9.1 総説
9.1.1 適用範囲
<考え方>
本節は、水門を新設或いは改築する場合の設計に適用する。ただし、既設の水門の安全性の照査にも構造形式や現地の状況等に応じ必要かつ適切な補正を行ったうえで準用することができる。
水門と堰との区別は、堤防の機能を有しているかどうかで定まる。河口付近に河川を横断して設ける高潮の遡上を防止するための施設は、河口堰と外見はほとんど変わらなくても、水門(防潮水門)である。また、放水路等の分派点に設ける分流施設には、堰と称すべきものと水門と称すべきものがある。計画高水流量が流下するときにゲートを全閉する施設は水門、計画高水流量が流下するときに分流する施設は堰であり、水門と堰では河川管理施設等構造令の適用が異なる。
また、当該施設の横断する河川又は水路が合流する河川(本川)の堤防を分断して設けるものは水門、堤体内に函渠を設けるものは樋門であり、水門と樋門とでは河川管理施設等構造令の適用が異なる。施設の設置に当たっては、用途、施設規模、施工性、経済性等を考慮して水門と比較検討のうえ施設形式を決定する。通常、支川がセミバック堤(半背水堤)の場合は水門を採用し、自己流堤の場合は樋門を採用することが多い。
<標準>
本節は、水門を新設或いは改築する場合の設計に適用する。
<関連通知等>
1)建設省河川局長通達:河川管理施設等構造令及び同令施行規則の施行について、昭和51年11月23日、建設省河政発第70号.
9.1.2 用語の定義
<考え方>
水門は、本体と胸壁、翼壁、水叩き、遮水工、基礎及び操作室、管理橋等の付属施設の構造各部位によって構成される。このうち、本体は、ゲート、床版、堰柱、門柱、ゲートの操作台で構成される。そのほか、水門の設置に伴い、一体で整備するものとして、護床工、護岸、高水敷保護工がある。
水門のゲートが引上式の場合の各部位の名称は、図9-1による。
図 9-1 水門の各部位の名称(ゲートが引上式ゲートの場合)
<標準>
次の各号に掲げる用語の定義は、それぞれ以下に示す。
一.径間長:隣り合う堰柱の中心間距離
二.カーテンウォール:ゲートと一体となって堤防の機能を発揮する止水壁
三.水門周辺の堤防:水門の周辺の堤防で、水門本体との取り付けに伴う開削や杭基礎等の施工の影響を受ける範囲
9.2 機能
<考え方>
水門は、堤防機能及び設置目的を達成するために必要な機能を有することが求められる。
<必須>
水門は、ゲートを全閉することにより、堤防機能を有するよう設計するとともに、ゲート全閉時以外において、当該施設の設置目的に応じて、取水機能、排水機能、舟を支障なく通行させる機能を有するよう設計するものとする。
<関連通知等>
1)建設省河川局水政課長、治水課長通達:河川管理施設等構造令及び同令施行規則の運用について、昭和52年2月1日、建設省河政発第5号、建設省河治発第6号、最終改正:平成11年10月15日建設省河政発第74号・河計発第83号・河治発第39号.
9.3 設計の基本
<考え方>
設計に当たっては、以下の事項について検討し、設計に反映することが求められる。
<必須>
設計に当たっては、以下の事項を反映するものとする。
1)水門は、計画高水位(高潮区間にあっては、計画高潮位)以下の水位の流水の作用に対して安全な構造となるよう設計するものとする。また、高規格堤防設置区間及び当該区間に係る背水区間における水門にあっては、前述の規定によるほか、高規格堤防設計水位以下の水位の流水の作用に対して耐えることができる構造となるよう設計するものとする。
2)水門は、計画高水位以下の水位の洪水の流下を妨げることなく、周辺の河岸及び河川管理施設の構造に著しい支障を及ぼさず、並びに水門に接続する河岸及び高水敷等の洗掘の防止について適切に配慮された構造となるよう設計するものとする。
3)水門は、水門周辺との空洞化をできるだけ小さく留める構造となるよう設計するものとする。
4)水門は、常用電源が喪失した場合においても必要最小限な開閉操作ができるよう設計するものとする。
<標準>
1)設計に当たっては、水門に求められる機能を満足するように水門の位置、構造形式を設定するとともに、設計の対象とする状況と作用に応じた安全性能を設定し、照査により、これを満足することを確認する。
2)環境及び景観との調和、構造物の耐久性、維持管理の容易性、施工の容易性、事業実施による地域への影響、経済性及び公衆の利用等を総合的に考慮することを基本とする。
3)水門は、水門に求められる機能を満足するために、土砂が堆積しにくい構造となるよう設計するとともに、維持管理上、堆積土砂等の排除に支障のない構造となるよう設計するものとする。
<推奨>
1)事前の地盤調査は、土層構成、土質、地下水の状況などを把握し、設計に必要な地盤性状及び土層の特性等の条件を設定するため、ボーリング調査・現位置試験及び室内土質試験の組合せで実施することが望ましい。なお、事前の地盤調査結果より軟弱地盤や透水性地盤が想定される場合には、各々の課題に対応した原位置試験等の調査・試験を実施したうえで設計に反映するよう努める。
2)水門が横断する河川の河床又は水路の敷高と本川の河床との間に落差があるなどの状況により、内水位が本川水位より高くなる場合には、水門と堤体との接触面に沿って内水が堤外に浸透することがある。この場合、長年の間に水門と堤体との接触面付近に大きな空隙が生じ、洪水時に突然堤防決壊を引き起こすこともある。したがって、このような場合には、内水が堤外に浸透することについても十分留意する必要があり、堤内側の河川又は水路の取付護岸は必要な区間に遮水シートを有するコンクリート護岸等とするとともに、翼壁の接続部の水密性を保つようにすることが望ましい。
3)排水のための水門を設ける場合で、水門から合流する河川(本川)までの間で段差等が生じており、魚類等の移動の必要があるときは、当該河川及びその接続する水路の状況等(必要な場合には関係者の意見を含む)を踏まえ、段差等の緩傾斜化、水深の確保等に配慮した構造とすることが望ましい。
<例示>
水門の景観設計に当たっては、以下のような事例がある。
- 高さの統一性(堤防高と水門高の一致)により周囲との一体感のある景観を形成し、堰柱の高さと径間長のバランスがよく水門として機能美と風格を感じさせ、重量感あふれるデザインで治水構造物として堅固なイメージを醸し出し、コンクリート固有の造形美を有している事例として、荒川の岩淵水門がある。
- 施設の老朽化に伴う改築事業において、旧施設の老朽化の状況、土木史的な価値等について調査し、脇谷水門・鐙波水門、締切堤及び水路の複数の施設からなる空間全体をシステムとして捉え、歴史的土木施設の保存と共存する新施設のデザインを行った事例として、旧北上川分流施設群の改築がある。
<関連通知等>
1)国土交通省:河川砂防技術基準 計画編、施設配置等計画編 第2章 河川施設配置計画 第2-1章 河道並びに河川構造物 第5節 堰、水門、樋門 5.1 設置の基本.
2)国土交通省:ダム・堰施設技術基準(案)の一部改定について、平成28年3月31日、国技電第72号、国総合第80号、国水環第140号、国水治第142号.
3)建設省河川局:「多自然川づくり」の推進について、平成18年10月13日、国河環第38号、国河治第86号、国河防第370号.
4)国土交通省河川局:美しい河川景観の形成と保全の推進について、平成18年10月19日、国河環第40号、国河治第94号、国河防第376号.
5)国土交通省:国土政策技術総合研究所資料、景観デザイン規範事例集(河川・海岸・港湾編)、平成20年3月.
