河川砂防技術基準 設計編 技術資料

国土交通省 水管理・国土保全局
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10.1 総説

10.1.1 適用範囲

考え方

本節は、トンネル構造による河川を新設する場合の設計に適用する。ただし、既設のトンネル構造による河川の洪水処理機能の確保や構造的な安全性能の照査にも構造形式や現地の状況等によっては準用することができる。

標準

本節は、トンネル構造による河川を新設する場合の設計に適用する。

10.1.2 用語の定義

考え方

トンネル構造による河川の各構造の名称を図 10-1、図 10-2 に示す。

図 10-1 各構造の名称(開水路形式)

図 10-2 各構造の名称(圧力管形式)

標準

本節に関わる用語の定義は、以下のとおりとする。

1)計画流量:トンネル構造による河川へ配分する計画高水流量をいう。

2)トンネル本体:計画流量を流下させるための地下の通水部の構造本体をいう。

3)開水路形式:自由水面を維持したままエネルギー勾配により流下させる構造形式をいう。

4)圧力管形式:管を満管状態にしてエネルギー勾配により流下させる構造形式をいう。

5)呑口部:開水路形式における、流水を河道からトンネル本体に流入させる施設をいう。

6)吐口部:開水路形式における、トンネル本体に流入した流水を排水する施設をいう。

7)流入施設:圧力管形式における、流水を河道からトンネル本体に流入させる施設をいう。

8)排水施設:圧力管形式における、トンネル本体に流入した流水を排水する施設をいう。

9)立坑:トンネル本体の施工や維持管理並びに、本川からの流水の流入及び排水に必要となる、鉛直方向の中空の施設をいう。

10)水門:トンネル構造による河川における流水の流入又は排水を制御するゲート型の施設をいう。

11)山岳工法:トンネル本体の施工法で、掘削から支保工と本体構築完了までの間、切羽付近の地山が自立することを前提として、発破、機械又は人力により掘削し、支保工を構築することにより内部空間を保ちながら、トンネルを構築する工法をいう。

12)シールド工法:トンネル本体の施工法で、シールド(掘削機)により泥水等を用いて切羽(掘削面)の安定を図りながら掘削を行い、覆工(セグメント)を組み立てて地山を保持し、トンネルを構築する工法をいう。

13)開削工法:土留め工を施工しながら地表面から所定の位置まで掘削し、トンネルを構築する工法をいう。

関連通知等

1)河川砂防技術基準計画編、基本計画編、令和7年6月、国土交通省水管理国土保全局.

参考となる資料

トンネル構造による河川における用語については、下記の資料が参考となる。

1)都市河川計画の手引き-立体河川施設計画編-、平成7年4月、(財)国土開発技術研究センター.

2)トンネル標準示方書[共通編]・同解説[山岳工法編]・同解説、平成28年8月、(公社)土木学会.

3)トンネル標準示方書[共通編]・同解説[シールド工法編]・同解説、平成28年8月、(公社)土木学会.

4)トンネル標準示方書[共通編]・同解説[開削工法編]・同解説、平成28年8月、(公社)土木学会.

10.2 機能

考え方

トンネル構造による河川には、現状の河川周辺の都市化又は地形上の理由等から十分な河道拡幅が不可能、かつ、土地利用上又は地形上の制約等から開水路による分水路等の選定が不可能である場合に、河川流量の一部又は全部を河川の途中から流入させ、地下空間内を流下させた後に、海、湖沼、ほかの河川又は元の本川等に放流する機能、もしくは河川流量を一時貯留する機能が求められる。

必須

トンネル構造による河川は、河川流量の一部又は全部を河川の途中から流入させ、地下空間内を流下させた後に、海、湖沼、ほかの河川又は元の本川等に放流する機能、もしくは河川流量を一時貯留する機能を有するように設計するものとする。

関連通知等

1)河川砂防技術基準計画編、施設配置等計画編、令和7年6月、国土交通省水管理国土保全局.

10.3 設計の基本

考え方

トンネル構造による河川の基本的な構造諸元については、以下の事項について検討し、設計を行う必要がある。

1)基本方針

トンネル構造による河川の基本的な構造諸元の設計では、ルート、構造形式、縦断勾配、断面等を決定する。

トンネル構造による河川は、地下に設置される構造物であることやこれにより点検が困難となること、流下物等による断面の閉塞のおそれがあること、人為操作が必要な場合があること等、維持管理上及び施設運用上の課題が多いという特殊性を有する。そのため、基本的な構造諸元は、前述の特殊性を踏まえ、地形・地質条件、ルートとその周辺の地上及び地下の利用状況、接続する河川の状況、周辺環境への影響等を考慮し、水理的な安定性、維持管理の容易性、経済性等を十分考慮して決定することが重要である。

なお、ここでいう水理的な安定性とは、構造物の安定性と洪水処理機能を確保するため、跳水等による急激な水位変動や脈動、ゴミ・土砂等による疎通能力の低下等が生じることがないよう、計画流量を安定的に流下できる状態をいう。

トンネル構造による河川の計画流量は、基本計画編 第2章 河川計画において設定された気候変動を踏まえた基本高水流量に対して、ダム、調節池、遊水地等の洪水調節機能を考慮した上で、トンネル構造による河川へ配分するトンネル構造による河川の計画高水流量とする。

なお、トンネル構造による河川は地下に設置される構造物であり、施設の改修には多大な費用や期間を要することから、気候変動に伴うさらなる外力の増加(4℃上昇相当等のシナリオ等)への対応として、将来の施設運用等を考慮した設計の工夫等についてあらかじめ定めておく必要がある。

2)ルート

トンネル構造による河川のルートは、地形・地質条件、ルートとその周辺の地上及び地下の利用状況、接続する河川の状況等を考慮した上で決定する。

なお、トンネルの平面線形は、流水抵抗を減らし土砂堆積等を極力防止するため、できる限り直線となるよう設定する。

考慮事項の代表例としては、以下があげられる。

  • 地形・地質条件:特殊な地山(断層破砕帯等)に対するトンネル本体の安全性に対する影響
  • 地上及び地下の利用状況:中高層建造物等の基礎構造(基礎の根入れ等)、ガス・上下水道管、地下鉄等のインフラ施設に対する影響
  • 接続する河川の状況:放流河川の水質等に対する影響
  • 自然環境:地下水、動植物の生態に対する影響
  • 生活環境:騒音、振動、汚濁水等の発生に対する影響

3)構造形式

構造形式は、トンネル全体の機能、安全性、経済性、維持管理の容易性等に大きく影響を及ぼすことから、接続する河川の河道諸元を踏まえ、十分な検討を行い設定する。

構造形式は、トンネル内の流水の水理状態により、大きくわけて二つに分類され、開水路形式と、圧力管形式とがある。

なお、いずれの形式においても、必要なエネルギー勾配が確保できず、自然流下による流水の流下が困難な場合は、ポンプ施設の併用を検討する。

ポンプ施設の併用に当たっては、構造形式の特性を踏まえ、ポンプ設備の規模を検討するとともに、ポンプ施設の急稼働、急停止時に発生するウォーターハンマー現象への対策(調圧水槽の規模等)についても検討する。

4)トンネル本体設計(縦断勾配、断面)

a)縦断勾配

トンネル本体の縦断勾配は、洪水処理機能の確保や水理的な安定性、維持管理の容易性を考慮して設定する。

開水路形式では、水理的な安定性や維持管理の容易性から、原則として一様な勾配とする。ただし、地下構造物との干渉等の現地条件から、縦断勾配を急に変化させる必要がある場合、脈動や構造に損傷を与えるような圧力変動を生じさせないこと、土砂堆積を生じさせないことに配慮して縦断勾配を設定することとする。必要な場合は、水理模型実験等により水理状態について検証すると良い。

