制等を考慮して、人力による方式で代用することもできる。

<必 須>

開閉装置は、ゲートの確実な開閉操作を行うとともに必要な水密性を有する構造とし、残留沈下及び傾斜を考慮して設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

開閉装置は、ゲートの開閉を確実に行うために設置し、ゲート形式に応じて適切な箇所に設けることを基本とする。

開閉装置形式の選定に当たっては、設備の設置目的、用途、ゲートの種類、開閉荷重の大きさ、方向及び押下げ力の要否、揚程、開閉装置の設置位置、配置及び設置環境を考慮の上、選定することを基本とする。

開閉装置は、小規模なゲートを除き、電動機等によるものとし、全てのゲートに開閉用予備動力を備えることを基本とする。

<推 奨>

樋門に使用する開閉装置では、小型ゲートについては操作性がよく、扉体自重により急閉鎖も可能なラック式の採用が望ましい。

<例 示>

ゲートの操作は、操作上の安全確保の観点から、機側操作優先で設計されることが多い。ただし、津設・高潮区間や排水機場周辺の連動操作が必要な場合など、管理体制等の条件により遠方操作・遠隔操作を行う場合、十分な安全性を確保したうえで、機側操作に対し遠方操作を優先させる設計を行う場合がある。

ゲートの操作は機側操作が一般的に採用されるが、樋門の目的、規模、現場操作員の負担軽減や安全の確保等の管理体制を踏まえ、必要に応じて自動化、遠方操作化や遠隔操作化を検討することとする。自動化は、計測した水位に応じて自動で開閉操作を行うことができるように改造することや、ゲート自体をフラップゲート等自動開閉が可能なものとすることであり、遠方操作化、遠隔操作化は、管理所や遠隔地から操作を行うことを可能とすることである。

<関連通知等>

  1. 国土交通省:ダム・堰施設技術基準(案)、平成28年3月。
  2. 一般社団法人ダム・堰施設技術協会:ダム・堰施設技術基準(案)(平成28年3月改正)基準解説編・設備計画マニュアル編、平成28年10月。
  3. 一般社団法人ダム・堰施設技術協会:水門・樋門ゲート設計要領(案)、平成13年12月。

(2) 函渠

① 函渠の構造

<考え方>

函渠は、用水、排水及び舟の通行に必要な機能を満足する適切な位置に設ける必要がある。樋門の設置位置の考え方は「8.3 設計の基本」に示すとおりとする。

函渠の構造形式は、継手の構造特性、胸壁・遮水壁等の構造特性及び基礎形式等を考慮して設定し、たわみ性構造及び非たわみ性構造に分類される。たわみ性構造は剛な函体とたわみ性の継手で、或いは函体自体がたわみ性の構造で、表構造樋門として用いられる構造である。

非たわみ性構造は継手が無い1スパンの場合や継手の変形能力が小さい構造であり、変形が許容できない場合に適用され、良好な地盤や地盤改良等を行ったうえで用いる。

函渠の断面、函渠長は「8.4.1 函渠の内空断面の設定」及び「8.4.2 函渠長」に示す内容により設計し、構造形式や端部の取り合いを考慮の上、設定する必要がある。

ゲート前面には必要に応じて角落しを設けるための戸溝を設ける必要がある。川表側は、常時水位が高い場合等においてゲートや函内の維持管理を行うために設ける。川裏側は、川表側と同様に維持管理の利用に加え、異常時の仮ゲート機能の確保のために設ける。それぞれ必要性を検討して設ける必要がある。戸溝幅は、水圧の大きさにより決定される角落しの規模により設定する必要があるが、0.1m程度としている場合が多い。

<必 須>

函渠は、遮水壁、門柱、胸壁、ゲート操作台と一体構造とし、必要な水密性、屈とう性を有する構造とし、残留沈下を考慮して設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