9.4 基本的な構造
9.4.1 水門の断面幅及び径間長の設定
(1)水門の断面幅
<考え方>
水門の断面幅は、支川の計画高水流量及び流下断面内の流速が接続する支川の流速に比べて著しく増減することがないよう適切なものとする必要がある。
排水を目的とする水門にあっては、支川の計画高水流量に十分対応した断面幅とし、全閉時の支川の流下能力が確保できていること及びゲート機能に支障を及ぼす土砂堆積が生じない敷高とする必要がある。また、取水を目的とする水門にあっては、取水計画上問題とならない範囲において対象渇水時においても計画取水量が確保できる断面幅とする必要がある。
また、土砂吐及び舟通しについては、それらの機能確保のため、流下断面内に設けざるを得ない場合も多いが、それらを現状又は計画の流下断面内に設けることは、水門上流部における洪水時の水位上昇、下流部における局所洗掘等の被害(内水を含む)の危険性を増大させるおそれがある。したがって、土砂吐及び舟通しは、現状又は計画の流下断面内には設けてはならない。
<必須>
水門の断面幅は、計画高水流量(取水の用に供する水門にあっては計画取水量、舟の通行の用に供する水門にあっては計画高水流量及び通行すべき舟の規模)を計画高水位以下で流下させること、維持管理を勘案して設定するものとする。なお、河川(準用河川を含む)以外の水路が河川に合流する箇所において当該水路を横断して設ける水門について準用するものとする。
<標準>
水門の断面幅は、次により設定することを基本とする。
1)水門のうち流水を流下させるためのゲート及び門柱以外の部分は、流下断面(計画横断形が定められている場合には、当該計画横断形に係わる流下断面を含む)内に設けてはならない。ただし、山間狭窄部であることその他河川の状況、地形の状況等により治水上の支障を及ぼさないと認められるときは、及び河床の状況により流下断面内に設けることがやむを得ないと認められる場合において、治水上の機能の確保のため適切な措置を講ずるときはこの限りでない。
2)取水を目的とする水門の断面幅は、取水計画上問題とならない範囲において、対象水位時の計画取水量を確保できるように定める。
<推奨>
支川において、本川の背水の影響を軽減する目的で設ける水門の設置地点の断面幅は、次により設定することを基本とする。
1)水門を設置したときの支川の計画高水位以下の流下断面積が、水門を設置しないときの支川の計画高水位以下の流下断面積に比べ 1.3 倍以内の場合には、堤防の両端に位置する堰柱の内側を支川の計画高水位と堤防の交点の位置とする。
2)上記の場合において、流下断面積の比率が1.3倍以上となる場合には、1.3倍となるまで水門の総幅員(純径間と中央堰柱の堰柱幅の総和)を縮小することができる。
図 9-2 水門の断面説明図(流下断面が1.3倍以内の場合)
(2)水門の径間長
<考え方>
水門の径間長は、河積の阻害を小さくするため、できるだけ大きくとり、堰柱の数を減ずることが重要である。また、堰柱によって流水等流下物の閉塞が生じ、それが原因で災害が発生することがないよう、できるだけ大きい径間長とする必要がある。
<必須>
水門の径間長は、水門が横断する河川又は水路を洪水時に流下する流木等流下物による閉塞を防止するため、構造令第49条及び第37条から第39条、施行規則第23条、施行規則第17条及び第19条に基づき適切な値を設定し、これを有するものとする。
9.4.2 ゲート開閉時の高さの設定
(1)ゲートの天端高
<考え方>
ゲートの天端高は、水門の有する堤防機能を確保するため、水門に接続する堤防との高さの連続性を確保できるよう設定する必要がある。
ゲート閉鎖時における上端の高さを接続する堤防の高さとした際に、ゲート製作費、開閉機等の費用が相当大きくなる場合は、これを避けることを目的にカーテンウォールを設ける場合がある。カーテンウォールは、洪水時又は高潮時にゲートと一体となって堤防の機能を有することが求められる。
図 9-3 水門の断面説明図
<必須>
水門のゲートの閉鎖時における上端の高さ又は水門のカーテンウォールの上端の高さは、水門に接続する堤防(現状又は計画堤防高のいずれか高い方の堤防)の高さを下回らないものとするものとする。
ただし、高潮区間において水門の背後地の状況その他の特別の事情により治水上支障がないと認められるときは、水門の構造、波高等を考慮して、計画高潮位以上の適切な高さとすることができる。
<必須>
1)水門の引上げ式ゲートの最大引上げ時における下端の高さ及び水門のカーテンウォールの下端の高さは、水門が横断する河川又は水路の計画高水位に余裕高を加えた高さ以上で、高潮区間においては計画高潮位を下回らず、その他の区間においては当該地点における河川の両岸の堤防(現状又は計画堤防高のいずれか高い方の堤防)の表法肩を結ぶ線の高さを下回らないものとするものとする。ただし、治水上の支障がないと認められるときは、次に掲げる高さのうちいずれか高い方の高さ以上とすることができるものとする。
一 当該河川に背水を生じないとした場合に定めるべき計画高水位に、計画高水流量に応じ、構造令 第20条第1項の表の下欄に掲げる値を加えた高さ
二 計画高水位(高潮区間にあっては、計画高潮位)
2)地盤沈下のおそれのある地域に設ける水門の引上げ式ゲートの最大引上げ時における下端の高さ及び水門のカーテンウォールの下端の高さは、前項の規定によるほか、予測される地盤沈下及び河川の状況を勘案して必要と認められる高さを下回らないものとする。
<推奨>
水門のゲートの引上げ完了時のゲート下端高及びカーテンウォールの下端の決定に当たっては、舟の通行がある場合は、舟の通行に支障を及ぼさないような高さとする。ただし、マストの高いプレジャーボート等が該当するときは、経済性、景観等の面から関係者との十分な調整や検討することが望ましい。
(2)引上げ完了時のゲート下端高
<考え方>
水門は、引上げ式ゲートの最大引上げ時において河川の所定の流下能力を確保することが求められる。そのため、ゲート下端高は、計画高水位との間に洪水時における流木等流下物の浮上高等を考慮して、しかるべき空間が確保できるよう設定することが必要であり、一般的には、現状又は計画堤防高のいずれか高い方に合わせる。
<必須>
引上げ完了時のゲート下端高は、構造令及び施行規則に基づき定めるものとする。
9.4.3 門柱の天端高
<考え方>
門柱は、主に引上げ式ゲートの開閉を行うために設け、ゲートの開閉が容易な構造とする必要がある。また、門柱の天端高は、ゲート引上げ時のゲート下端高が取水、排水、舟の通行に支障を及ぼさない高さを確保するとともに、ゲートの維持管理・更新のための戸溝からの取外し等に必要な高さを確保する必要がある。
図 9-4 門柱
<例示>
津波が想定される水門の場合、段波波高水位を考慮して門柱の高さ(操作台上面高)を決定する場合がある。
<標準>
門柱は、流水の阻害にならないように計画高水位(高潮区間にあっては、計画高潮位)が計画堤防法面に交わる点よりも天端側に設けることを基本とする。
門柱の天端高は、ゲートの全開時のゲート上端部にゲートの管理に必要な高さを加えた高さを確保し、管理橋の桁下高が計画堤防高以上となるよう設計することを基本とする。
<推奨>
ゲートの管理に必要な高さとしては、引上げ余裕高(1m程度)のほか滑車等の付属品の高さを考慮することが望ましい。
9.4.4 材質と構造
<考え方>
使用材料は、設置目的に応じて要求される性能を満足するための品質を有し、その性状が明らかなものでなければならない。このため、JIS等の公的な品質規格に適合し、その適用範囲が明らかな用途に対して使用することが望ましい。公的な品質規格がない材料の場合には、材料特性が水門に及ぼす影響を試験等により確認するとともに、品質についてもJIS等の規格と同等であることを確認する必要がある。
(1)使用材料
<標準>
設置目的に応じて要求される強度、施工性、耐久性、環境適合性等の性能を満足するための品質を有し、その性状が明らかにされている材料を使用することを基本とする。
<推奨>
鉄筋コンクリート構造物(プレキャスト製品を除く)に用いるコンクリートの設計基準強度 24N/mm²、鉄筋の材質 SD345 を推奨する。
(2)主な構造
<考え方>
水門を構成する主な構造としては、床版、堰柱、門柱、胸壁、ゲートの操作台、カーテンウォールがあり、これらは、鉄筋コンクリート構造又はこれに準ずる構造とし、必要な安全性を確保する必要がある。また、水門の安全性を確保するため、床版、堰柱、門柱、胸壁、翼壁、水叩き、遮水工は、部材の安全性の確保と継手部の水密性の確保によって、全体として必要な水密性を有する構造とならなければならない。ここで、必要な水密性を有するとは、部材の損傷や劣化、継ぎの開き等により水門周辺の堤防の土砂が吸い出されることのない状態を確保する意味であり、部材によっては多少の漏水が生じる状態は許容される。
<必須>
床版、堰柱、門柱、胸壁、ゲートの操作台、カーテンウォールは、鉄筋コンクリート構造又はこれに準ずる構造とする。床版、堰柱、門柱、胸壁、翼壁、水叩き、遮水工は、部材の安全性と継手部の水密性の確保によって、全体として必要な水密性を有する構造となるよう設計するものとする。
ゲートは、鋼構造又はこれに準ずる構造とし、ゲートは確実に開閉し、かつ、必要な水密性を有する構造となるよう設計するものとする。
ゲートの開閉装置は、ゲートの開閉を確実に行うことができる構造に対して安全な構造となるよう設計するものとする。
大規模な水門のゲートについては、ダムのゲートに関する規定(構造令第10条第1項から第3項、第11条及び第12条)を準用するものとする。
<推奨>
水門の構造形式は、一般に次に示すものが用いられている(図9-5参照)。
図 9-5 水門の本体の形式
水門の構造形式は、小規模なものは箱形、大規模なものは逆T形となり、中間のものはU形としている場合が多いが、構造形式の選定に当たっては、基礎地盤の良否、施工性(仮締切との関連)、事業費等も考慮することが望ましい。
また、カーテンウォールは、洪水時又は高潮時にゲートと一体となって堤防の機能を有するものであり、カーテンウォールとゲートの間の水密性が確保できる構造となるように設計するのが望ましい。
<例示>
本川の背水を軽減する目的で設ける支川の水門において、支川の計画高水位が本川の計画高水位(高潮区間にあっては、計画高潮位)と比較して相当低い場合等で舟の通行に影響がない場合等においては、カーテンウォールを採用している事例がある。
ゲートの鋼構造に準ずる構造には、ステンレス製ゲート、アルミ製ゲート等の事例がある。
(3)設計用定数
<標準>
設計に用いる各種定数は、適切な安全性が確保できるよう、使用する材料の力学特性を考慮し、必要に応じて調査・試験を実施したうえで、設定することを基本とする。
① ヤング率
<標準>
設計に用いるヤング率は、使用する材料の特性や品質を考慮したうえで適切に設定することを基本とする。
<推奨>
ヤング率として、以下の値を用いることが望ましい。
1)ヤング係数
- コンクリートのヤング係数は、2.5×10⁴ N/mm²
- 鋼材のヤング係数は、2.0×10⁵ N/mm²
2)ヤング係数比
- 許容応力度による設計を行う場合の鉄筋コンクリート部材の応力度の計算に用いるヤング係数比は 15
② 地盤に係る定数
<標準>
ボーリング調査、サウンディング調査、現位置試験、室内土質試験を組合せた地盤調査(既往調査含む)や周辺の工事履歴、試験施工等に基づき総合的に判断し、施工条件等も十分に考慮したうえで、地盤に係る定数を設定することを基本とする。
<推奨>
1)基礎底面と地盤との間の摩擦係数と付着力
基礎底面と地盤との間の摩擦係数と付着力として、以下の値を用いることができる。
表 9-1 摩擦角と付着力
| 条件 | 摩擦角 (摩擦係数 ) | 付着力 |
|---|---|---|
| 土とコンクリート | ||
| 岩とコンクリート | ||
| 土と土又は岩と岩 |
ただし、:支持地盤のせん断抵抗角(度)、:支持地盤の粘着力(kN/m²)
2)地盤の許容鉛直支持力
地盤の許容鉛直支持力は、荷重の偏心傾斜及び基礎の沈下量を考慮した地盤の極限支持力に対して、表9-2に示す安全率を確保していることが望ましい。
表 9-2 安全率
| 常時 | 地震時 | 施工時 |
|---|---|---|
| 3 | 2 | 2 |
荷重の偏心傾斜及び基礎の沈下量を考慮した地盤の極限支持力は、次式により求めることができる。平板載荷試験により求める場合には、載荷試験の結果により確認した地盤の粘着力 、せん断抵抗角 を用いて以下の式に従って算出することが望ましい。
ここに、
- :荷重の偏心傾斜を考慮した地盤の極限支持力(kN)
- :地盤の粘着力(kN/m²)
- :載荷重(kN/m²)
- :有効載荷面積(m²)
- :支持地盤および根入れ地盤の単位体積重量(kN/m³)
ただし、地下水位以下では、水中単位体積重量を用いる。
- :荷重の偏心を考慮した基礎の有効載荷幅(m)
- :基礎幅(m)
- :荷重の偏心量(m)
- :基礎の有効根入れ深さ(m)
- :基礎の形状係数
- :根入れ効果に対する割増係数
- :荷重の傾斜を考慮した支持力係数
(4)鉄筋コンクリート部材の最小寸法
<標準>
鉄筋コンクリートの部材の最小寸法は、耐久性、強度を有するために必要なかぶり及び施工性に配慮し設定することを基本とする。
<例示>
鉄筋コンクリートの部材の最小寸法は、施工性を重視し主鉄筋を内側に配置するため、0.4mが用いられる場合が多い。
9.4.5 水門周辺の堤防
<考え方>
水門周辺の堤防には、水門の施工による埋戻し部分も含まれる。その影響範囲は、対象とする事象によっても異なるが、堤防縦断方向に堤防高さの2〜3倍以上に及ぶ。「9.5 安全性能の照査等」に当たっては、水門周辺の堤防が一連区間の中の弱点でないことが前提となっており、必要に応じて「第2節 堤防」に準じて安全性の照査を行い、前後区間と比較して相対的に安全性が低下しないように強化対策を行う必要がある。
<必須>
水門周辺の堤防が一連区間と比較して相対的に弱点とならないように設計するものとする。
<標準>
水門周辺の堤防に用いる土質材料は、堤防に適したものを選定し、十分に締固めを行うものとする。また、水門周辺の堤防の断面形状は、水門本体による止むを得ない切り込みを除き、隣接する堤防の大きさ(堤防高、天端幅、堤体幅)及び計画堤防の大きさを上回る大きさとすることを基本とする。
必要に応じて「第2節 堤防」に準じて堤防の安全性の照査を行い、一連区間と比較して相対的に安全性が低下しないよう必要に応じて強化対策を行う。
<関連通知等>
1)(財)国土技術研究センター:河川土工マニュアル、平成21年4月.