圧力管形式では、満管状態でエネルギー勾配によって流下させるため、エネルギー勾配が大きく管内流速が過大となると、覆工の摩耗等に影響を及ぼすおそれがある。一方、エネルギー勾配が小さく管内流速が過小となると、土砂堆積が生じやすくなることから、維持管理の容易性も踏まえ適切な縦断勾配を設定する。

b)断面

トンネル本体の断面は、採用する構造形式において、計画流量を水理的に安定した状態で流下できる断面を一様に確保し、維持管理の容易性、経済性を考慮し設定する。

  • 計画流量の設定:計画流量は、トンネル構造による河川に配分される計画高水流量とする。
  • 流下断面の設定:流水に混入するゴミ・土砂等や堆積土砂による疎通能力の減少を十分考慮し、計画流量を水理的に安定した状態で流下させるために必要な流下断面を設定する。
  • 空断面の確保:開水路形式では、高速流によるトンネル内の空気圧の低下又は水面上に流木やゴミ等が積み重なることによる空断面の減少によって水面が不安定とならないようにするため、十分空気を補給し、空気流の流下ができるよう、適切な空断面を確保する。
  • 維持管理に配慮した断面の検討:堆積土砂の排除等で使用する維持管理車両の走行等を考慮し、底部コンクリートの設置が必要な場合は、その断面減少分を見込んだ流下断面とする。

図 10-3 維持管理に配慮した断面設定のイメージ

c)粗度係数

設計流速の検討に用いる粗度係数は、経年的な摩耗等による水路表面の状態の変化を見込んで適切な値を設定する。

d)設計流速

水理的な安定性の検討に用いられる設計流速は、設定される縦断勾配及び断面により算出される。

設計流速が過大になると覆工の摩耗に影響を及ぼすおそれがあり、過小になるとトンネル内への土砂堆積が生じやすくなることから、維持管理の容易性を踏まえ適切な流速となるよう留意する。

また、トンネル内の流れが射流になると、跳水や脈動が発生した場合に水位が急上昇して必要な空断面を確保できなくなるおそれがある。このため、水理状態の安定性が確保されるようフルード数を確認し、常流となるような断面を設定することが望ましい。

標準

トンネル構造による河川の設計に当たっては、以下の事項を反映することを基本とする。

1)トンネル構造による河川に求められる機能を満足するように、基本的な構造諸元であるルート、構造形式、縦断勾配等を設定し、計画流量を水理的に安定した状態で流下させる構造とならるよう、設計の対象とする状況と作用に対する構造的な安全性能について、照査を行う。

2)設計に当たっては、地形・地質条件、地上及び地下の利用状況、接続する河川の状況、周辺環境への影響等を考慮するとともに、水理的な安定性、維持管理の容易性、経済性等を総合的に勘案し検討することを基本とする。

3)開水路形式においては、高速流によるトンネル内の空気圧の低下、水面上に流木やゴミ等が積み重なることによる空断面の減少により水面が不安定となるため、空気流の流下ができるよう、必要な空断面を確保することを基本とする。

4)開水路形式において、トンネル内の流れが射流になると跳水を引き起こし水位が急上昇するため、水理状態の安定性が確保されるよう設計することを基本とする。

5)維持管理の容易性については、覆工の摩耗や土砂の堆積等がしにくい構造となるよう設計するとともに、補修や堆積土砂等の撤去等の維持管理作業がしやすい構造とすることを基本とする。

推奨

圧力管形式において、空気が混入すると空気塊の発生により急激な圧力変動を引き起こし、トンネル内の水理状態が不安定となるおそれがあるため、必要に応じて水理模型実験等で空気の混入状態を把握し、空気混入の抑制方法(空気弁の設置等)について検討することが望ましい。

例示

1)粗度係数:粗度係数は、安全側の設計になるよう、構造物の安全等に関する流速の評価を行う際には、施工直後の平滑な水路表面を想定した n=0.015 を採用している事例が多い。一方で、流下断面の評価を行う際には、摩耗により骨材等が露出した粗面状態を想定した n=0.023 を採用している事例が多い。

2)設計流速:設計流速は、覆工の損耗等に影響を及ぼすおそれがあるため、7m/s 以下となるよう設計する事例が多い。開水路形式において、トンネル内の流れが射流になると跳水を引き起こし水位が急上昇するため、水理状態の安定性が確保されるよう、フルード数 0.8 以下になるよう設定することが望ましい。

3)断面:開水路形式において、流水に混入するゴミ・土砂等や堆積土砂による疎通能力の減少による影響を包括的に考慮する場合には、計画流量の 130%以上の流量を流下させる断面を確保することにより、これらの影響を包括的に考慮した流下断面として設定することができる。それに加えて、<標準>3)に従い、前文により設定した流下断面の 15%程度を下回らない値を空断面として設定することができる。

圧力管形式において、流水に混入するゴミ・土砂等や、堆積土砂による疎通能力の減少による影響を包括的に考慮する場合には、流下断面を 10%程度の断面割増を行うことにより、これらの影響を包括的に考慮した流下断面として設定することができる。

関連通知等

1)河川砂防技術基準計画編、施設配置等計画編、令和7年6月、国土交通省水管理国土保全局.

参考となる資料

トンネル構造による河川の設計については、下記の資料が参考となる。

1)トンネル河川設計の手引き(案)、昭和60年3月、建設省土木研究所.

2)都市河川計画の手引き-立体河川施設計画編-、平成7年4月、(財)国土開発技術研究センター.

10.4 基本的な構造

10.4.1 工法の選定

考え方

トンネル本体の工法には主に、山岳工法、シールド工法、開削工法といったものがある。トンネル構造による河川のうち、山地部では主に山岳工法、都市部では主にシールド工法や開削工法が採用されており、それぞれ構造及び設計の考え方が大きく異なる。

適切なトンネル工法を選定することは、トンネルを安全かつ経済的に建設するために極めて重要であり、それぞれの特徴、特質を十分に比較検討する必要がある。

各工法の選定に当たっては、調査で得られた基礎資料を基に、地形・地質条件、ルート及び周辺の地上及び地下の利用状況、周辺環境への影響、近接工事の影響、維持管理等の条件を十分に考慮した上で適切に選定する必要がある。

以下に、山岳工法、シールド工法、開削工法のそれぞれの工法概要等を記す。

1)山岳工法

a)工法概要

トンネル周辺地山の支保機能を有効に活用し、吹付けコンクリート、ロックボルト、鋼製支保工等により地山の安定を確保して掘進する工法である。周辺地山のグラウンドアーチが形成されること及び掘削時の切羽の自立が前提となり、それらが確保されない場合には補助工法を併用する。

b)適用地質

一般には、硬岩から新第三紀の軟岩までの地盤に適用される。条件によっては、未固結地山にも適用される。地質の変化には、支保工、掘削工法、補助工法の変更により対応可能である。

c)特徴及び留意点

山岳工法は、断面変更への自由度が高く、分岐合流部や拡幅部の施工に有利であり、大規模な補助工法を用いない限り経済性に優れているという特徴がある。また、周辺への影響等に関して、施工中及び供用後の地下水位の低下が周辺環境への影響の点で許容されるか否かについて留意する必要がある。