函渠は、目的とする取水機能、排水機能等を満足させ、適切な位置に設けることを基本とする。

函渠の構造形式は、函体の断面構造及び継手の構造特性を考慮して決定することを基本とする。

函渠の断面、函渠長は、「8.4.1 函渠の内空断面の設定」、「8.4.2 函渠長」に示す内容により設計することを基本とする。

ゲート前面には、角落し設置のための戸溝を設けることを基本とする。

<推 奨>

1)函渠端部の構造

函渠端部は、門柱、胸壁、遮水矢板等からの作用の影響や戸溝の設置など函渠中央部よりも設計条件が厳しくなるため、これらの状況に対して安全な構造が求められる。函渠両端部には、図8-9に示すように函渠両端部の頂版部及び川表端部の側壁部の厚さを増して補強することが望ましい。ただし、大規模な樋門で頂版及び側壁の厚さが大きい場合(0.5m以上)には補強の必要はない。また、0.5m以下の場合には、補強後の厚さの上限を0.5mとすることが望ましい。なお、函渠端部の底版の厚さは、下部戸当りのため必要な厚さを考慮し、また、胸壁の底版の厚さと同一となるように定めることが望ましい。

図 8-9 川表函渠端部

2)戸溝部の補強

戸溝による部材厚の減少分については、必要に応じて厚さを増すことによる補強又は鉄筋補強を行うことが望ましい。

3)水生生物等の環境の配慮

川表・川裏側の底版と河床の間に著しい段差を生じさせないなど、水生生物等の生息環境、本支川の移動等を考慮して設計することが望ましい。

② 継手

<考え方>

継手は、地盤の残留沈下量分布、堤防の横断形状、樋門の構造形式、基礎及び地盤の変形特性、基礎形式等を考慮して適切に函渠をスパン割し、設ける必要がある。

継手の構造形式は、想定される変形量に応じた函渠の開口、折れ角、目違い等を検討し、適切な形式を選定する必要がある。一般的には、継手の開口、折れ角、目違いをほとんど拘束しない可とう性継手、継手の目違いを拘束するが、開口、折れ角をほとんど拘束しないカラー継手、継手バネの大きさとスパン間の変位差に応じた断面力を伝達する弾性継手がある。

<必 須>

継手は、必要な水密性及び屈とう性を有する構造とし、残留沈下を考慮して設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

継手は、地盤の沈下・変位に樋門を追随させるために設置し、函渠の適切なスパン割を検討して配置することを基本とする。

継手は、想定される変形量に応じ、適切な構造形式を選定することを基本とする。

<推 奨>

1)継手の設置間隔

継手の最大間隔は20m程度を推奨するが、軟弱地盤における樋門では、不同沈下の影響が避けられないので、継手間隔は地盤条件及び構造特性を考慮した適切な間隔とすることが望ましい。

2)継手の設置位置

継手の位置は、土圧が大きい中央部付近をできる限り避けるようにすることが望ましい。そのため、継手は2箇所以上とすることが望ましく、スパン長や継手部の安全性に配慮して、設置位置を決定する。

③ 扉室

<考え方>

取水のための樋門で、敷高が低い場合や取付水路の延長が長く維持管理ができない場合、又は排水のための樋門で高水敷が公園等に利用されている場合等では、取付水路を函渠構造とすることが多い。このような場合は、ゲートの維持管理や据え付け・取外しを支障なく実施できるよう扉室を設ける必要がある。

図 8-10 扉室

<標 準>

扉室は、取付水路が函渠構造の場合に、函渠内部やゲートの維持管理を行うため、取付水路の函渠と接続部に設けることを基本とする。

<推 奨>

1)マンホールの蓋の浮上り防止

扉室に設けるマンホールは、密閉された状態の空間に河川水が流入することによって圧力が発生し、マンホールの蓋が浮上がることが考えられることから、マンホールの蓋の浮上りを検討し、必要に応じ浮上がり防止のための金具を設けるなどの対策を講ずることが望ましい。

2)マンホール内の昇降施設の設置

昇降施設として維持管理のためのタラップ等を常設し、水没する場合においては、必要に応じてタラップの腐食等を考慮した構造や材質とすることが望ましい。

(3) 遮水壁

<考え方>

遮水壁は、樋門と堤体の接触面で発生する浸透流の卓越に伴うパイピングにより樋門が堤防の弱点となることを防止するため、1箇所以上設ける必要がある。

遮水壁の高さ及び幅は、函渠天端及び函渠側面からそれぞれ1m以上となるように設定するが、土被りが小さい樋門で遮水壁の高さを1mとすることが不適当な場合は、適当な範囲まで縮小することができる。

<必 須>

遮水壁は、函渠と一体構造で必要な水密性を有する構造とし、残留沈下を考慮して設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