9.5 安全性能の照査等
9.5.1 設計の対象とする状況と作用
<考え方>
水門の設計に当たっては、常時、洪水時、地震時、高潮時及び風浪時の安全性能を確保することが求められる。全ての水門については、常時、洪水時及び地震時、さらに高潮堤に設けられる水門は高潮時、湖岸堤に設けられる水門は風浪時についても照査する必要がある。
照査にあたっては、広域地盤沈下層、基礎地盤の特性、維持管理に必要となる前提条件を設定する必要がある。なお、前提条件は、土質地盤調査等に基づき設定する必要がある。
設計の対象とする作用については、本体やゲート等の自重、計画高水位(高潮区間にあっては、計画高潮位)以下の水位、地盤動として河川構造物の供用期間中に発生する確率が高い地震動、及び対象地点において現在から将来にわたって考えられる最大級の強さを持つ地震動、土圧、風の影響等の他、地震時には必要に応じて津波による波圧、高潮時には波浪による影響が考えられ、設計の対象とする水門の状況に応じて適切に組合せ設定する必要がある。
なお、必要に応じて施工時についても安全性能の照査を行う。
<標準>
安全性能の照査に当たっては、設計の対象とする状況と作用を次の表のように設定し、これを踏まえて照査事項を設定することを基本とする。常時、洪水時及び地震時については全ての水門において設定し、これに加えて、高潮区間の水門の場合には高潮時、湖岸堤に設ける水門の場合には風浪時について設定することを基本とする。
取水や舟の通行等治水以外の設置目的を有する場合には当該設置目的に応じた常時の作用を適切に設定することを基本とする。
| 水門の状況 | 作用 |
|---|---|
| 常時 | 自重(死荷重)、活荷重、土圧、水圧、泥圧、揚圧力、風荷重、温度変化の影響、コンクリートのクリープ及び乾燥収縮の影響、負の周辺摩擦力の影響、雪荷重、プレストレス力等 |
| 洪水時 | 自重(死荷重)、活荷重、土圧、泥圧、水圧※、揚圧力、風荷重、温度変化の影響、コンクリートのクリープ及び乾燥収縮の影響、負の周辺摩擦力の影響、雪荷重、プレストレス力等 ※計画高水位、高潮区間にあっては計画高潮位 |
| 高潮時 | 高潮位における波浪による波圧 |
| 風浪時 | 風浪による波圧 |
| 地震時 | 自重(死荷重)、地震動、活荷重、土圧、水圧、揚圧力、温度変化の影響、地震の影響※、雪荷重、プレストレス力等 ※地震時土圧、地震時動水圧、液状化の影響 |
| その他 | 津波による波圧、副振動、セイシュによる影響、施工時荷重、流木の衝突、舟の衝突 |
高規格堤防設置区間及び当該区間の背水区間の水門の照査に当たっては、計画高水位での静水圧を高規格堤防設計水位での静水圧に置き換えて行うことを基本とする。
<関連通知等>
1)国土交通省:ダム・堰施設技術基準(案)、平成28年3月.
2)国土交通省水管理・国土保全局:河川構造物の耐震性能照査指針・解説―Ⅰ.共通編―、平成24年2月.
3)国土交通省水管理・国土保全局:河川構造物の耐震性能照査指針・解説―Ⅳ.水門・樋門及び堰編―、令和2年2月(令和2年6月一部追記).
4)国土交通省水管理・国土保全局河川計画課長、治水課長:河川津波対策について、平成23年9月2日、国水計第20号、国水治第35号.
<推奨>
水門の設計に当たっては、次の作用を考慮するのが望ましい。
1)自重(死荷重)
自重(死荷重)は、適切な単位体積重量を用いて算出する。
材料の単位体積重量は、表9-3、表9-4の値を参考に定めるものとする。
土の単位体積重量は、一般的な値を示したものであり、土質試験データがある場合は、その値を用いて設計することが望ましい。コンクリートについても、できるだけ試験データによることが望ましい。
表 9-3 土の湿潤単位体積重量(kN/m³)
| 地盤 | 土質 | 緩いもの | 密なもの |
|---|---|---|---|
| 自然地盤 | 砂及び砂礫 | 18 | 20 |
| 自然地盤 | 砂質土 | 17 | 19 |
| 自然地盤 | 粘性土 | 14 | 18 |
| 盛土 | 砂及び砂礫 | 20 | 20 |
| 盛土 | 砂質土 | 19 | 19 |
| 盛土 | 粘性土 | 18 | 18 |
地下水位以下にある土の単位体積重量は、それぞれの表中の値から9を差し引いた値としてよい。
地下水位は施工後における水位の平均値を考える。
表 9-4 材料の単位体積重量(kN/m³)
| 材料 | 単位体積重量 |
|---|---|
| 鋼・鋳鋼・鍛鋼 | 77.0 |
| 鋳鉄 | 71.0 |
| アルミニウム | 27.5 |
| 鉄筋コンクリート | 24.5 |
| プレストレスを導入するコンクリート(設計基準強度 60N/mm²以下) | 24.5 |
| プレストレスを導入するコンクリート(設計基準強度 60N/mm²を超え 80N/mm²まで) | 25.0 |
| コンクリート | 23.0 |
| セメントモルタル | 21.0 |
| 木材 | 8.0 |
| 歴青材(防水用) | 11.0 |
| アスファルト舗装 | 22.5 |
2)活荷重
活荷重は、自動車荷重及び群集荷重とする。
自動車荷重は必要に応じ、大型の自動車の交通状況に応じて TL-25 荷重を考慮する。
群集荷重は、管理橋及び操作台等に 3.5kN/m² の等分布荷重を考慮する。
3)土圧
① 胸壁・翼壁に作用する土圧
胸壁・翼壁に作用する土圧は、原則として表9-5の区分に従って適用する。
表 9-5 土圧の区分
| 種別 | 常時 | 地震時 |
|---|---|---|
| 胸壁 | 静止土圧 | 地震時主働土圧 |
| 翼壁(U形タイプ) | 静止土圧 | 地震時静止土圧 |
| 翼壁(逆T形タイプ) | 主働土圧 | 地震時主働土圧 |
a)静止土圧
胸壁・翼壁に作用する静止土圧は、次式による。
ここに
- :任意の深さの水平土圧強度(kN/m²)
- :静止土圧係数(通常は と考えてよい)
- :土の単位体積重量(kN/m³)
- :任意の深さ(m)
- :上載荷重(kN/m²)
b)主働土圧
主働土圧は、次式による。
ここに
- :任意の深さの主働土圧強度(kN/m²)
- :主働土圧係数
- :主働崩壊角(度)
- :土の単位体積重量(kN/m³)
- :任意の深さ(m)
- :上載荷量(kN/m²)
- :地表面と水平面のなす角(度)
- :壁背面と鉛直面のなす角(度)
- :土の内部摩擦角(度)
- :土圧作用面の種別に応じた壁面摩擦角(度)
- 土と土の場合:
- 土とコンクリートの場合:
ただし、 のときは とする。
上載荷量 は必要に応じて考慮する。
ここで用いる角度は反時計回りを正とする。
c)地震時主働土圧
胸壁・翼壁に作用する地震時主働土圧は、次式による。
ここに
- :任意の深さの地震時主働土圧強度(kN/m²)
- :地震時主働土圧係数
- :地震時の主働崩壊角(度)
- :土の湿潤単位体積重量(kN/m³)
- :任意の深さ(m)
- :地震時の上載荷重(kN/m²)
- :地表面と水平面のなす角(度)
- :壁背面と鉛直面のなす角(度)
- :土の内部摩擦角(度)
- 土圧作用面の種別に応じた地震時壁面摩擦角(度)
- :土と土の場合:、土とコンクリートの場合:
- :地震時合成角(度) 又は
- :設計水平震度
- :水中の見かけの水平震度
- :土の飽和単位体積重量(kN/m³)
- :土の水中単位体積重量(kN/m³)
- :水面上の土層厚さ(m)
- :水面下の土層厚さ(m)
ただし、 のときは とする。また、 は地震時に確実に作用するもののみとし、活荷重は原則として含まないものとする。
ここで用いる角度は反時計回りを正とする。
図 9-6 地震時主働土圧
d)地震時静止土圧
翼壁・翼壁に作用する地震時静止土圧は、次式による。
ここに
- :地震時静止土圧合力(kN)
- :常時の静止土圧合力(水平成分)(kN)
- :主働土圧状態を仮定した場合の地震時の土圧合力の水平成分(kN)
- :主働土圧状態を仮定した場合の常時の土圧合力の水平成分(kN)
② 堰柱に作用する土圧
- a)静止土圧:①胸壁・翼壁に作用する土圧 a)静止土圧に準ずる。