2)シールド工法

a)工法概要

泥土あるいは泥水等で切羽の土圧と水圧に対抗して切羽の安定を図りながら、シールドを掘進させ、セグメントを組み立てて地山を保持し、トンネルを構築する工法である。

b)適用地質

一般的には、非常に軟弱な沖積層から、洪積層や、新第三紀の軟岩までの地盤に適用される。また、カッターヘッド、カッタービットの組合せ等の掘削機構を対応させることで、硬岩の施工を行った事例もある。

c)特徴及び留意点

シールド工法によるトンネルは、施工の影響を大きく受ける構造物であり、工事開始から地山内で安定するまでの間に受ける様々な影響を可能な限り設計で考慮する。また、シールド工法によるトンネルを施工する現場の条件によって、万一事故が発生した場合の被害の度合いが大きく異なると考えられ、特に、河川の地下等で施工するシールド工法によるトンネルに事故が発生した場合には、大量出水等の大きな被害が発生することが想定できるため、現場条件に応じたリスクを想定した上で、施工時の安全性に留意する必要がある。

3)開削工法

a)工法概要

地表面から土留め工を施工しながら掘削を行い、所定の位置にトンネルを築造して、その上部を埋め戻し、地表面を復旧する工法である。

b)適用地質

基本的に地質による制限はない。地質の変化には、各種地質に適応した土留め工、補助工法等により対応可能である。

c)特徴及び留意点

開削工法は、平坦な地形でその設置深さが比較的浅い場合には、安全性、経済性に優れ、比較的複雑なトンネル断面形状の構築、工事中の土質の変化、地下水位の変化等の外的条件の変動への対応性が高いという特徴がある。また、他工法が主体の場合でも、発進部や到達部には開削工法による地下空間が必要不可欠であり、部分的な適用としても開削工法の対応性は高い。

標準

トンネル構造による河川の工法選定に当たっては、調査で得られた基礎資料を基に、地質・地形条件、ルート及び周辺の地上及び地下の利用状況、周辺環境への影響、近接工事の影響、維持管理等の条件を十分に考慮した上で適切に選定することを基本とする。

例示

近年、都市部において補助工法を用いた山岳工法を適用する事例や山岳工法によるトンネルにおいて省力化、高速掘進が可能となる TBM 工法、大口径化等が可能となった推進工法をトンネル構造による河川に採用する事例がある。これらの工法については、それぞれの概要を示しておく。

1)都市部山岳工法

近年切羽の安定性を向上させる切羽安定対策等の補助工法の技術的な進歩により、都市部等の未固結地山で土被りの小さい条件においても、山岳工法を適用する事例が増えてきている。このような条件においては、掘削時の切羽の安定対策はもちろんのこと、他の地下施設等との近接施工、地上の家屋や構造物等の土地利用状況から、地表面沈下、周辺構造物への影響、水利用への影響等が重要な課題となるので、これらの社会的な影響に対し十分な検討を行う必要がある。

2)TBM 工法

本節の山岳工法は、一般的な NATM を前提として記載しているが、昨今では、山岳工法によるトンネルの自動化、省力化等の観点から、TBM 工法の施工例も見られる。TBM 工法には、高速掘進により工期の短縮が図れること、掘削後の地山の緩みが小さいために安全性が高いこと等の長所がある一方、施工方法や施工設備を途中で変更することが困難であること、膨張性地山あるいは切羽の安定性の悪い断層破砕帯では TBM 本体が締め付けられて拘束状態になること等の短所もあるので、事前調査、施工中の調査を十分に実施する必要がある。

3)推進工法

推進工法の施工断面の大口径化、掘進延長の長距離化等に伴い、トンネル構造による河川に推進工法を採用した実績がある。

参考となる資料

トンネル構造による河川の設計及び設計に必要となる調査等については、下記の資料が参考となる。

1)トンネル標準示方書[共通編]・同解説[山岳工法編]・同解説(第1編 総論、第8編 都市部山岳工法、第9編 TBM 工法)、平成28年8月、(公社)土木学会.

2)トンネル標準示方書[共通編]・同解説[シールド工法編]・同解説(第1編 総論)、平成28年8月、(公社)土木学会.

3)トンネル標準示方書[共通編]・同解説[開削工法編]・同解説(第1編 総論)、平成28年8月、(公社)土木学会.

4)町並川地下バイパス河川整備事業の概要、奈良県宇陀土木事務所.

10.4.2 材質と構造

(1)使用材料

考え方

トンネル構造による河川の使用材料は、設置目的に応じて要求される強度や耐久性を満足するよう選定するが、洪水等を安全に流下させる等、河川に特有の機能が求められることから、過去の実績や事例も踏まえて選定する必要がある。

標準

トンネル構造による河川の使用材料は、設置目的に応じて要求される強度や耐久性を満足するための品質を有し、その性状が明らかにされているものを使用することを基本とする。

推奨

トンネル構造による河川の使用材料は、JIS 等の公的な品質規格に適合し、適用範囲が明らかな用途に対して使用することが望ましい。公的な品質規格がない材料の場合には、材料特性及びその影響を試験等によって確認するとともに、品質についても JIS 等の規格の同等以上であることを確認することが望ましい。

例示

トンネル本体の使用材料については、トンネル本体の工法別に選定配慮事項が異なっているため、トンネル標準示方書の山岳工法編、シールド工法編、開削工法編を参考に選定することが考えられる。

また、トンネル本体以外の構造物については、河川砂防技術基準設計編の各節の規定を参考に選定することが考えられる。

(2)主な構造

考え方

トンネル構造による河川を構成する主な構造として以下があげられる。いずれの構造においても、トンネル構造による河川全体としての機能を確保し、設計の対象とする状況と作用に応じた安全性能を満足するよう設計する必要がある。

1)トンネル本体

トンネル本体を構成する主な構造として、山岳工法では支保工、覆工、インバート、坑門、シールド工法では一次覆工(セグメント)、必要に応じて二次覆工、開削工法ではトンネル躯体がある。

2)立坑

山岳工法やシールド工法の施工や維持管理に必要な構造として、立坑、斜坑がある。

3)呑口部・流入施設

トンネル本体へ流水を導入させる構造として、分水堰、導水路、水門、沈砂池、防除施設、減勢施設、護岸等がある。

4)吐口部・排水施設

トンネル本体から河道へ流水を排出させる構造として、減勢部、調圧水槽、排水機場、吐出水槽、樋門、水門、護岸等がある。

標準

トンネル構造による河川に求められる機能を満たすために、トンネル本体、立坑、呑口部、流入施設、吐口部、排水施設を構成する各構造について、設計の対象とする状況と作用に応じた安全性能を設定し、照査によりこれを満足することを確認することを基本とする。

また、トンネル本体と立坑、呑口部・流入施設、吐口部・排水施設を構成する各構造との接続部が弱点とならないよう、全体として必要な水密性等を有するよう設計することを基本とする。

(3)設計用定数

標準

トンネル構造による河川の設計に用いる材料の各種定数は、所要の安全性が確保できるよう、構成する各構造やトンネル本体の工法の違いによる力学特性を考慮し、必要に応じて調査・試験を実施した上で、設定することを基本とする。

例示

トンネル本体の設計用定数については、トンネル本体の工法別に設計手法が異なっているため、トンネル標準示方書の山岳工法編、シールド工法編、開削工法編等を参考に設計することが考えられる。

また、トンネル本体以外の構造物については、河川砂防技術基準設計編の各節の規定を参考に設定することが考えられる。

10.5 安全性能の照査

考え方

トンネルの設計に当たっては、常時、洪水時及び地震時の安全性能を確保することが求められる。

常時においては、トンネル内部が空水の状態、計画流量に満たない流量に対して安全な構造であることが求められる。

洪水時においては、計画流量以下の流量に対して安全な構造であることが求められる。

山岳工法によるトンネルでは、過去の設計や施工実績及び経験を重視する特有の設計手法が用いられるが、特殊な地山や完成後の外力を見込む必要がある場合は、許容応力度設計法等により設計を行う必要がある。

シールド工法によるトンネルでは、従来からの採用実績も豊富である許容応力度設計法により行い、レベル2 地震動に対する検討については限界状態設計法により行う必要がある。