遮水壁は、函渠の上面及び側面に沿うパイピングを防止するため、函渠に1箇所以上設けることを基本とする。

遮水壁の高さ及び幅は、函渠天端及び函渠側面からそれぞれ1m以上を基本とする。

<推 奨>

堤防断面が大きく、函渠の長さが長い場合には、遮水壁を2個所以上設けることが望ましい。

図 8-11 遮水壁の設置例

(4) 門柱

<考え方>

門柱は、引上げ式ゲートを採用した場合において、ゲートを引上げるために設ける必要がある。フラップゲートやマイターゲート等のゲート形式の場合は門柱を必要としない。

門柱の高さは「8.4.3 門柱の天端高」に従い、ゲートの大きさ、引上げ余裕等を考慮し、設定する必要がある。

門柱の断面設定においては、設けるゲート及び戸当り金物の規模、設置スペースを考慮して設定する必要がある。

門柱の底部戸当り面は、函渠との段差を生じさせないように函渠底版と同一平面とする必要がある。

<必 須>

門柱は、函渠と一体構造とし、残留沈下及び傾斜を考慮して設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

門柱は、ゲート形式が引上げ式ゲートの場合に設置し、函渠の配置に合わせて設けることを基本とする。

門柱の高さは「8.4.3 門柱の天端高」に従って設定することを基本とする。

門柱の断面は、戸当り金物を十分な余裕をもって取り付けられるように設計することを基本とする。

門柱の底部戸当り面は、函渠底版と同一平面とすることを基本とする。

<推 奨>

1)門柱の構造計算に用いる有効断面には、原則として戸当たりの箱抜き部分の二次コンクリートを考慮せず設計することが望ましい。

2)門柱部の戸当りは、ゲートが取外せるように取外し式又は回転式とすることが望ましい(図8-12参照)。

図 8-12 取外し式戸当りの例

3)門柱と函渠の接続部は、応力集中が考えられるため、図8-13のように斜め補強筋、或いはその他の方法で補強することが望ましい。

図 8-13 門柱と函渠接続部の配筋

(5) ゲートの操作台

<考え方>

操作台は、ゲート操作用の開閉装置及び操作盤等の機器の設置、照明等の付属施設を設けるため、引上げ式ゲートの場合は門柱の上に設ける必要がある。

操作台は、開閉装置の設置及び操作、点検並びに整備等の維持管理が容易に行える広さを有する必要がある。維持管理に必要な広さの設定は、水門・樋門ゲート設計要領(案)6-3-3 開閉操作室に準拠する。

<必 須>

操作台は、門柱と一体構造とし、残留沈下及び傾斜を考慮して設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

操作台は、ゲート操作用の開閉装置、操作盤等の機器を設けるため、門柱の上に設けることを基本とする。

ゲート操作台は、操作性、維持管理に配慮した形状寸法を基本とする。

<推 奨>

操作室の設置に当たっては、耐震性能を確保する観点から極力軽量な材質を適切に選定することが望ましい。

8.6.2 胸壁

<考え方>

胸壁は、堤防内の土粒子の移動及び吸出しを防止するとともに、翼壁が洗掘等により破損し、堤防前面が崩壊した場合においても、一時的に堤防の崩壊を防止できる構造とするため、函渠と一体構造とし、樋門の川表及び川裏に設ける必要がある。

胸壁は、函渠と一体となって堤体土の崩壊を防止する壁構造とするため、逆T形構造を基本とする。

胸壁の函軸直角方向の長さは1m程度とする必要がある。胸壁の横方向の長さは1m程度とし、函体上面からの胸壁の高さは、堤防断面の最小限の切り込みを考慮して決定する必要がある。

<必 須>

胸壁は、函渠と一体の構造で必要な水密性を有する構造とし、残留沈下及び傾斜を考慮して設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

胸壁は、堤防内の土粒子の移動及び吸出しを防止するとともに、翼壁の破損等による堤防の崩壊を一時的に防止できる構造とするため、樋門の川表及び川裏に設けることを基本とする。

胸壁の構造は、逆T形を基本とする。

胸壁の横方向の長さは、1m程度を基本とする。

<推 奨>

函渠頂版の天端から胸壁の天端までの高さは、「8.4.2 函渠長」のとおり0.5m程度とし、高くても1.5m以下とすることが望ましい。

胸壁の断面形状は、図8-14に示すように底版幅(B)は、胸壁高(H)の1/2以上で、かかと(b2)の長さはつま先(b1)の長さ以上とすることが望ましい。

図 8-14 函体端部の構造(門柱部)