- b)主働土圧:①胸壁・翼壁に作用する土圧 b)主働土圧に準ずる。
- c)地震時主働土圧:①胸壁・翼壁に作用する土圧 c)地震時主働土圧に準ずる。
4)泥圧
土砂の堆積によって生じる泥圧については、以下のとおりとする。
① 鉛直力
泥圧のうち鉛直力は、堆積した泥土の水中における重量とする。
② 水平力
水平方向の泥圧は次式によって求める。
- :水平方向泥圧(kN/m²)
- :泥圧係数
- :泥土の水中における単位体積重量(kN/m³)
- :泥土の深さ(m)
設計に用いる堆積した泥土(以下「堆泥」という。)の深さは、周辺の堆積状況、実績等適切な方法を用いて推定する。
堆泥の重量は、
で示される。ここに は水の単位体積重量(tf/m³)(kN/m³)、 は堆泥の見かけの単位体積重量(tf/m³)(kN/m³)、 は堆泥の空隙率である。
これらの概略値として、下記の数値が常用されている。
kN/m³、、、 kN/m³
なお、地震時は地震時動水圧を考慮するため、動泥圧は一般に考慮しなくてよい。
5)水圧
① 静水圧
水門の上下流水位について、水門の操作上考えられる組合せを検討する。
ただし、地震と高潮は同時に生起しないものとし、地震時慣性力及び地震時動水圧と計画高水位時における水圧は、同時に作用しない。
ゲート引上げ時には、流水から受ける力を必要に応じて考慮する。
② 地震時動水圧
地震時動水圧は、ウエスターガードの近似式により計算する。
③ 胸壁・翼壁に作用する残留水圧
胸壁・翼壁の前面の水位と背面の水位の間に水位差が生じる場合は、この水位差に伴う残留水圧を考慮する(下図参照)。
感潮区間の場合は、前面潮位差の2/3の水圧差を対象とする。
図 9-7 残留水位の設定方法(常時)
図 9-8 感潮区間の残留水位
6)揚圧力
揚圧力は、水門の操作上考えられる水門の上下流の水位差が最大となる水位により求める。
7)風荷重
風荷重は 3kN/m² とする。
8)温度変化の影響
温度荷重は、温度変化を±15℃とし、膨張係数を鋼で 0.000012、コンクリートで 0.00001 として計算する。
9)コンクリートのクリープ及び乾燥収縮の影響
① コンクリートのクリープひずみ
コンクリートのクリープひずみは次式により算定することができる。
ここに、
- :コンクリートのクリープひずみ
- :持続荷重による応力度(N/mm²)
- :コンクリートのヤング係数(N/mm²)
- :コンクリートのクリープ係数
コンクリートのクリープひずみについては、作用する持続荷重による応力度がコンクリートの圧縮強度の40%程度以下の場合、上式が成立すると考えてよい。一般には、コンクリートの圧縮強度の40%を超える持続荷重による応力度が作用することはなく、上式が用いられるが、40%を超える場合には別途試験などによりクリープひずみを定めなければならない。
② コンクリートのクリープ係数
プレストレスの損失量及び不静定力を算出する場合のコンクリートのクリープ係数は、表9-6の値とする。
表 9-6 コンクリートのクリープ係数
| 持続荷重を載荷する時のコンクリートの材令(日) | 4〜7 | 14 | 28 | 90 | 365 |
|---|---|---|---|---|---|
| 早強ポルトランドセメント使用 | 2.6 | 2.3 | 2.0 | 1.7 | 1.2 |
| 普通ポルトランドセメント使用 | 2.8 | 2.5 | 2.2 | 1.9 | 1.4 |
コンクリートのひずみは、作用する持続荷重を取り除くと回復するクリープひずみと回復しないクリープひずみの和であると考えられる。一般に、プレストレスの損失量を算出する場合は、クリープひずみをこれら2成分に分けて算出しても、或いは分けずに算出しても結果的に大差ないので、表9-6に示すクリープ係数をそのまま用いてよい。なお、持続荷重を載荷した時のコンクリートの材令が表9-6に示す値の間にある場合のクリープ係数は直線補間による値を用いてよい。
③ コンクリートの乾燥収縮度
プレストレスの損失量を算出する場合のコンクリートの乾燥収縮度は、表9-7の値とする。
表 9-7 コンクリートの乾燥収縮度(普通及び早強ポルトランドセメント使用の場合)
| プレストレスを導入する時のコンクリートの材令(日) | 3以内 | 4〜7 | 28 | 90 | 365 |
|---|---|---|---|---|---|
| 乾燥収縮度 | 25×10⁻⁵ | 20×10⁻⁵ | 18×10⁻⁵ | 16×10⁻⁵ | 12×10⁻⁵ |
コンクリートそのものの乾燥収縮度は表9-7に示す値より一般に大きいが、部材に配置される鋼材の影響などを考慮して、プレストレスの損失量を算定する場合は表9-7に示す値を用いてよいこととした。なお、プレストレスを導入する時のコンクリートの材令が表9-7に示す値の間にある場合の乾燥収縮度は直線補間による値を用いてよい。
④ ②項又は③項によりがたい場合
②項又は③項によりがたい場合は、部材周辺の湿度、部材断面の形状寸法、荷重が作用する時のコンクリートの材令などを考慮して別途定めるものとする。
特にコンクリート材令の若い時期にプレストレッシングを行う場合などでは、上記の諸要因を考慮して試験により別途推定してもよい。
10)負の周辺摩擦力の影響
軟弱地盤の層厚が厚く等で負の周辺摩擦力の影響が大きいと予想される場合には、遮水矢板等から水門本体へ伝達する負の周辺摩擦力の影響について考慮する。
11)雪荷重
雪荷重は、雪の単位堆積重量と積雪深の積として求める。一般に多雪地方においては、雪荷重 3.5 kN/m² を見込めばよい。積雪深は、既往の積雪記録、構造物上での積雪状態などを考慮して設定する。積雪のない地方では考慮する必要はない。ただし、積雪が少ないために積雪深を決定できない場合は、雪荷重を 1 kN/m² としてよい。
12)プレストレス力
プレストレス力は、プレストレスを与えた直後(プレストレッシング直後)のプレストレス力とその後に生じるコンクリートのクリープ、乾燥収縮及び緊張材のリラクセーションが終わったときの有効プレストレスについて考慮する。
① プレストレッシング直後のプレストレス力
ポストテンション方式のプレストレッシング直後のプレストレス力は、緊張材の緊張端に与えた緊張力に以下に示す影響による損失を考慮して算出する。
- a)コンクリートと継手材の弾性変形
- b)緊張材とシースの摩擦
- c)函体と均しコンクリートの摩擦
- d)緊張材を定着する際のセット
② 有効プレストレス力
有効プレストレス力は、次に示すコンクリートのクリープ及び乾燥収縮と緊張材の見かけのリラクセーションによるプレストレス力の損失量をプレストレッシング直後のプレストレス力より減じることによって算出する。
- a)コンクリートのクリープ
- b)コンクリートの乾燥収縮
- c)緊張材のリラクセーション
13)地震動
地震動は、構造物の重量に河川構造物の耐震性能照査指針 共通編に規定する水平震度を乗じた水平力とし、これを水流方向及び水流直角方向に作用させる。
14)その他荷重
堤防及び水門の安全を図るうえで以下の必要な荷重を考慮する。
① 波圧
以下の波圧を考慮する。
- a)波浪及び風浪:高潮区間や湖岸堤等で必要に応じて考慮する。波浪高の推定に当たっては、「調査編第21章 第5節及び本編 第7章 第2節」を参照する。
- b)津波:津波遡上区間で必要に応じて考慮する。
② その他
- 副振動、セイシュによる影響
- 施工時荷重
- 流木の衝突
- 舟の衝突
<関連通知等>
1)(公社)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅰ.共通編、平成29年7月21日.
2)国土交通省:土木構造物設計マニュアル(案)樋門編、平成13年2月.
3)(財)国土技術研究センター:柔構造樋門設計の手引き、平成10年11月.
4)(公社)日本道路協会:道路土工、擁壁工指針、平成24年版.
5)(公社)日本道路協会:道路土工、カルバート工指針、平成21年版.
6)国土交通省:ダム・堰施設技術基準(案)、平成28年3月.
7)国土交通省水管理国土保全局:河川砂防技術基準調査編、平成26年4月版、第21章海岸調査 第5節波浪調査.