開削工法によるトンネルでは、トンネル本体においては、限界状態設計法による性能照査型設計法を導入し、土留め工を施工しながら全断面掘削する場合の仮設構造物等は許容応力度設計法により設計する必要がある。

なお、設計に当たっては、トンネル標準示方書[山岳工法編]・同解説・[シールド工法編]・同解説[開削工法編]・同解説を参考に実施する。

10.5.1 山岳工法

(1)設計の対象とする状況と作用

考え方

山岳工法により施工するトンネル本体の主な構造としては、支保工、覆工、インバート、坑門がある。

山岳工法の設計は、一般的に施工実績等の経験に基づく標準設計を適用し、地山等級に応じた標準的な支保パターン、覆工、インバートの構造を決定し設計を行っている。

経験に基づいた標準設計を適用することにより、必要な安全性能等を満足した設計とすることができる。

ただし、標準設計では、覆工、インバートには力学的な性能の付加は考慮していないため、以下のように外力を受ける場合等においては、覆工、インバートに力学的な性能の付加を考慮し、解析的手法や類似事例に基づいた設計を行う。

トンネル本体の状況作用
常時1)土圧
洪水時2)水圧(地下水による外水圧、内水圧)
地震時3)地震の影響
4)その他の影響(近接施工の影響、上載荷重、内部荷重、地山の凍土圧等)

標準

覆工及びインバートの設計に当たって、特殊な地山や完成後の外力を見込む必要がある場合等に、必要に応じ考慮する作用は、次のとおりとする。

(2)安全性能

(1)常時・洪水時の安全性能

考え方

山岳工法により施工されるトンネル構造による河川の覆工及びインバートは、特殊な地山や完成後の外力を見込む必要がある等の特殊な設計条件の場合に、「10.5.1(1)設計の対象とする状況と作用」に示す状況ごとに、照査の条件として適切な作用の組合せを設定し、安全性能について照査する必要がある。

照査に当たっては、これまでの経験及び実績から妥当とみなせる方法又は論理的に妥当性を有する方法等、適切な知見に基づく手法を用いることを基本とする。

例示

トンネル標準示方書[山岳工法編]・同解説では、特殊な設計条件において考慮する土圧と水圧への対応について、以下のとおり示されている。

1)土圧

都市部山岳工法では、覆工を設計する際に緩み土圧等を設定してその大きさや分布形状を明示することがある。また、設計において、例えば骨組構造解析を用いる際は設定する荷重は、鉛直荷重には緩み土圧か全土被り荷重が用いられることが多い。水平荷重は鉛直荷重に側方土圧係数を乗じて設定される。また、地盤反力は地盤ばね等で表現するのが一般的である。

膨張性地山では、変形が著しく大きい場合は、変形の収束前に覆工を施工し、覆工に荷重を負担させることがある。

また、未固結地山の場合は、トンネル完成後に地山の強度低下に伴う土圧が作用することがある。

2)水圧

トンネル内へ周辺地下水をトンネル内の排水工に導かないでトンネルを防水型とする場合、覆工やインバートへの水圧の作用を考慮して設計する。このような事例は都市部だけでなく、山岳部でも増加している。また、トンネル構造による河川において内水圧が作用する条件においては、これを考慮した設計を行う。

(2)地震時の安全性能

考え方

トンネルの完成後、地震の被害を受ける可能性がある場合は、条件に応じて構造設計に配慮する必要がある。

トンネルは周辺地山と一体となって挙動するため、地表の構造物に比べて地震の影響が少なく、耐震性に富む構造物である。特に、安定した地山中に存在する山岳部のトンネルにおいては、一般に地震の影響を考慮する必要はない。坑口部においても、通常行われる鉄筋補強により、大規模地震時の被害をある程度軽減できる。

しかし、以下のような場合には、山岳工法によるトンネルでも地震の被害を受ける可能性があり、その程度によっては構造に配慮が必要となる。

1)トンネルが小土被り、未固結地山中に存在する場合

2)トンネルが地質不良区間に存在する場合

3)トンネルが活断層と交差する場合

山岳工法によるトンネルでは上記1)〜3)の条件に当てはまっていても耐震検討がなされる事例は少ないが、トンネル個別の条件を考慮した結果、耐震に関する検討が必要と判断された場合には、適切な手法により、地震対策を検討する。

標準

トンネルの完成後、地震の被害を受ける可能性がある場合は、条件に応じて構造設計に配慮することを基本とする。

(3)許容応力度

考え方

覆工及びインバートにおいて、特殊な地山や完成後の外力を見込む必要がある等の特殊な設計条件で、許容応力度法により設計を行う場合、許容応力度等は、使用する材料の基準強度や力学特性を考慮して、所要の安全性が確保できるように設定する必要がある。

標準

山岳工法により施されるトンネル構造による河川において、特殊な設計条件で許容応力度法により設計を行う場合、許容応力度等は、使用する材料の基準強度や力学特性を考慮して、所要の安全性が確保できるように設定することを基本とする。

10.5.2 シールド工法

(1)設計の対象とする状況と作用

考え方

シールド工法により施工するトンネル本体において、主に照査の対象となるのはセグメント等で構成される覆工であり、トンネルとして使用目的に供された後及び施工中とともに、対象とする作用に対してその安全性と機能とが満たされるように設計する必要がある。

作用とは、覆工に対して応力及び変形の増減、材料特性に経時変化をもたらすすべての働きを含むものであり、鉛直土圧及び水平土圧、水圧、覆工の自重、上載荷重の影響、地盤反力、ジャッキ推力や裏込め注入圧等の施工時荷重、環境の影響は、設計にあたり常に考慮する基本的な作用である。

なお、トンネル内が圧力管となる場合は、内水圧の影響についても常に考慮する基本的な作用となる。

標準

覆工の設計に当たって考慮する作用は、次のとおりとする。

トンネル本体の状況作用
常時1)鉛直及び水平土圧
洪水時2)水圧
地震時3)覆工の自重
4)上載荷重の影響
5)地盤反力
6)環境の影響
7)施工時荷重
8)浮力
9)地震の影響
10)近接施工の影響
11)併設トンネルの影響
12)地盤沈下の影響
13)内水圧の影響
14)内部荷重
15)その他の作用

※トンネル本体の状況及び現場条件等を踏まえ、必要な作用を組み合わせて設計する。

(2)安全性能

(1)常時・洪水時の安全性能

考え方

シールド工法により施工されるトンネル構造による河川の覆工は、「10.5.2(1)設計の対象とする状況と作用」に示す状況ごとに、照査の条件として適切な作用の組合せを設定し、安全性能について照査する必要がある。

照査は、従来からの採用実績も豊富である許容応力度設計法により行う必要がある。ただし、レベル2 地震動に対する検討においては、部材非線形の領域まで取り扱う必要があり、この場合には限界状態設計法により行う必要がある。

標準

シールド工法により施されるトンネル構造による河川の覆工は、「10.5.2(1)設計の対象とする状況と作用」に示す状況ごとに、安全性能について照査することを基本とする。

照査に当たっては、これまでの経験及び実績から妥当とみなせる方法又は論理的に妥当性を有する方法等、適切な知見に基づく手法を用いることを基本とする。

例示

地下河川(シールドトンネル)内水圧が作用するトンネル覆工構造設計の手引きでは、土圧、地下水圧の大小、内水圧の大小及び覆工構造等の条件によって、部材に最大応力が生じる荷重の組合せは複数のケースが考えられるため、起こりうる各荷重の大きさと組合せを考慮して、全ての部材が安全になるよう設計計算を行い、設計が安全側になるように設定する手法が示されている。