8.6.3 翼壁

<考え方>

翼壁は、函渠及び胸壁と分離した構造で、堤防や堤脚を保護し、接続する河川又は水路を円滑に通水させるため、樋門の川表及び川裏に設ける必要がある。

翼壁の構造は、安定性、経済性から図8-15に示すU形断面(Aタイプ)とすることを基本とするが、水路幅が広くなると、底版が厚くなり、品質及び経済性に課題が生じる場合があるため、その場合には逆T形断面(Bタイプ)を採用する。また、必要に応じて水生生物の生息に配慮した形状構造を工夫する。

図 8-15 翼壁標準断面図

翼壁の端部は、接続する河川又は水路及びその周辺からの洗掘等による堤防への影響を避けるため、堤防と並行に壁を設ける必要がある。

<必 須>

翼壁は、必要な水密性及び屈とう性を有する構造とし、残留沈下及び傾斜を考慮して設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

翼壁は、函渠及び胸壁と分離した構造で、堤防や堤脚を保護するため、樋門の川表及び川裏に設けることを基本とする。

翼壁の構造は、U形断面を基本とし、水路幅が広い場合は逆T形断面とする。

翼壁の端部は、堤防と並行に壁を設けることを基本とする。

<推 奨>

1)平面形状

翼壁の平面形は、図8-16のように川表及び川裏に向かって漸拡することが望ましい。

2)設置範囲

翼壁は、図8-16に示すように堤防断面以上(堤防断面の法面を延長し翼壁の底版と交差する範囲)の範囲まで設けることが望ましい。

翼壁の端部は、水路の洗掘等を考慮し、堤防に平行な取付水路の護岸の範囲又は翼壁端部の壁高に1mを加えた値のいずれか高い方の高さとすることが望ましい。

図 8-16 翼壁の平面図及び側面図

8.6.4 水叩き

<考え方>

水叩きは、樋門の安全性を保ち、吐口部及び呑口部の河床と函渠部分の粗度の違い又はゲート開放時の流水等によって河床が洗掘されるのを防止するために設ける必要があり、翼壁の構造形式が「8.6.3 翼壁」の〈標準〉逆T形断面(Bタイプ)となる場合に設ける。

水叩きと翼壁との継手は、水密かつ不同沈下にも対応できる構造で、表面に大きな段差を生じさせないよう設計する必要がある。また、翼壁に設ける遮水工が水叩きによって分断されないように配慮する必要がある。

水叩きは、翼壁の底版を保護する必要があるため、翼壁と同一の長さとする必要がある。

<必 須>

水叩きは、必要な水密性及び屈とう性を有する構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

水叩きは、樋門の吐口部及び呑口部の洗掘を防ぐため、必要に応じて翼壁に設けることを基本とする。

水叩きの先端は、流水による洗掘及び遮水工との接続に配慮した構造であることを基本とする。

水叩きは、翼壁と同一の長さとすることを基本とする。

8.6.5 遮水工

<考え方>

遮水工は、函渠及び翼壁下部の浸透流の卓越に伴う土砂流動と、翼壁前面での河床洗掘による土砂の吸出しにより、樋門が堤防の弱点となることを防止するために、翼壁や函渠に設ける必要がある。

遮水工は、鋼矢板を用いることが多く、遮水工の深さ及び水平方向の長さは、堤防断面形状、水頭差、遮水工の配置を考慮したうえで、レインの式などによる浸透経路長を検討し設定する必要がある。鋼矢板以外の材料とする場合は材料の強度、耐久性、遮水効果について検討を行う必要がある。

<必 須>

遮水工は、必要な水密性及び屈とう性を有する構造とし、残留沈下を考慮して設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

遮水工は、函渠及び翼壁下部の土砂流動と洗掘による土砂の吸出しを防止するため、適切な位置に設けることを基本とする。

遮水工の構造、遮水工の深さ、水平方向の長さは、堤防断面形状、水頭差、浸透経路長、過去の事例などを総合的に検討のうえで決定することを基本とする。

<推 奨>

1)配置

遮水工に用いる矢板は、内外水位差による浸透水の動水勾配を減少させ、樋門下部の土砂流動と洗掘による土砂の吸出しを防止するために図8-17のように設けることが望ましい。