9.5.2 安全性能の照査
<考え方>
水門における安全性能の照査は、「9.5.1 設計の対象とする状況と作用」に示す状況と作用毎に、照査の条件として適切な外水位及び内水位の組合せを設定し、安全性能について照査する必要がある。
また、水門における安全性能の照査は、構造や材料の特性に応じた設計手法を適用してモデル化を行い、最も不利な断面力が生じる作用に対して、安全性能が確保できるようにする。なお、「最も不利な断面力が生じる作用」とは、考慮すべき荷重の組合せのうち、発生応力等が構造物に対して最も不利に働く荷重の組合せをいう。
<標準>
水門は、「9.5.1 設計の対象とする状況と作用」に対し、以下の事項について安全性能を設定して照査することを基本とする。
1)常時の安全性能 2)洪水時の安全性能 3)耐震性能 4)風浪等に対する安全性能
安全性能の照査に当たっては、これまでの経験及び実績から妥当とみなせる方法又は論理的に妥当性を有する方法等、適切な知見に基づく手法を用いることを基本とする。
<推奨>
安全性能を照査するに当たっては、以下の手法によることが望ましい。
1)鉄筋コンクリート部材設計
- 部材の設計に用いる断面力は、弾性理論により算出する。
- 部材の設計は、許容応力度設計法によって行う。
2)鋼製の門扉の部材設計
- 部材の設計は、許容応力度設計法によって行う。
(1)常時の安全性能
<考え方>
洪水等の外力による作用を受けずとも、水門の自重や水門周辺の堤防からの土圧、さらに軟弱な地盤上に水門を新設する場合には基礎地盤の強度不足又は圧縮性が大きいことによる圧密沈下の影響により、構造物の安全性が損なわれる可能性があるため、端部堰柱及び胸壁の応力度や基礎の沈下量、支持力等について常時の安全性能の照査を行う必要がある。
また、水門の基礎或いは地盤改良等による地盤の沈下抑制の影響によって、基礎を含む水門本体部と周辺地盤との不同沈下による局部的な段差が生じ、この段差が水門周辺の堤防に悪影響を与える可能性があるため、隣接堤防との境界部における不同沈下について照査を行う必要がある。
<標準>
水門の自重や水門周辺の堤防からの土圧等の作用や圧密沈下量等の諸条件を設定し、発生する応力度、変位や支持力等を評価し、許容値を満足することを照査の基本とする。
新規築堤や引堤のように、水門とともに水門周辺の堤防を新たに築造する場合には、水門周辺の堤防に関しても地盤の複雑さに応じて、「設計編 第1章 河川構造物の設計 第2節 堤防 2.7 安全性能の照査等」の記載に従って安全性能の照査を行うことを基本とする。
(2)洪水時の安全性能
<考え方>
水門は、ゲート全閉時において、計画高水位(高潮区間にあっては計画高潮位)以下の水位の流水の作用に対して安全な構造が求められる。
<標準>
洪水時の安全性能は、ゲートへの水圧、床版への揚圧力、本体・ゲート・付属施設(操作室・管理橋等)の自重、土圧が作用する状態で、以下の項目について照査することを基本とする。
1)各部位の安全性
水門本体、翼壁及び水叩きが転倒、滑動、基礎地盤支持力に対して所定の安全性を確保する。
2)発生応力
水門及びゲート部材に発生する応力が「9.5.3 許容応力度」以下となることを確認する。
3)耐浸透性
水門と堤体との接触面における浸透に対して、所定の安全性を確保する。
4)ゲート閉鎖の確実性及び水密性
ゲート閉鎖の確実性(床版及び戸溝に土砂が堆積しない、確実な閉操作が可能なこと)、水密性を確保する。
<推奨>
1)各部位の安全性
所定の安全性とは、以下の安全率を満足するものとする。
表 9-8 各項目の安全率
| 項目 | 安全率 |
|---|---|
| 基礎 | 3 |
| 転倒 | 合力の作用点が中央1/3以内 |
| 滑動 | 1.5 |
2)耐浸透性
耐浸透性照査における所要の安全性は、地盤の土質区分、堤防断面形状、考慮する水頭差、遮水工の配置、深さ、長さ、不同沈下が生じる場合にはルーフィング発生による浸透路長の減少を考慮したうえで、レインの式による浸透経路長を満足することを確認する。なお、遮水工を2列に入れる場合深さに対して間隔が短すぎると浸透路長が遮水工沿いとはならない場合があるので、実現象に合うように浸透路長をとるよう留意する。
ここに、
- :荷重クリープ比
- :遮水工の鉛直方向の加重クリープ比
- :遮水工の水平方向の加重クリープ比
- :本体及び翼壁の函軸方向の浸透経路長(m)
- :遮水矢板等の鉛直方向及び水平方向の浸透経路長(m)
- :鉛直方向の浸透経路長
- :水平方向の浸透経路長
- :内外水位差(m)
表 9-9 加重クリープ比 C
| 地盤の土質区分 | C |
|---|---|
| 極めて細かい砂又はシルト | 8.5 |
| 細砂 | 7.0 |
| 中砂 | 6.0 |
| 粗砂 | 5.0 |
| 細砂利 | 4.0 |
| 中砂利 | 3.5 |
| 栗石を含む粗砂利 | 3.0 |
| 栗石と礫を含む砂利 | 2.5 |
| 柔らかい粘土 | 3.0 |
| 中くらいの粘土 | 2.0 |
| 堅い粘土 | 1.8 |
3)ゲート機能
ゲート機能は、同様の敷高・規模及び操作形式の樋門・水門における操作の確実性を確認できればよいとみなすことができる。なお、地砂傾向については、必要に応じて水理模型実験を実施して確認する。
(3)耐震性能
<考え方>
水門の耐震性能の照査は、河川構造物の耐震性能照査指針に基づき実施する必要がある。
レベル1地震動に対しては、地震によって水門としての健全性を損なわないか否かを照査する。レベル2地震動に対しては、治水上又は利水上重要な水門については、地震後においても水門としての機能を保持し、それ以外の水門については、地震による損傷を限定的にとどめ、水門としての機能の回復が速やかに行い得ることを照査する必要がある。
水門の門柱、堰柱及びゲートには地震時に慣性力及び地震時動水圧が作用するとともに、水門周辺の堤防には地震時土圧が作用する。また、水門の地震時挙動は、地形、地盤条件等の種々の要因の影響を受けるが、中でも、基礎地盤の影響を強く受ける。基礎地盤が液状化した場合には、液状化に伴う基礎地盤の変形が地震時挙動に大きく影響を及ぼすため、液状化を考慮する必要がある。
<標準>
耐震性能の照査に当たっては、レベル1地震動に対して地震によって水門としての健全性を損なわないことを照査し、レベル2地震動に対して水門としての機能を保持する、或いは水門としての機能の回復が速やかに行い得ることを照査の基本とする。
<推奨>
レベル1地震動及びレベル2地震動の設及び応答値の算定は、基本的に静的照査法を用いることができる。レベル2地震動の照査において静的照査法では適切な応答値を算定できない構造の場合には、動的解析を用いた照査を行う必要がある。
照査許容値は、求める耐震性能に応じた限界状態、構造・照査手法に応じた適切な値を設定する。
地震動による作用応力、変位量等の応答値が照査許容値を超えないことを照査する。
<関連通知等>
1)国土交通省水管理・国土保全局:河川構造物の耐震性能照査指針・解説―Ⅳ.水門・樋門及び堰編―、令和2年2月(令和2年6月一部追記).
(4)風浪等に対する安全性
<考え方>
高潮時及び風浪時の波浪並びに計画津波水位以下の津波に伴い、ゲートに波圧・津波荷重が作用する。ゲートの照査に用いる波圧及び津波荷重はダム・堰施設技術基準(案)、防波堤の耐津波設計ガイドラインに基づき設定する必要がある。
水門周辺の堤防は波の打ち寄せによる侵食に加え、場合によっては堤内地への越波を生じ、堤内地の浸水及び水門周辺の堤防裏法面が洗掘されることにより堤防の安全性が損なわれる可能性がある。水門周辺の堤防に対する照査は、堤防と同様にうちあげ高及び越波量により照査を行う必要がある。
<標準>
風浪等に対する本体の安全性能の照査は、本体が受ける水圧及び波圧の作用に対して安全性を評価し、許容値を満足することを照査の基本とする。風浪等に対する水門周辺の堤防の安全性能の照査は、「設計編 第1章 河川構造物の設計 第2節 堤防 2.7 安全性能の照査等」を満足することを基本とする。
9.5.3 許容応力度
<標準>
許容応力度等は、使用する材料の基準強度や力学特性を考慮して、適切な安全性が確保できるように設定することを基本とする。
<推奨>
許容応力度として、以下の値を用いることが望ましい。
1)コンクリートの許容応力度
表 9-10 コンクリートの許容応力度(N/mm²)
| 設計基準強度 | 許容曲げ圧縮応力度 | 許容付着応力度 | 許容せん断応力度 |
|---|---|---|---|
| 24 | 8.0 | 1.60 | 0.39 |
なお、せん断応力度は、せん断力を部材幅(b)×有効高(d)で割った平均せん断応力度。
せん断応力度の照査は、支点が直接支持となっているものは支点の前面より 1/2h だけ内側で行ってよい。(h:はり高)
無筋コンクリートの許容応力度は、道路橋示方書・同解説Ⅳ.下部構造編(平成24年3月26日)による。
2)鉄筋の許容引張応力度
表 9-11 鉄筋の許容引張応力度(N/mm²)
| 応力度、部材の種類 | 鉄筋の種類 SD345 |
|---|---|
| 引張応力度:荷重の組合せに衝突荷重或いは地震の影響を含まない場合(一般の部材※1) | 180 |
| 引張応力度:荷重の組合せに衝突荷重或いは地震の影響を含まない場合(厳しい環境下の部材※2) | 160 |
| 引張応力度:荷重の組合せに衝突荷重或いは地震の影響を含む場合の許容応力度の基本値 | 200 |
| 鉄筋の重ね継手長或いは定着長を算出する場合 | 200 |
※1 通常の環境や常時水中、土中の場合(操作台に適用)