なお、荷重の組合せについては、表 10.1 を参考とする。

表 10.1 荷重の組合せ

※覆工が鋼製セグメントの場合には、鋼材の圧縮が厳しくなるため、地下水位「高」のケースについても検討する場合がある。

※空水の状態とは、常時においてトンネル内部が空水の状態に対して起こりうる荷重を示している。

※平常時内水位とは、常時、洪水時において計画流量以下の流量に対して起こりうる荷重を示している。

※内水圧とは、満水状態で発生する内水圧、ウォーターハンマー現象により生じる負圧の荷重を示している。

<出典>地下河川(シールドトンネル)内水圧が作用するトンネル覆工構造設計の手引き、平成11年3月、(財)先端建設技術センター.(一部改変)

(2)地震時の安全性能

考え方

地下構造物は、一般にトンネルの質量が、トンネルの構築により排除された土の質量と比較して小さいため、また、トンネルの土被りがある程度以上ある場合にはトンネルは地盤の変形にほぼ追従すると考えられるため、土被りが大きく良好な地盤中のトンネルでは、一般に地震の影響の検討を省略してもよい。

ただし、地中接合部等のように覆工構造が急変する場合、軟弱地盤中の場合、土質等の地盤条件が急変する場合、急曲線部を有する場合、液状化の可能性がある場合は、トンネルが地震の影響を受けるものと考えられ、特に慎重な検討を行う必要がある。

標準

地震の影響が考えられる場合は、トンネルの使用目的やその重要度に応じて、立地条件、地山の条件、地震動の規模、トンネルの構造と形状及びその他の必要な条件を考慮し検討を行うことを基本とする。

(3)許容応力度

考え方

覆工において、許容応力度法を用いて設計を行う場合の許容応力度等は、使用する材料の基準強度や力学特性を考慮して、所要の安全性が確保できるように設定する必要がある。

覆工に用いる材料の基本的な許容応力度は、トンネル標準示方書[シールド工法編]・同解説に示される適切な値を使用し、この手引きに示していない強度区分等の許容応力度は、実験や解析等により適切に定める必要がある。

一時的な荷重に対しては、許容応力度を割増しすることができる。一時的な荷重には、施工時荷重、地震の影響、その他の作用のうちセグメントの貯蔵及び運搬あるいは特殊な組立方法によって発生する作用等がある。

標準

許容応力度等は、使用する材料の基準強度や力学特性を考慮して、所要の安全性が確保できるように設定することを基本とする。

例示

トンネル標準示方書[シールド工法編]・同解説では、一時的な荷重に対する許容応力度について、個々の作用が同時に作用する可能性やそれらの影響が累積する可能性はあまり高くないことから、様々な条件を検討した上で、許容応力度を以下のように割増しすることができると示されている。

1)コンクリート及び鉄筋は許容応力度の 50%を上限とする。

2)鋼材、球状黒鉛鋳鉄及び溶接構造用鋳鋼品は降伏点、又は耐力を上限とする。

3)ボルトは許容応力度の 50%を上限とする。

4)溶接部は許容応力度の 50%を上限とする。

ただし、コンクリート部材の許容せん断応力度を割り増す場合は、その破壊性状を考慮して慎重に検討する必要がある。

10.5.3 開削工法

(1)設計の対象とする状況と作用

考え方

開削工法により施工するトンネル本体においては、限界状態設計法による性能照査型設計法を導入する。開削工法は、仮設である土留め工を施工しながら全断面掘削し、箱形トンネルを築造する方式が広く採用されている工法であり、この場合の仮設構造物等は許容応力度設計法により設計する必要がある。

開削工法によるトンネル本体の設計は、構造物の使用目的に適合するための要求性能を設け、設計耐用期間を通じて要求性能が満足されていることを照査する必要がある。

要求される性能として、安全性、復旧性及び耐久性がある。安全性は、使用者等の人命や財産を脅かさないための性能等を示し、構造体としての安全性と機能上の安全性がある。復旧性は、地震の影響等によって低下したトンネルの性能を回復させ、継続的な使用を可能とする性能を示す。耐久性は、トンネル構造物の材料の劣化により生じる性能の経時的な低下に対して構造物が有する抵抗性を示す。

トンネル本体の状況作用
常時1)自重
洪水時2)地表面上の荷重
地震時3)土被り荷重
4)土圧及び水圧(土圧と水圧を分離して扱うことが困難な場合には土圧と水圧を分離せずに側圧として考慮する)
5)揚圧力
6)トンネル内部の荷重(内水圧を含む)
7)施工時荷重
8)温度変化及び乾燥収縮の影響
9)地盤変位の影響
10)地震の影響
11)その他の作用

標準

開削工法によるトンネル本体構造の設計では、照査は限界状態設計法により行い、構造物の使用目的に適合するための要求性能を設定し、設計耐用期間を通じて要求性能が満足されていることを照査することを基本とする。

作用は、構造物又は部材に応力及び変形の増減、材料特性に経時変化をもたらす全ての働きを含むものであり、性能照査に当たっては、一般に以下に示す作用を基本とする。なお、作用はその性状に応じて、永続作用、変動作用、偶発作用に分類する。

例示

トンネル標準示方書[開削工法編]・同解説では、作用の種類別の作用分類について、以下のとおり示されている。

作用は、持続性、変動の程度及び作用する頻度によって、一般に永続作用、変動作用及び偶発作用に分類される。これらの作用分類には、以下表に示す作用が含まれる。

解説 表 2.3.1 作用種類別の作用分類

作用の種類内容作用分類
自重(固定死荷重)躯体自重永続作用
地表面上の荷重(付加死荷重)舗装、軌道、盛土、建物荷重永続作用
地表面上の荷重(活荷重)路面交通、列車自重主たる変動作用
土被り荷重埋戻し土重量永続作用
土圧(側圧)永久荷重としての土圧(側圧)永続作用
土圧(側圧)変動荷重としての土圧(側圧)主たる変動作用
土圧、水圧永久荷重としての間隙水圧永続作用
土圧、水圧変動荷重としての間隙水圧変動作用
土圧、水圧異常時水圧偶発作用
揚圧力永久荷重としての間隙水圧永続作用
揚圧力変動荷重としての間隙水圧変動作用
揚圧力異常時間隙水圧偶発作用
トンネル内部の荷重(付加死荷重)付属設備、固定施設物永続作用
トンネル内部の荷重(活荷重)自動車、水荷重(内水圧を含む)主たる変動作用
温度変化及び乾燥収縮の影響-従たる変動作用
地盤変位の影響地盤沈下、近接施工、鉛直付加荷重永続作用
地震の影響慣性力、地震時地盤変位、過剰間隙水圧偶発作用
施工時荷重-変動作用

<出典>トンネル標準示方書[開削工法編]・同解説、平成28年8月、(公社)土木学会.(一部改変)

(2)安全性能

(1)常時・洪水時の安全性能

考え方

開削工法によるトンネルの性能照査は、要求性能に応じた限界状態についてそれぞれ定め、構造物の耐荷力や安定性の限界状態に至らないことを確認する必要がある。

標準

開削工法によるトンネルの性能照査は、以下によることを基本とする。

1)要求性能に応じた限界状態についてそれぞれ定め、構造物の耐荷力や安定性の限界状態に至らないことを確認する。

2)限界状態に対する照査は、適切な照査指標を定め、その限界値と応答値との比較により行う。

例示

トンネル標準示方書[開削工法編]・同解説では、「要求性能、限界状態、照査指標と設計作用の例」、「設計作用の組合せの考え方」について、以下のとおり示されている。

解説 表 2.2.1 要求性能、限界状態、照査指標と設計作用の例

要求性能限界状態照査指標考慮する設計作用
安全性(断面破壊)断面破壊すべての作用(最大値)
安全性(疲労破壊)疲労破壊応力度、力繰り返し作用
安全性(安定(変位、変形))安定(変位、変形)変位、基礎構造による変形すべての作用(最大値)、偶発作用
復旧性修復性力、変位等偶発作用(地震の影響等)
耐久性鋼材の腐食中性化深さ、ひびわれ幅等環境作用等