翼壁のU型断面(Aタイプ)、逆T型断面(Bタイプ)の形式は「8.6.3 翼壁」による。

図 8-17 遮水工

2)構造

遮水矢板は、本体と離脱しないように配慮し、水平方向に設ける遮水矢板は必要に応じ屈とう性を有する構造として設計することが望ましい。

3)鋼矢板を遮水工として用いる場合の留意点

鋼矢板を遮水工として用いる場合、安全性、現場条件及び市場性を考慮したうえで、U形(普通型、広幅型)、ハット型の経済比較を行い、適切に選定すること。

鋼矢板の設置間隔が狭く、かつ鋼矢板が長い場合、鋼矢板間に地下水が回り込まず、想定した浸透経路長が確保できない場合がある。そのため、遮水工の深さは2m程度以上、水平方向の長さは遮水壁及び胸壁から2m程度以上かつ開削法面範囲までとし、函軸方向の設置間隔の1/2以下とすることが望ましい。

<例 示>

基礎地盤が良好な場合の直接基礎で鋼矢板の施工が困難な場合は、コンクリートのカットオフとする場合がある。

8.6.6 基礎

<考え方>

基礎は、函渠の構造特性及び地盤変位の影響等に対応できるものとし、樋門の機能を確保するとともに、樋門周辺の堤防が有すべき堤防機能を損なわない構造として設計する必要がある。すなわち、函渠自体の変形がない場合に、函渠周囲の地盤が沈下すると函渠周りに空洞が生じるような基礎とする必要がある。したがって、樋門の基礎は、基礎地盤の残留沈下量及び樋門の構造形式に応じた直接基礎とすることが一般的である。基礎は、残留沈下量と函渠構造との関係より、地盤改良等を含めて経済性を考慮したものとする。なお、沈下抑制対策を行った場合に函渠部とその樋門周辺の堤防の沈下量の差が大きくなる場合は、すり付けのための対策を考慮する必要がある。

樋門の構造形式は、基礎地盤の残留沈下量及び基礎の特性等を考慮して選定を行い、杭(先端支持杭及び摩擦支持杭)基礎等の不同沈下により空洞化が生じやすい基礎形式を避けて、柔構造樋門として設計を行う必要がある。

函渠とその周辺地盤の一体性が十分でなく、函体の直下に空洞が発生した場合、その対策として底版に設置したグラウトホールからグラウトを注入し空洞を充填することが有効である。

<必 須>

基礎は、函渠の構造特性、残留沈下量及び樋門周辺の堤防への影響を考慮し、設計荷重に対して安全な構造とするものとする。

<標 準>

基礎は、函渠及び翼壁の下に同一の基礎で設けることを基本とする。

基礎の形式及び構造は、樋門周辺の堤防との不同沈下或いは空洞化をできるだけ小さく留めるよう適切に選定することを基本とする。

函渠には、グラウトホールを設けることを基本とする。

<推 奨>

1)残留沈下量の抑制

残留沈下量は、樋門の開閉性、水密性、函体の構造特性及び堤体に悪影響を及ぼさない範囲まで抑制することが望ましい。残留沈下量が大きい場合は、地盤改良工法を併用し、スパン割、函体や継手の構造特性等に応じて残留沈下量を適切な範囲に抑制することが望ましい。

地盤の残留沈下量を抑制する地盤改良工法としては、プレロード工法を優先的に検討することが望ましい。

2)空洞化対策

グラウトホールの設置間隔は、過去の施工実績や試験施工、資機材規格(能力)等を踏まえ、一般的に5m程度で設置されているが、遮水矢板の位置、グラウトの能力に応じて決定するのが望ましい。このグラウトホールを利用して、底版下地盤に空洞測定用沈下板を設けることで空洞の発生を観測することができる。

なお、グラウトの追跡調査により効果を検証することが望ましい。

<例 示>

グラウトホールの設置間隔は、軟弱地盤(「ガタ土」と呼ばれる微細な粘土及び泥炭)上において試験施工を行い決定した事例や底面については2m程度とした事例がある。

<関連通知等>

  1. 建設省河川局水政課長、建設省河川局治水課長通達:河川管理施設等構造令及び同令施行規則の運用について、昭和52年2月1日、建設省河政発第5号、建設省河治発第6号、最終改正:平成11年10月15日建設省河政発第74号、河計発第83号、河治発第39号。
  2. (財)国土技術研究センター:柔構造樋門設計の手引き(Ⅰ 共通編、Ⅱ 基礎構造編)、平成10年11月。