※2 一般の環境に比べて乾湿の繰り返しが多い場合や有害な物質を含む地下水位以下の土中の場合(胸壁、遮水壁、堰柱、門柱、翼壁に適用)(海洋環境などでは別途かぶりなどについて考慮する)
3)鋼材の許容応力度(ゲート等の機械設備を除く)
表 9-12 構造用鋼材の母材部及び溶接部の許容応力度(N/mm²)
| 区分及び応力度の種類 | 鋼材記号 | SS400 / SM400 / SMA400W | SM490 | SM490Y / SM520 / SMA490W | SM570 / SMA570W |
|---|---|---|---|---|---|
| 母材部:引張 | 140 | 185 | 210 | 255 | |
| 母材部:圧縮 | 140 | 185 | 210 | 255 | |
| 母材部:せん断 | 80 | 105 | 120 | 145 | |
| 工場溶接部(全断面溶込みグループ溶接):引張 | 140 | 185 | 210 | 255 | |
| 工場溶接部(全断面溶込みグループ溶接):圧縮 | 140 | 185 | 210 | 255 | |
| 工場溶接部(全断面溶込みグループ溶接):せん断 | 80 | 105 | 120 | 145 | |
| 工場溶接部(すみ肉溶接、部分溶込みグループ溶接):せん断 | 80 | 105 | 120 | 145 | |
| 現場溶接:引張・圧縮・せん断 | 原則として、工場溶接と同じ値とする。 |
4)鋼管杭の許容応力度
表 9-13 鋼管杭の母材部及び溶接部の許容応力度(N/mm²)
| 区分及び応力度の種類 | 鋼管杭の種類 SKK400 | SKK490 |
|---|---|---|
| 母材部:引張 | 140 | 185 |
| 母材部:圧縮 | 140 | 185 |
| 母材部:せん断 | 80 | 105 |
| 溶接部(工場溶接):引張 | 140 | 185 |
| 溶接部(工場溶接):圧縮 | 140 | 185 |
| 溶接部(工場溶接):せん断 | 80 | 105 |
| 溶接部(現場溶接):引張 | 原則として、工場溶接と同じ値とする。 |
5)既製コンクリート杭の許容応力度
JIS による
6)許容応力度の割増し
地震、温度変化等の短期荷重を考慮する場合は、表9-14による許容応力度の割増しを行うことができる。下記以外の荷重の組合せによる許容応力度の割増しを考慮する場合は、個々の状況に応じて適切に定める。
表 9-14 許容応用力度の割増し
| 短期荷重 | 割増率(%) |
|---|---|
| 温度変化の影響 | 15 |
| 風荷重 | 25 |
| 地震動 | 50 |
| 温度変化の影響+風荷重 | 35 |
| 温度変化の影響+地震動 | 65 |
| 施工時荷重 | 50 |
9.6 各部位の設計等
9.6.1 本体
(1)ゲート
① ゲートの構造
<考え方>
ゲートは全閉することによって、洪水時又は高潮時において、計画高水位(高潮区間においては計画高潮位)以下の水位の流水の作用、風浪等における波圧に対して安全な構造となるよう設計する必要があり、原則として水門の下流側に設ける必要がある。
ゲートは、確実に開閉し、かつ、必要な水密性を有する構造とするため適切なゲート形式を選定する必要がある。水門のゲートは、一般的に引上げ式のローラゲート、起伏ゲート、セクターゲート、マイターゲート等が使用されているが、操作の確実な点では引上げ式のローラゲートが最も優れている。しかし、マイターゲートは、頻繁に操作が必要な感潮区間や、中小河川で出水頻度が多く出水時間が早い場合、或いは高潮による急激な水位上昇が発生する場合などに有利であり、高齢化による操作員の減少、安全の確保という背景と操作の確実性という要請などを踏まえると有効な選択肢となり得る。そのため、水門の設計においては、施設の規模、背後地の土地利用状況、個別の状況(管理上、構造上の条件等)を総合的に勘案して選定する必要がある。なお、ゲート形式をマイターゲートとする場合は、不完全閉塞を起こす可能性が非常に少なく、不完全閉塞が起こったとしても、治水上著しい支障を及ぼすおそれがないと認められ、かつ、引上げ式ゲートとした場合に、出水時の開閉操作のタイミングを失うおそれがある、又は人為操作が著しく困難又は不適当と認められるため、予備ゲート又は角落し等を設けることによって容易に、かつ、確実に外水を遮断できる構造であることが必要である。
カーテンウォールを用いる場合は、ゲートとともに堤防の役割を果たす必要があるため、堰柱や門柱との接続を勘案し、水圧や揚圧力等の作用を考慮したうえで、ゲートとの確実な水密を確保できる構造とする必要がある。また、カーテンウォールの配置は、ゲートが点検や整備時に取り外されることも考慮して決定する必要がある。
水門で用いられる扉体構造は、小・中形ゲートではプレートガーダ構造、大形ゲートではシェル構造の採用が多い。
ゲートの基本寸法とは、設置標高、径間長、断面高等を意味し、引き上げ式ゲート全開時の扉体の下端標高については揚程を考慮し設定する必要がある。
戸当りは、コンクリート構造物の規模、強度等に与える影響が大きいため、戸当りの寸法、構造、設置方法等とコンクリート構造物との関連性を検討する必要がある。また、ゲートが点検や整備時に取り外されることも考慮して構造を決定する必要がある。
<必須>
ゲートは、確実な開閉が行えるとともに必要な水密性を有する構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。
<標準>
ゲートは洪水時、高潮時及び風浪等が作用した場合において、全閉することによって堤防の代わりとなり得るように水門の下流側に設けることを基本とする。
ゲート形式及び規模、カーテンウォールの構造は、本体の形式・規模及び戸当り等、他の設備との配置を考慮して、設計条件を満足するように決定することを基本とする。
ゲートの基本寸法は、制約条件を考慮して、「9.4 基本的な構造」に準じて決定することを基本とする。
戸当りの形状はゲートの形状に適合したものとし、扉体支承部からの荷重を安全にコンクリート構造物に伝達することができるように寸法、強度及び剛性を有するものを基本とする。
<例示>
河川や設置場所の特性に応じて門柱レスゲートの採用事例がある。門柱レスゲートの主な構造形式を表9-15に示す。
表 9-15 門柱レスゲートの主な構造形式
| 開閉形式 | ゲート形式 | 主な主動力方式 |
|---|---|---|
| ヒンジ形式 | 起伏ゲート | 無動力式 |
| ヒンジ形式 | マイターゲート | 無動力式、機械式、油圧式 |
| ヒンジ形式 | セクターゲート | 機械式、油圧式 |
② 開閉装置
<考え方>
水門は、平常時は全開又は一部開放しており、洪水時又は高潮時にゲートを全閉し堤防機能を確保する必要があることから、確実にゲートを開閉できる必要がある。開閉装置の設置箇所は、ゲート形式に応じて適切に設定する必要があり、引上げ式ゲートの場合は堤防高よりも高い操作台の上に開閉装置を設置している場合が多い。
開閉装置の形式は、標準で示すものの他、使用頻度、流量調整の有無、締切力の大きさ、方向及び押下げの要否、開閉装置の設置位置、配置及び設置環境を考慮の上、選定することを基本とする。一般的によく利用される開閉装置形式は、ラック式、ワイヤーロープウインチ式、油圧シリンダ式などがあり、適切な形式を選定する必要がある。
全ての設備に予備電源を設けることにより、主動力が使用不可能となっても対応することができる。予備動力は、電動機による方式が望ましい。
全ての設備に予備電源を設けることにより、常用(商用)電源が暴風雨等において停電した場合でもゲートを操作することができ、必要最小限の機能を確保できる。
ゲートの操作は機側操作が一般的であるが、水門の目的、規模、現場操作員の負担軽減や安全の確保等の管理体制を踏まえ、必要に応じて自動化、遠方操作化や遠隔操作化を検討することとする。自動化は、計測した水位に応じて自動で開閉操作を行うことができるように改造することや、ゲート自体を自動開閉が可能なものとすることであり、遠方操作化、遠隔操作化は、管理所や遠隔地から操作を行うことを可能とすることである。
<必須>
開閉装置は、ゲートの確実な開閉操作を行うとともに必要な水密性を有する構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。
<標準>
開閉装置は、ゲートの開閉を確実に行うために設置し、ゲート形式に応じて適切な箇所に設けることを基本とする。
開閉装置形式の選定に当たっては、設備の設計目的、用途、ゲートの種類、開閉荷重の大きさ、方向及び押下げの要否、開閉装置の設置位置、配置及び設置環境を考慮の上、選定することを基本とする。
開閉装置は、電動機によるものとし、全てのゲートに開閉用予備動力を備えることを基本とする。
ゲートの操作のための設備は、機側操作を基本とする。なお、必要に応じて自動化、遠方操作化や遠隔操作化を検討することとする。
<例示>
ゲートの操作は、操作上の安全確保の観点から、機側操作を優先して設計される場合が多い。ただし、津波・高潮区間や周辺樋門等との連動操作が必要な場合など、管理体制等の条件により遠方操作・遠隔操作を行う場合、十分な安全性を確保したうえで、機側操作に対し遠方操作・遠隔操作を優先する設計を行う場合がある。
<関連通知等>
1)国土交通省:ダム・堰施設技術基準(案)、平成28年3月.
2)一般社団法人ダム・堰施設技術協会:ダム・堰施設技術基準(案)(平成28年3月改定)基準解説編・設備計画マニュアル編、平成28年10月.
3)一般社団法人ダム・堰施設技術協会:水門・樋門ゲート設計要領(案)、平成13年12月.