<出典>トンネル標準示方書[開削工法編]・同解説、平成28年8月、(公社)土木学会.(一部改変)

表 2.3.1 設計作用の組合せの考え方

要求性能限界状態設計作用の組合せの考え方
安全性断面破壊等永続作用+主たる変動作用+従たる変動作用
安全性疲労永続作用+変動作用
安全性安定永続作用+変動作用
耐久性鋼材の腐食、コンクリートの劣化永続作用+変動作用

<出典>トンネル標準示方書[開削工法編]・同解説、平成28年8月、(公社)土木学会.(一部改変)

(3)作用の特性値と安全係数

考え方

作用の特性値と安全係数は、以下の事項を考慮して定める必要がある。

1)作用の特性値

作用の特性値は、検討すべき要求性能に対する限界状態についてそれぞれ定め、構造物の性能照査に使用する設計作用は、作用の特性値に作用係数を乗じた値とする。

  • a)安全性に関する照査に用いる永続作用、主たる変動作用及び偶発作用の特性値は、トンネルの施工中及び設計耐用期間に生じる最大値の期待値とする。ただし、小さい方が不利となる場合には、最小値の期待値とする。また、従たる変動作用の特性値は、主たる変動作用との組合せに応じて定める。なお、疲労の検討に用いる作用の特性値は、トンネルの設計耐用期間中の作用の変動を考慮して定める。
  • b)耐久性に関する照査に用いる作用の特性値は、トンネルの施工中及び設計耐用期間に比較的しばしば生じる大きさのものとする。
  • c)作用の規格値又は公称値がその特性値とは別に定められている場合には、作用の特性値は、その規格値又は公称値に作用修正係数を乗じた値とする。

2)安全係数

安全係数は、構造物の設計における不確実性及び重要性を考慮して、構造物が各要求性能の限界状態に対して所要の安全性を有していることを保証するための係数であり、作用係数、構造解析係数、材料係数、部材係数、構造物係数及び地盤抵抗係数がある。

標準

作用の特性値と安全係数は、以下によることを基本とする。

1)作用の特性値は、検討すべき要求性能に対する限界状態についてそれぞれ定め、構造物の性能照査に使用する設計作用は、作用の特性値に作用係数を乗じた値とする。

2)構造物の設計における不確実性及び重要性を考慮して、構造物が各要求性能の限界状態に対して所要の安全性を有していることを保証するために、安全係数を使用する。

例示

トンネル標準示方書[開削工法編]・同解説では、「安全係数の標準的な値」、「作用係数」、「作用の組合せと作用係数の例(地震の影響を除く)」について、以下のとおり示されている。

解説 表 2.2.2 安全係数の標準的な値

<出典>トンネル標準示方書[開削工法編]・同解説、平成28年8月、(公社)土木学会.(一部改変)

表 2.3.2 作用係数

要求性能(限界状態)作用の分類作用係数 γf\gamma_f
安全性(断面破壊等)永続作用(固定死荷重)1.0〜1.1*
永続作用(付加死荷重)1.0〜1.2*
永続作用としての土圧または側圧0.8〜1.2
主たる変動作用1.1〜1.2
従たる変動作用1.0
偶発作用1.0
安全性(疲労)すべての作用1.0
耐久性すべての限界状態1.0

*自重以外の永続作用で小さい方が不利となる場合には、作用係数を 0.9〜1.0 とするのがよい。

<出典>トンネル標準示方書[開削工法編]・同解説、平成28年8月、(公社)土木学会.(一部改変)

解説 表 2.3.5 作用の組合せと作用係数の例(地震の影響を除く)

<出典>トンネル標準示方書[開削工法編]・同解説、平成28年8月、(公社)土木学会.(一部改変)

(2)地震時の安全性能

考え方

耐震性に関する要求性能は、地震作用に対する安全性並びに復旧性の観点から総合的に考慮する必要がある。耐震性に関する照査は、地震時及び地震後の構造物の安全性を確保するとともに、人命や財産の損失を生じさせるような壊滅的な損傷の発生を防ぐこと、及び地域住民の生活活動に支障を与えるような機能の低下を極力抑制することを目標とする。

1)照査は、地震時及び地震後に対する安全性並びに地震後の修復性を総合的に考慮したものとする。

2)照査に当たっては、横断方向、縦断方向ごとに、構造物及び地盤の特徴を十分に把握した上で、想定する地震動と耐震性能照査手法を定めて、構造物の耐震安全性を確認する。また、トンネル周辺地盤の安定性についても確認する。

標準

耐震性に関する安全性の確保は、以下によることを基本とする。

1)要求性能は、地震作用に対する安全性並びに復旧性の観点から総合的に考慮する。

2)照査は、地震時及び地震後の構造物の安全性を確保するとともに、人命や財産の損失を生じさせるような壊滅的な損傷の発生を防ぐこと、及び地域住民の生活活動に支障を与えるような機能の低下を極力抑制することを目標とする。

10.6 各部位の設計等

10.6.1 トンネル本体

(1)山岳工法

(1)設計の基本

考え方

山岳工法によるトンネルの設計は、これまでの経験に基づき分類した地山等級とそれに対応する標準設計を適用して設計する方法や類似施工例を参考にして設計する方法が一般に採用されており、これらの方法を適切に用いることで必要な性能を満足したトンネルを設計することができる。なお、地山条件が特殊な場合や都市部等で上記の方法を適用できないような場合には、数値解析手法を用いた設計が必要となる場合もある。

山岳工法によるトンネルの設計に当たっては、トンネルの用途や規格及び構造等を勘案した上で、調査結果に基づき安全かつ経済的に施工できるようにトンネルを設計する必要がある。その際、供用後の利用形態や維持管理のしやすさにも十分配慮する必要がある。

山岳工法によるトンネルでは、トンネル掘削に伴う地山の緩み領域の外側に、トンネル上部の土被り荷重を周りの地山に再配分して平衡状態となるグラウンドアーチと呼ばれる領域が形成されると考えられている。山岳工法によるトンネルの設計では、支保工を設置することにより、グラウンドアーチの効果的に活用することを前提としている。すなわち、山岳工法によるトンネルとは地山自身が山岳工法によるトンネルであり、その空間の保持は、支保工や覆工、インバートの性能のみに期待するのではなく、地山自身が有する空間保持能力にも期待している。

標準

トンネルの設計では、使用目的、使用形態、その他必要となる条件を満たした上で、経済性、安全性、周辺への影響の程度、施工性のみならず供用後の経済性、保守性等の保全業務に求められる条件を総合的に勘案し、調査結果を十分吟味し、地山の支保機能が最大限発揮されるよう、支保工、覆工、インバートに必要な性能を満足した設計とすることを基本とする。

(2)支保工の設計

考え方

支保工に求められる基本的な性能は、トンネル掘削によって発生する応力、変位に対して、トンネル周辺地山と一体となって作用するとともに、地山の支保機能を有効に活用して、トンネル及び周辺地山の安定化を図る必要がある。

支保工の部材としては、吹付けコンクリート、ロックボルト、鋼製支保工等があり、これらの支保部材の特徴を考慮して単独、又は組み合わせて用いることにより、効果的な支保工とする。特に不良な地山条件では、覆工やインバートに力学的な性能を付加して設計することもある。

支保工は、必要な性能を満足するとともに、その施工に際し、作業が安全かつ能率的に行えるよう設計する。特に、特殊な地山条件や掘削断面積が大きいなどの理由により、切羽の安定性に問題がある場合には、適切な切羽安定対策工等の補助工法も組み合わせて支保工を設計する。なお、施工中にトンネルの観察・計測を行い、その結果の分析から、必要に応じて当初の設計を合理的かつ経済的な設計に修正することが重要である。