8.6.7 護床工

<考え方>

護床工は、流速を弱め流水を整え、併せて流水による洗掘等から堤防や函渠、水叩きを保護するために翼壁前面に設ける必要がある。

護床工の構造は、水叩き下流で流水が減勢される区間では、鉄筋により連結されたブロック構造又はコンクリート構造等とし、その下流の整流となる区間では、粗度沈床、木工沈床、改良沈床、コンクリート床版、コンクリートブロック等が用いられる。そのため、屈とう性を有する構造とし、硬い構造のものから漸次軟らかい構造のもので河床になじみやすくするような配慮が必要である。

根固めブロックによる護床工の例を図8-18に示す。

図 8-18 護床工(根固めブロックの例)

<必 須>

護床工は、必要な屈とう性を有する構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

護床工は、樋門の吐口部及び呑口部の流水による洗掘を防ぐため、翼壁の前面に設けることを基本とする。

護床工は、水叩きと河床との洗掘を防ぐことができる長さ及び構造となるよう設計することを基本とする。

8.6.8 護岸

<考え方>

護岸は、樋門の影響による流水の乱れ、高潮時及び風浪時の波浪、計画津波水位以下の津波及び越波に対し堤防を保護するとともに、樋門及び樋門周辺の堤防が一連区間の中で相対的な弱点とならないように護岸を設ける必要がある。

樋門が横断する河岸又は堤防に設ける護岸は、樋門の両端(胸壁又は翼壁のいずれか長い方の端部)から上流及び下流にそれぞれ10mの地点を結ぶ区間以上、堤防天端での開削幅がカバーできる区間以上のいずれか大きい区間に設ける。既設護岸と近接する場合は、その区間を空けずに連続させる必要がある。また、管理橋下の堤防の法面は、図8-19に示す範囲に護岸を設ける必要がある。

護岸の形式及び構造は、「改訂 護岸の力学設計法」を参考に設定する必要がある。

図 8-19 樋門の護岸の例

護岸には、多くの形式があり、使用される素材、構造の外観等はさまざまであるが、設置箇所の河道特性や周辺の護岸形式及び構造を踏まえて設計する必要がある。

<必 須>

護岸は、流水の変化に伴う河岸又は堤防の洗掘を防止する構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

護岸は、流水等の作用により、堤防又は河岸を保護するため、適切な範囲に設けることを基本とする。

護岸の形式及び構造は、設置箇所の河道特性及び樋門周辺の堤防環境を考慮し、適切に設定することを基本とする。

<関連通知等>

  1. (財)国土技術研究センター:改訂 護岸の力学設計法、平成19年9月。

8.6.9 取付水路

<考え方>

取付水路によって高水敷が上下流に分断されることにより、その一体的利用が損なわれないように、取付水路の横断や親水性等に配慮する必要がある。堤防への影響を最小限に留めるように、川表の取付水路は、翼壁前面から低水路に向かって、川裏は支川水路との取付部に、堤防法線に直角に設ける必要がある。

取付水路は、樋門の円滑な取水機能及び排水機能を満足するとともに、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。なお、高水敷の河川横断方向に設ける樋門の取付水路については、工作物設置許可基準第十を参照する。

<必 須>

取付水路は、樋門の円滑な取水機能及び排水機能を満足するとともに、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

取付水路は、堤防に及ぼす影響を最小限に留めるよう、堤防法線に直角に設けることを基本とする。

<推 奨>

支川の河床又は敷高と本川の河床とに落差があるなどの状況により、内水位が本川水位より高くなる場合には、樋門と堤体との接触面に沿って内水が堤外に浸透することがある。この場合、長年の間に樋門と堤体との接触面付近に大きな空隙が生じ、洪水時に突然堤防決壊を引き起こすこともある。したがって、このような場合には、内水が堤外に浸透することについても十分留意する必要があり、支川の取付護岸は必要な区間に対して遮水シートを有するコンクリート護岸等とするとともに、翼壁の接続部の水密性を保つようにすることが望ましい。