(2)床版
<考え方>
水門の床版は、上部荷重を支持し、ゲートの水密性を確保し、堰柱間の水叩きの効用を果たすことができる構造とする必要がある。
床版は、本体の形式に応じて決定され、箱型、U形構造の場合は堰柱と一体構造となり、逆T形の場合は、堰柱と一体となった堰柱床版と堰柱と分離した中間床版に分類される。中間床版の基礎は、ゲート荷重に対して不同沈下が生じないような構造とし、中間床版は、ゲートとの間の水密性を確保できるようにする必要がある。中間床版は、堰柱間の水平力に対するストラット(支材)を兼ねさせることがある。半川締切り等で堰柱を仮締切りに兼用させる場合は、堰柱及び堰柱床版は単独で安定させる必要がある。
図 9-9 本体の形式がT形の場合の床版
底部戸当り面は、ゲートとの確実な水密性、土砂等の堆積防止のために床版と同一平面とすることを基本とする。
<必須>
床版は、ゲートと必要な水密性を有する構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。
<標準>
床版は、ゲートとの水密性を確保し、水叩きの機能を果たすために設置し、堰柱間に設けることを基本とする。
床版は、本体の形式に応じてゲートや堰柱等の荷重を支持できる構造となるよう設計することを基本とする。
(3)堰柱
<考え方>
堰柱は、ゲート側面との水密を確保し、門柱や操作台・操作室等の上部荷重及びゲートで受ける水圧を安全に床版に伝えるために設ける必要がある。堰柱の配置は、「9.4.1 水門の断面幅及び径間長の設定」、「9.4.2 ゲート開閉時の高さの設定」を考慮したうえで決定する必要がある。
堰柱は、上部荷重及び水圧等の作用を安全に床版に伝えるため、箱型、U形及び逆T形の一部においては床版と一体構造とする必要がある。
堰柱の天端高は、ゲートの全閉時の天端高、管理橋等の条件を考慮して決定する必要がある。堰柱の幅及び長さは、管理橋の幅員、ゲート戸当り寸法、開閉装置の寸法等から決定することを基本とする。
ゲート前面の堰柱には、必要に応じて角落しを設けるための戸溝を設けることを基本とする。
<必須>
堰柱は、門柱及び一部の床版と一体構造で、ゲートと必要な水密性を有する構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。
<標準>
堰柱は、ゲートとの水密性を確保し、上部荷重及び水圧を安全に床版に伝えるために設置し、流下断面や径間長を考慮して適切な配置で設計することを基本とする。
堰柱は、上部荷重及び水圧等の作用を安全に床版に伝える構造として設計することを基本とする。
堰柱の天端高については、ゲートの全閉時の天端高、管理橋等の条件を考慮して決定し、堰柱の幅及び長さは、管理橋の幅員、ゲート戸当り寸法、開閉装置の寸法、力学的安定計算等から決定することを基本とする。
ゲート前面の堰柱には、必要に応じて角落しを設けるための戸溝を設けることを基本とする。
<推奨>
1)堰柱先端部には用心鉄筋として、中間部と同程度の配筋をすることが望ましい(図9-10参照)。
2)堰柱の構造計算に用いる有効断面には、原則として戸当りの箱抜部分の二次コンクリートを考慮せず設計することが望ましい。また、有効長は、図9-11に示す箱抜き部、両端の円弧部は除き設定することが望ましい。
3)門柱と堰柱との結合部、堰柱と床版との結合部は、応力集中を避けるため、図9-12のように配筋することが望ましい。
図 9-10 堰柱の配筋
図 9-11 堰柱の有効長
図 9-12 門柱と堰柱との結合部、堰柱と床版との結合部の配筋
<例示>
水門の堰柱の天端高は、計画堤防高とすることが多いが、河川の状況によっては現状が計画堤防より高い場合は現状の堤防高とする場合がある。
堰柱と床版は、同じ長さとするが、中間堰柱にあっては、必要に応じ堰柱長を床版長より短くする場合もある。
引上式ゲートの場合の中央堰柱の断面形状は、流水に対する抵抗を小さくし、流水に対する安全性を確保するため、上下流端を半円形等とする例が多い(図9-13参照)。
図 9-13 堰柱形状
(4)門柱
<考え方>
門柱は、引上げ式ゲートを採用した場合において、ゲートを引上げるために設ける必要がある。マイターゲートやセクターゲート等のゲート形式の場合は門柱を必要としない。
門柱は、堰柱や管理橋の配置とともに、門柱の断面寸法や戸溝の配置を勘案の上、配置する必要がある。
門柱の高さは、「9.4.3 門柱の天端高」に従い、ゲートの大きさ、引上げ余裕等を考慮し、設定する必要がある。
門柱の断面設定においては、設けるゲート及び戸当り金物の規模、設置スペースを考慮して設定する必要がある。
<必須>
門柱は、堰柱、操作台と一体構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。
<標準>
門柱は、ゲート形式が引上げ式ゲートの場合に設置し、堰柱及び管理橋の配置に合わせて設けることを基本とする。
門柱の高さは、「9.4.3 門柱の天端高」に従って設定することを基本とする。
門柱は、堰柱及び操作台と一体構造とし、上部荷重を安全に堰柱に伝える構造として設計することを基本とする。
門柱の断面は、戸当り金物を十分な余裕をもって取り付けられるように設計することを基本とする。また、門柱部の戸当りは、ゲートが取りはずせるように設計することを基本とする。
<推奨>
門柱部の戸当りは、ゲートが取外せるように取外し式又は回転式とすることが望ましい。
図 9-14 取外し式戸当りの例
図 9-15 回転式戸当りの例
(5)ゲートの操作台
<考え方>
操作台は、ゲート操作用の開閉装置及び操作盤等の機器の設置、照明等の付属施設を設けるため、引上げ式ゲートの場合は門柱の上に設ける必要がある。
操作台は、開閉装置の設置及び操作、点検並びに整備等の維持管理が容易に行える広さを有する必要がある。維持管理に必要な広さの設定は、水門・樋門ゲート設計要領(案)6-3-3 開閉操作室に準拠する。
<必須>
操作台は、門柱と一体の構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。
<標準>
操作台は、ゲート操作用の開閉装置、操作盤等の機器を設けるため、門柱の上に設けることを基本とする。
ゲート操作台は、操作性、維持管理に配慮した形状寸法を基本とする。
ゲート操作台には、操作室を設けることを基本とする。
<推奨>
操作室の設置に当たっては耐震性能を確保する観点から極力軽量な材質を適切に選定することが望ましい。
<関連通知等>
1)一般社団法人ダム・堰施設技術協会:水門・樋門ゲート設計要領(案)、平成13年12月.
9.6.2 胸壁
<考え方>
胸壁は、堤防内の土粒子の移動及び吸出しを防止するとともに、翼壁が洗掘等により破損し堤防前面が崩壊した場合においても、一時的に堤防の崩壊を防止できる構造とするため、堰柱と一体構造とし、水門の上下流に設ける必要がある。
胸壁は堰柱と一体化するが、土圧等に対して自立できるよう設計する必要がある。
胸壁の天端は、計画堤防断面内を基本とし、河川の状況によって施工断面内とする必要がある。
胸壁の横方向の長さは、土砂の吸出し、一時的な崩壊防止等を考えのうえ、胸壁の高さの半分以上の長さで、必要な長さを確保する必要がある。
<必須>
胸壁は、堰柱と一体の構造で必要な水密性を有する構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。
<標準>
胸壁は、堤防内の土粒子の移動及び吸出しを防止するとともに、翼壁の破損等による堤防の崩壊を一時的に防止できる構造とするため、水門の上下流に設けることを基本とする。
胸壁は、土圧等に対して自立できるよう設計することを基本とする。
胸壁の天端は、計画堤防断面内とすることを基本とする。
胸壁の横方向の長さは、胸壁の高さの半分以上の長さで、必要な長さを確保することを基本とする。
9.6.3 翼壁
<考え方>
翼壁は、堤防や堤脚を保護し、接続する河川又は水路を円滑に通水させるため、水門の上下流に設ける必要がある。
翼壁は、堰柱及び胸壁と分離した構造とするが、堰柱と翼壁の接続部は、屈とう性のある止水板及び伸縮材を使用し、構造上の変位が生じても水密性を確保する必要がある。
翼壁の天端高は、計画堤防断面又は現況断面のいずれか大きい方に合わせ、突出しないようにする必要がある。また、翼壁の端部は、取付水路が洗掘しないように、取付水路の護岸の範囲又は翼壁端部の壁高に1m程度を加えた値以上、堤防に平行に嵌入させる必要がある。
<必須>
翼壁は、必要な水密性及び屈とう性を有する構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。
<標準>
翼壁は、水門の上下流に対して堤防や堤脚を保護するため、水門の上下流に設けることを基本とする。
翼壁は、堰柱及び胸壁と分離した構造となることを基本とする。
翼壁の天端高は、計画堤防断面又は現況断面のいずれか大きい方に合わせることを基本とする。また、端部は、堤防に平行に、取付水路の護岸の範囲又は翼壁端部の壁高に1m程度を加えた値以上、堤防に平行に嵌入することを基本とする。
<推奨>
翼壁の平面形は、図9-16のように上流及び下流に向かって漸拡することが望ましいが、本川及び支川の河状を考慮して決定する。
図 9-16 翼壁平面図
9.6.4 水叩き
<考え方>
水叩きは、水門の安全性を保ち、上下流河床と本体部分の粗度の違い又はゲート開放時の流水等によって河床が洗掘されるのを防止するため、翼壁の範囲に設ける必要がある。
水叩きと翼壁及び床版との継手は、水密かつ不同沈下にも対応できる構造で、表面に大きな段差を生じさせないよう設計する必要がある。また、翼壁に設ける遮水工が水叩きによって分断されないように配慮する必要がある。
水叩きの長さは、翼壁が堤防の一部であることを考慮して、内外水位差による浸透水、ゲート操作の影響による洗掘等により、翼壁が破損しないように翼壁と同一の長さとする必要がある。
<必須>
水叩きは、必要な水密性及び屈とう性を有する構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。
<標準>
水叩きは、本体前面の洗掘を防ぎ、翼壁の安定性を保つために、水門上下流の翼壁の河床に設けることを基本とする。
水叩きの先端は、流水による洗掘及び遮水工との接続に配慮した構造であることを基本とする。
水叩きは、翼壁と同一の長さとすることを基本とする。
<推奨>
水叩きは、一般に鉄筋コンクリート構造とすることが多いが、揚圧力が大きく明らかに不経済となる状況においては、揚圧力の軽減を図る構造(根固工等を利用)とすることが望ましい。この場合においても、必要な浸透経路長を確保することが望ましい。
9.6.5 遮水工
<考え方>
遮水工は、堰柱や床版及び水叩き下部の土砂流動と、洗掘による土砂の吸出しにより、水門が堤防の弱点となることを防止するために設ける必要がある。
遮水工の構造、遮水工の深さ、水平方向の長さは、堤防断面形状、水頭差を元にレインの式などにより浸透経路長を考慮して決定する必要がある。また、遮水矢板には、構造計算上の荷重を分担させない。
<必須>
遮水工は、必要な水密性及び屈とう性を有する構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。
<標準>
遮水工は、水門下部の土砂流動と洗掘による土砂の吸出しを防止するため、適切な位置に設けることを基本とする。
遮水工の構造、遮水工の深さ、水平方向の長さは、堤防断面形状、水頭差、浸透経路長、過去の事例などを総合的に検討のうえで決定することを基本とする。
<推奨>
1)配置
遮水工に用いる矢板は、内外水位差による浸透水の動水勾配を減少させ、水門下部の土砂流動と洗掘による土砂の吸出しを防止するために図9-17のように設けることが望ましい。
図 9-17 水門の遮水矢板の配置
2)構造
遮水矢板は、本体と離脱しないように配慮し、水平方向に設ける遮水矢板は必要に応じ屈とう性を有する構造とすることが望ましい。
3)鋼矢板を遮水工として用いる場合の留意点
遮水矢板は、安全性、現場条件及び市場性を考慮したうえで、U形(普通型、広幅型等)、ハット型の経済比較を行い、適切に選定することが望ましい。
<例示>
基礎地盤が良好な場合の直接基礎で鋼矢板の施工が困難な場合は、コンクリートのカットオフとする場合がある。
9.6.6 基礎
<考え方>
基礎は、床版及び翼壁の下に同一の基礎形式を選定し、不同沈下を起こさず、堤防の弱点とならないようにする必要がある。
基礎は、鉛直荷重のみならず水平荷重に対しても安定する構造として設計する必要がある。
基礎の設計に当たっては、道路橋示方書(Ⅳ下部構造編)・同解説(平成24年3月)、杭基礎に当たっては杭基礎設計便覧(平成27年3月)及び杭基礎施工便覧(平成27年3月)により設計するものとする。道路橋示方書は平成29年11月に、杭基礎設計便覧及び杭基礎施工便覧は令和2年9月に改訂されている。この改訂では、性能規定(限界状態設計法及び部分係数法)に対応した記述に見直しており、従来の仕様規定(許容応力度設計法)とは異なる設計体系となっている。そのため、道路橋示方書、杭基礎設計便覧及び杭基礎施工便覧の設計法を適用する場合は、従来の仕様規定について記載しているものを適用する必要がある。
基礎形式の選定に当たっては、必要工期、作業面積の大小、環境面での制限、施工機械の保有量、経済性等を考慮し、総合的に判断する必要がある。
地質条件等によっては地震時の液状化対策も必要となるため、耐震対策の必要性も含めて検討する必要がある。耐震対策を行う場合は、河川構造物の耐震性能照査指針・解説、Ⅳ水門・樋門及び堰編によって照査を行い設計する必要がある。
<必須>
基礎は、上部荷重によって不同沈下を起こさないよう、良質な地盤に安全に荷重を伝達する構造となるものとする。また、水平荷重に対して安定する構造となるよう設計するものとする。
<標準>
基礎は、水門と翼壁の間に不同沈下が発生し堤防の弱点とならないようにするため、床版及び翼壁の下に同一の基礎で設けることを基本とする。
基礎の形式及び構造は、良質な地盤に安全に荷重を伝達できるよう適切に選定することを基本とする。
<関連通知等>
1)国土交通省:道路橋示方書・同解説 Ⅳ下部構造編、平成24年3月.