標準

支保工の設計に当たっては、以下の事項を反映することを基本とする。

1)支保工は、トンネルの掘削後、周辺地山と一体になり、早期に安定化を図るよう設計する。また、地山の挙動が地表面や周辺構造物に有害な影響を及ぼすおそれがある等、設計上制約を設ける場合には、必要な性能を満足する構造とする。

2)支保工は、作業が安全かつ能率的に行えるよう設計する。

(3)覆工の設計

考え方

トンネルの覆工は、使用の目的、使用の条件等に適合した性能を発揮するように設計する。また、長期間にわたり使用目的に応じて亀裂、変形、崩壊等を起こさず、漏水等による浸食や強度の減少等の少ない耐久性のあるもので、特にトンネル構造による河川では、河床材料や流下物による摩耗や、ひび割れを防止する必要がある。一般に、トンネルの供用後に覆工を抜本的に改修することは非常に困難であるので、将来、できるだけ改修の必要が生じないよう、設計段階から十分に配慮する必要がある。

水路トンネルの覆工等、水密性が重要な場合には、コンクリートの許容ひびわれ幅と、要求される水密性の程度及び卓越する作用断面力の種類等に基づき、ひびわれ対策の検討を行う。特に、マスコンクリートとして取り扱うべき場合等、セメントの水和に起因するひび割れが懸念される場合には、ひび割れにより構造物の所要の性能が損なわれないように、温度解析により初期状態からの温度変化と自己収縮によるコンクリートの体積変化を求め、これらを採り入れた応力解析によって算定されたコンクリートの応力に基づいて照査を行う必要がある。

標準

覆工の設計に当たっては、以下の事項を反映することを基本とする。

1)覆工は、トンネルの使用目的に適合し、安全で長く使用に耐えるものとする。

2)トンネル構造による河川の覆工等、水密性が重要で、かつマスコンクリートでありセメントの水和に起因するひび割れが懸念される等の場合は、解析によって算定されたコンクリートの応力に基づいて照査を行う。

(4)インバートの設計

考え方

トンネルの設計に当たっては、供用性や力学的な観点より、インバートが必要となる場合がある。供用性としては、覆工とともに、必要な内空断面を保持すること、水密性のよい構造物にすること、円滑な流路を形成すること等が求められる。力学的には、施工時の変位を抑制することや供用後の長期的な安定性を向上させることが求められる。

標準

インバートは、覆工や支保工と一体となってトンネルの使用目的に適合し、必要な性能を満足するように設計する。

(5)防水工及び排水工の設計

考え方

トンネルの漏水は、覆工やトンネル内諸設備の機能や耐久性を低下させるため、適切な防水工、排水工を設計する必要がある。

一般に山岳工法によるトンネルでは、トンネル周辺の地下水を覆工背面に滞留させることなく排水し、覆工に過大な地下水圧の作用や覆工内面に漏水を生じさせない構造としている。しかし、都市部のみならず山岳部においても周辺環境に影響を及ぼすおそれがある場合には、施工後に地下水位を回復させる、いわゆる防水型トンネルとして設計、施工する必要が生じている。したがって、防水工、排水工等は通常のトンネルと防水型のトンネルを区別して設計する必要がある。

通常のトンネルでは地下水を円滑に排水し、覆工に過大な水圧を作用させない構造とすることにより、覆工の耐力に問題を生じさせず、トンネル完成後の地下水位の復元等による覆工背面からの漏水のない構造とする。一方、開水路形式のトンネル構造による河川のように、トンネル内に漏水が生じても機能上問題がないようなトンネル、又は大きな水圧が作用し構造的に防水が困難なトンネルでは、場合によりウィープホール(水抜き孔)等によりトンネル内に地下水を排水できる構造とする。

防水型トンネルでは、地下水保全を目的としたトンネル完成後の地下水位の復元等に対し、通常のトンネルに比べより確実な防水工が要求される。圧力管形式のトンネル構造による河川等においては、その機能上、高い水密性が要求される。

標準

トンネル機能を維持し、覆工等の劣化を防ぐため、トンネルの用途に応じて適切な防水工、排水工を設計することを基本とする。

(6)坑口部及び坑門の設計

考え方

坑口部とは、トンネルの出入り口付近で、土被りが小さく、グラウンドアーチが形成されにくい範囲をいう。坑口部は斜面の表層付近に位置し、表層土や崖錐堆積物、風化した地山等が分布することがあり、これらが浸食や崩壊及び堆積することで複雑な地形が形成されることが多い。そのためトンネル掘削や坑口付けにより地すべりや斜面崩壊を引き起こしやすい。供用後においても落石、土石流、雪崩、地震等の自然災害の影響を受けやすく、上載荷重や土圧の影響を受けることもある。

したがって、坑口部及び坑門の設計に当たっては、断面の大きさ、坑口付近の地形、地質、地下水、気象等の自然条件及び人家、構造物の有無等の社会的制約条件を十分把握するとともに、斜面安定、自然災害の可能性、景観、周辺環境との調和等を考慮して、坑口部の構造や施工方法、坑門形式、坑門形状等を適切に決定する必要がある。

標準

坑口部及び坑門は山岳条件、断面の大きさ、立地条件、周辺の環境に与える影響、景観及び施工方法等を十分考慮して設計することを基本とする。

(7)特殊条件に対する設計

考え方

特殊条件を有するトンネルにおいては、各条件に応じて適切に設計する必要がある。

1)特殊な地山(地すべりや斜面災害が予想される地山、断層破砕帯、褶曲じょう乱帯、未固結地山、膨張性地山、山はねが生じる地山、高い地熱、温泉、有害ガス等がある地山、高圧、多量の湧水がある地山)

2)特殊な位置(都市域を通過、小さな土被り、特に大きな土被り、水底を通過)

3)近接施工(既設構造物に近接、相互に近接、近接施工の影響)

4)特殊な形状と寸法(分岐部及び拡幅部、特に大きな断面、その他)

5)完成後の外力(土圧、水圧、地震、その他)

これらの特殊条件に該当する場合は、調査において設計に必要な情報を取得した上で、それぞれの条件に応じて支保工、覆工、インバート、防水工及び排水工等を設計する。

標準

特殊な地山、特殊な位置、近接施工、特殊な形状と寸法、完成後の外力等、特殊条件を有するトンネルにおいては、各条件に応じて適切に設計することを基本とする。

(8)完成後の外力

考え方

山岳工法によるトンネルでは、基本的に完成後の覆工やインバートに作用する荷重は考えなくてよいが、以下のように外力を受ける場合においては、覆工やインバートに力学的な性能の付加を考慮し、解析的手法や類似事例に基づいた設計を行う必要がある。

1)土圧が作用する場合:膨張性地山において、地山の変形が完全に収束する前に覆工を施工し覆工とインバートで荷重と変形を抑えようとする場合、覆工やインバートに作用する荷重を考慮して設計する。また、土被りが非常に小さい未固結地山等では、完成後に緩み土圧が作用する場合がある。その他、偏圧地形の場合において、地すべりの存在等、地質条件によっては、施工中だけでなく完成後にも偏土圧を受ける場合があり、設計に反映する。

2)水圧が作用する場合:周辺の地下水をトンネル内の排水工に導かない場合では、トンネルを防水型とするため、覆工やインバートへの水圧の作用を考慮して設計する。このような事例は都市部だけでなく、山岳部でも増加している。また、トンネル構造による河川において内水圧が作用する条件においては、これを考慮した設計を行う。