<関連通知等>

  1. 河川管理技術研究会編:改訂 解説・工作物設置許可基準、(財)国土技術研究センター、平成10年。

8.6.10 高水敷保護工

<考え方>

高水敷保護工は、樋門の翼壁部分又は取付水路によって上下流に不連続となり、一般にその部分で乱流が起こり、洗掘を受けやすいので、必要な範囲に高水敷保護工を設ける必要がある。

高水敷保護工の構造は、一般には、カゴマット、連節ブロック等を用いて流水の作用による高水敷の洗掘を防止するとし、かつ、周辺景観との調和、河川の生態系の保全等の河川環境に配慮して覆土を行う必要がある。

取付水路の保護工は、取付水路の範囲に周辺護岸や高水敷の利用を踏まえて設ける必要がある。

<必 須>

高水敷保護工は、高水敷の洗掘を防止する構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

<標 準>

高水敷保護工は、流水等の作用による高水敷の洗掘を防止するため、必要に応じて高水敷護岸前面に設けることを基本とする。

高水敷保護工は、河川の生態系の保全等の河川環境に配慮した構造を基本とする。

高水敷保護工は、「8.6.8 護岸」で示す護岸の範囲において設けることを基本とする。

8.6.11 付属施設

<考え方>

付属施設には、操作室、樋門操作員待機場、管理橋、管理用階段、照明設備、水位観測施設、船舶通航用の信号、繋船環、防護柵等があり、ゲート操作のための水位把握、操作員等の安全確保、維持管理に必要な施設を設ける必要がある。

<標 準>

樋門には、維持管理及び操作のため、必要に応じて付属施設を設けることを基本とする。

<関連通知等>

  1. 国土交通省:道路橋示方書・同解説、平成29年7月21日。
  2. 国土交通省:ダム・堰施設技術基準(案)、平成28年3月。

8.6.12 既存施設の自動化・遠隔化

<考え方>

新設の樋門のゲートの操作のための設備については、必要に応じて自動化、遠方操作化や遠隔操作化を検討することとしているが、既存の樋門のゲートの操作のための設備についても、樋門の目的、規模、操作員の負担軽減や安全の確保等の管理体制を踏まえ、必要に応じて自動化、遠方操作化や遠隔操作化を検討することとする。

自動化は、計測した水位に応じて自動で開閉操作を行うことができるように改造することや、ゲート自体をフラップゲート等自動開閉が可能なものとすることであり、遠方操作化、遠隔操作化は、管理所や遠隔地から操作を行うことを可能とすることである。

<標 準>

既存の樋門のゲートの操作のための設備については、必要に応じて自動化、遠方操作化や遠隔操作化を検討することを基本とする。

<関連通知等>

  1. 国土交通省:CIM導入推進委員会:CIM導入ガイドライン(案)、令和2年3月。

8.7 樋門構造に関するその他の事項

<考え方>

1)現況施設の能力を上回る事象に対する対応について

現況施設能力を上回る洪水の生起により計画高水位を超えるような事象が頻発しており、今後の気候変動の影響によっては、このような事象が更に増えることも考えられる。そのため施設能力を上回る外力に対し、「構造上の工夫」により減災を図ることが求められる。

2)気候変動を踏まえた施設設計について

今後、気候変動により外力が更に増加する可能性があることにも留意する必要がある。そのため、外力の増加への対応として、大規模な改良とならないよう補強しやすい構造とする又は、あらかじめ対策を施すなどの設計が求められる。

3)ICTやBIM/CIMの利用

i-Construction推進の一環として、ICTによる建設生産プロセスのシームレス化が取り組まれている。UAV写真測量やレーザースキャナー計測などで得られる3次元点群データを活用することで、現況地形や既設構造物の構造を様々な角度・断面から把握することができる。新設・改修する施設の3次元モデルを作成し活用することにより、構造に関して関係者の理解と合意形成が促進される。このため、計画段階など事業の早期段階をはじめ、施工段階、施工後の点検・補修・修繕の段階においてBIM/CIMを積極的に活用し、樋門本体及び樋門周辺の堤防を適切に維持管理していくことが求められる。

<関連通知等>

  1. 国土交通省:CIM導入推進委員会:CIM導入ガイドライン(案)、令和2年3月。