2)(公社)日本道路協会:杭基礎設計便覧(平成26年度改訂版)、平成27年3月.
3)(公社)日本道路協会:杭基礎施工便覧(平成26年度改訂版)、平成27年3月.
9.6.7 護床工
<考え方>
護床工は、流速を弱め流水を整え、併せて流水による洗掘等から堤防や翼壁、水叩きを保護するために翼壁前面に設ける必要がある。
護床工の構造は、水叩き下流での跳水の発生により激しく流水が減勢される区間では、鉄筋により連結されたブロック構造又はコンクリート構造等とし、その下流の整流となる区間では、粗笨沈床、木工沈床、改良沈床、コンクリート床版、コンクリートブロック等が用いられる。そのため、屈とう性を有する構造とし、硬い構造のものから漸次軟らかい構造のものへ河床になじみよくするような配慮が必要である。
上流側護床工の設置範囲は、計画高水位の水深程度以上の長さを確保する。下流側護床工の設置範囲は、水叩き下流での跳水の発生により激しく流水が減勢される区間と、その下流の整流区間とに分けて設計する。
<必須>
護床工は、必要な屈とう性を有する構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。
<標準>
護床工は、水叩き上下流での洗掘を防ぐため、翼壁の前面に設けることを基本とする。
護床工は、屈とう性を有する構造とし、水叩き上流での洗掘を防ぐことができる長さ及び構造となるよう設計することを基本とする。
9.6.8 護岸
<考え方>
護岸は、水門の影響による流水の乱れ、高潮時及び風浪時の波浪、計画津波水位以下の津波及び越波に対し堤防を保護するとともに、水門及び水門周辺の堤防が一連区間の中で相対的な弱点にならないように水門周辺の堤防に護岸を設ける必要がある。
水門が横断する河岸又は堤防に設ける護岸は、水門の両端(胸壁又は翼壁)から上流及び下流にそれぞれ10mの地点を結ぶ区間以上で、堤防天端での開削幅がカバーできる区間以上のいずれか大きい区間に設ける必要がある。近接する場合は、その区間を空けずに連続させる必要がある。
護岸の形式及び構造は、改訂 護岸の力学設計法を参考に設定する必要がある。
図 9-18 水門の護岸の例
護岸には、多くの形式があり、使用される素材、構造の外観等はさまざまであるが、設置箇所の河道特性や周辺の護岸形式及び構造を踏まえて設計する必要がある。
<必須>
護岸は、流水の変化に伴う河岸又は堤防の洗掘を防止するために設けるものとし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。
<標準>
護岸は、流水等の作用により、堤防又は河岸を保護するため、適切な範囲に設けることを基本とする。
護岸の形式及び構造は、設置箇所の河道特性及び水門周辺の堤防環境を考慮し、適切に設定することを基本とする。
<関連通知等>
1)(財)国土技術研究センター:改訂 護岸の力学設計法、平成19年9月.
9.6.9 高水敷保護工
<考え方>
高水敷は、水門の翼壁部分又は取付水路によって上下流に不連続となり、一般にその部分で乱流が起こり、洗掘を受けやすいので、必要な範囲に高水敷保護工を設ける必要がある。
なお、高水敷の河川横断方向に設ける水門の取付水路については、工作物設置許可基準 第十を参照する。
高水敷保護工の構造は、一般には、カゴマット、連節ブロック等を用いて流水の作用による高水敷の洗掘を防止するものとし、かつ、周辺景観との調和、河川の生態系の保全等の河川環境の保全に配慮して覆土を行う必要がある。
取付水路保護工は、取付水路の範囲において設けることを基本とし、周辺護岸や高水敷の利用を踏まえて設ける必要がある。
<必須>
高水敷保護工は、高水敷の洗掘を防止する構造とし、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。
<標準>
高水敷保護工は、流水等の作用による高水敷の洗掘を防止するため、高水護岸前面に設けることを基本とする。
高水敷保護工の構造は、河川の生態系の保全等の河川環境の保全に配慮した構造を基本とする。
高水敷保護工は、「9.6.8 護岸」で示す護岸の範囲において設けることを基本とする。
<関連通知等>
1)河川管理技術研究会編:改訂 解説・工作物設置許可基準、(財)国土技術研究センター、1998.
9.6.10 付属施設
(1)管理橋
<考え方>
管理橋は、水門の開閉操作及び維持管理、堤防の管理用通路として利用するため、水門左右岸の堤防天端を円滑に接続する必要がある。
管理橋の桁下高は、流下断面を阻害しないことを目的に、計画堤防高さ以上とする必要がある。管理橋の構造は、設計自動車荷重を考慮して、適切な構造とする必要がある。管理橋の桁下高の設定において、水門に接続する堤防は水防活動上必要な道路として耐え得る設計自動車荷重を考慮する場合があるにもかかわらず、水門の管理橋だけがそれに耐え得ないのは極めて不都合であるため、配慮が必要である。
ただし、管理橋の幅員が3m未満の場合や兼用道路にならない場合はこの限りではなく、水門の維持管理上必要な荷重を勘案したうえで設計自動車荷重を設定する必要がある。
管理橋の幅員は、接続する管理用道路の幅員、交通量、その重要性等と、水門管理及び水防時の交通を考慮して決定する必要がある。ただし、兼用道路の場合は道路管理者と協議する必要がある。
<必須>
管理橋は、水門の管理を目的として設置し、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。
<標準>
管理橋は、水門の操作及び堤防の管理用通路として利用するため、堰柱上に設置し堤防天端を接続することを基本とする。
管理橋の桁下高は、計画高水位に余裕高を加えた堤防高さ(計画堤防の高さが現状の堤防の高さより低く、かつ、治水上の支障がないと認められるときは現状の堤防の高さ)以上とすることを基本とする。管理用通路としての効用を兼ねる管理橋の設計自動車荷重は、水門に接続する堤防は水防活動上必要な道路として耐え得る設計自動車荷重を考慮して20t以上の適切な値を設定することを基本とする。ただし、管理橋の幅員が3m未満の場合や兼用道路にならない場合はこの限りではない。
水門に接続する堤防が兼用道路の場合で、設計自動車荷重を道路構造令(昭和45年政令第320号)第35条第2項に規定する25tとしている場合には、設計自動車荷重を25tとすることを標準とする。また、河川管理上必要と認められる場合には、設計自動車荷重を25tとしてもよい。
管理橋の幅員は、水門に接続する管理用通路の幅員を考慮した適切な値とすることを基本とする。
(2)その他付属施設
<考え方>
付属施設には、操作室、水門等操作員待機場、管理用階段、照明設備、水位観測施設、船舶通航用の信号、繫船環、防護柵等があり、ゲート機能のための水位把握、操作員等の安全確保、維持管理に必要な施設を設ける必要がある。
<標準>
水門には、維持管理及び操作のため、必要に応じて付属施設を設けることを基本とする。
<関連通知等>
1)国土交通省:道路橋示方書・同解説、平成29年7月21日.
2)国土交通省:ダム・堰施設技術基準(案)、平成28年3月.
9.6.11 既存施設の自動化・遠隔化
<考え方>
新設の水門のゲートの操作のための設備については、必要に応じて自動化、遠方操作化や遠隔操作化を検討することとしているが、既存の水門のゲートの操作のための設備についても、水門の目的、規模、操作員の負担軽減や安全の確保等の管理体制を踏まえ、必要に応じて自動化、遠方操作化や遠隔操作化を検討することとする。
自動化は、計測した水位に応じて自動で開閉操作を行うことができるように改造することや、ゲート自体を自動開閉が可能なものとすることであり、遠方操作化、遠隔操作化は、管理所や遠隔地から操作を行うことを可能とすることである。
<標準>
既存の水門のゲートの操作のための設備については、必要に応じて自動化、遠方操作化や遠隔操作化を検討することを基本とする。
9.7 水門構造に関するその他事項
<考え方>
1)現況施設の能力を上回る事象に対する対応について
現況施設能力を上回る洪水の生起により計画高水位を超えるような事象が頻発しており、今後の気候変動の影響によっては、このような事象が更に増えることも考えられる。そのため施設能力を上回る外力に対し、「構造上の工夫」により減災を図ることが求められる。
2)気候変動を踏まえた施設設計について
今後、気候変動により外力が更に増加する可能性があることにも留意する必要がある。そのため、外力の増加への対応として、大規模な改良をしなくともよい補強しやすい構造とする又は、あらかじめ対策を施すなどの設計が求められる。
3)ICTやBIM/CIMの利用
i-Construction 推進の一環として、ICT による建設生産プロセスのシームレス化が取り組まれている。UAV写真測量やレーザースキャナー計測などで得られる3次元点群データを活用することで、現況地形や既設構造の構造を様々な角度・断面から把握することができる。新設・改修する施設の3次元モデルを作成し活用することにより、構造に関して関係者の理解と合意形成が促進される。このため、計画段階など事業の早期段階をはじめ、施工段階、施工後の点検・補修・修繕の段階において BIM/CIM を積極的に活用し、水門本体及び水門周辺の堤防を適切に維持管理していくことが求められる。
<関連通知等>
1)国土交通省:CIM導入推進委員会:CIM導入ガイドライン(案)、令和2年3月.
<例示>
気候変動により外力が増大し、将来、施設の改造が必要になった場合でも、外力の増大に柔軟に追随できる、できるだけ手戻りのない設計を実施している以下のような事例がある。
- 日光川水閘門では、耐用年数内の海面水位の上昇量を想定し、改造等が容易な構造形式の選定、追加的な補強が困難な門柱部の嵩上げ及び基礎部補強をあらかじめ実施している。