3)地震の影響を受ける場合:地質の不良区間の存在等、地震の影響を考慮すべき条件で、大きな地震に対する覆工補強が必要となる場合がある。山岳工法によるトンネルにおいては地震の影響を考慮しないことが多いが、地山条件によっては、山岳工法によるトンネルでも地震の被害を受ける可能性があり、その程度によって地震の影響を考慮して設計する。

4)その他の外力の影響を受ける場合:完成後に近接施工の影響を受ける場合や、地山の凍土圧、内部荷重、上載荷重等をうける場合、必要に応じてこれらを考慮して設計する。

以上の荷重に対し、覆工やインバートに力学的な性能を付加させる場合は、大きな耐力が要求されることから、鉄筋コンクリート構造としたり、短繊維等を用いたりして補強し、耐荷能力を高める。なお、耐荷能力向上ではなく、覆工コンクリートのはく離、はく落対策として繊維補強を行うこともある。設計においては、覆工やインバートに作用する外力を骨組構造解析や有限要素法解析を用いて設定するのが一般的である。

標準

トンネル完成後に、土圧、水圧、地震の影響、その他の外力を受ける場合においては、解析的手法や類似事例に基づいて覆工やインバートの設計をすることを基本とする。

(2)シールド工法

(1)設計の基本

考え方

シールド工法によるトンネルの設計に当たっては、トンネルの用途や規格及び構造等を勘案した上で、調査結果に基づき工事が安全かつ経済的に施工できるようにトンネルを設計する必要がある。その際、供用後の利用形態や維持管理のしやすさにも十分配慮する必要がある。

シールド工法によるトンネルは、施工の影響を大きく受ける構造物であり、工事開始から地山内で安定するまでの間に受ける様々な影響を可能な限り設計で考慮する。また、シールド工法によるトンネルを施工する現場の条件によって、万一事故が発生した場合の被害の度合いが大きく異なると考えられ、特に、河川の地下等で施工するシールド工法によるトンネルに事故が発生した場合には、大量出水等の大きな被害が発生することが想定できるため、現場条件に応じたリスクを想定した上で、適切な安全性を有する設計を行う必要がある。

標準

シールド工法によるトンネルの設計に当たっては、調査によって得られた条件をもとに安全性、経済性、工期、維持管理性等を考慮し、事業計画に応じたトンネルの内空断面、線形、立坑、覆工、工事の計画、環境保全計画等を決定することを基本とする。

(2)覆工の役割

考え方

覆工の役割は主として、次の3つに大別される。

1)トンネル内空を確保するため、トンネルに対する作用に十分に抵抗すること。

2)トンネルの使用目的、維持管理に適合した機能と耐久性を有すること。

3)トンネルの施工条件に適合した覆工構造を有すること。

シールド工法によるトンネルにおける覆工は、一次覆工と二次覆工からなる。一般に、一次覆工はいくつかのセグメントをリング状に組み立てた構造からなる。また、二次覆工は一次覆工の内側に打設されるコンクリート構造からなる。

標準

覆工は、周辺地山の土圧、水圧等の作用に耐え、所定のトンネル内空を確保するとともに、トンネルの使用目的、維持管理及び施工条件に適合した機能を有する安全かつ堅固な構造物とすることを基本とする。

(3)覆工構造の選定

考え方

トンネルの覆工は、元来は一次覆工と二次覆工で構成され、主に力学的な機能を一次覆工に、耐久的な機能を二次覆工に受け持たせることが一般的であった。しかし、社会的な背景から、最近では経済性や施工性の向上等を目的に、二次覆工の機能を一次覆工に受け持たせるか、もしくは代替措置を施した一次覆工のみからなる構造が用いられるようになってきている。

二次覆工の機能を一次覆工に持たせ、二次覆工を施さない場合にも、将来的な維持管理としての補修や補強に備えた空間を一次覆工の内側に確保し、トンネル内空断面に余裕を持たせることなども選択肢のひとつである。

標準

覆工は、トンネル構造による河川の使用目的に応じた機能を満足するとともに、地山の条件及び施工方法等に適合し、かつ防水、防食等の耐久性を考慮して、その構造、材質、形式等を選定することを基本とする。

(4)覆工の設計

考え方

覆工の設計に当たって、作用の設定とそれに対する構造モデルの選択は、経験と理論とに根ざして現象をできるだけ正しく説明できるようにする。また、トンネルの力学的挙動は複雑であることから、多少でも不明な点がある場合には、少なくとも構造の安全性が確認できるようにする必要がある。

覆工の設計においては、トンネルの使用目的に応じ、必要とされる耐荷性、耐久性を確認することはもちろんのこと、ジャッキ推力や裏込め注入圧等の施工途中における荷重に対しても安全性を確認することが重要である。また、施工時においてセグメントが受ける荷重は、その状況により複雑に作用することから、その挙動を十分に把握して設計に反映することが重要である。特に、大深度や大断面のトンネルでは、従来から想定していなかった大きな施工時荷重が作用することもあるので、想定外の作用に対してセグメントが耐えることができるよう安全に余裕を持たせた形状寸法や材料を採用する必要がある。

許容応力度設計法は、従来からの採用実績も豊富であり、許容応力度設計法に基づき設計を行う。ただし、レベル2 地震動に対する検討においては、部材非線形の領域まで取り扱う必要があり、この場合には限界状態設計法による。なお、許容応力度設計法に基づく場合においても、せん断耐力を向上させるなど、部材が脆性的な破壊とならないように配慮することも重要である。

標準

本節における覆工の設計は、許容応力度設計法によることを基本とする。

(5)セグメントの構造計算

考え方

セグメントの構造計算で考慮する作用の種類、トンネルの拘束条件及び地盤の変形等によっては、トンネルの横断面内の変形と縦断方向の変形とが同時に生じることとなるが、構造計算の簡便さと発生断面力への影響の度合いを考慮して、トンネルを横断方向と縦断方向に分けてモデル化し各々独立に構造計算する。なお、構造計算は横断方向を主として行い、縦断方向の構造計算は必要に応じて行う必要がある。

標準

セグメントの構造計算は、以下の事項を反映することを基本とする。

1)トンネルの構造計算は、横断方向と縦断方向に分けて行う。

2)トンネルの構造計算は、施工途中の各段階及び完成後の状態に応じた作用に対して、安全側となるように行う。

3)トンネル横断面で考慮する作用は、設計の対象となるトンネルの区間内の最も不利な条件をもとに定める。

4)不静定力又は弾性変形の計算におけるセグメントの曲げ剛性や軸剛性は、セグメントの種類に応じて適切に計算する。

(6)セグメントの設計細目

考え方

セグメントの主断面及び主桁は、設計荷重に対して主体となる構造部材であり、所要の強度及び剛性を有することはもちろんのこと、製作や施工に当たって不具合が生じないような形状寸法を確保するとともに、止水性についても十分に考慮することが重要である。

設計にあたり留意する構造の細目については以下のとおりとする。

1)鉄筋

  • a)鉄筋の曲げ形状は、鉄筋の所要の性能が発揮されるよう、曲げ加工性、コンクリートの充填性及び配筋のおさまり等に十分に配慮する。
  • b)セグメントの主鉄筋の水平のあきは、粗骨材最大寸法の 5/4 以上、主鉄筋の直径以上とする。
  • c)鉄筋の継手は、原則として設けない。やむをえず設ける場合は、鉄筋の種類、直径、継手構造等に応じて適切な方法を選び、継手部と隣接する鉄筋とのあき、また継手部相互のあきは、コンクリートの充填性を考慮して定める。
  • d)定着のために用いられる鉄筋端部は、コンクリート中に十分埋め込んで鉄筋とコンクリートの付着力によって定着するか、フックをつけて定着するか、また機械的に定着する。
  • e)かぶりは、コンクリートの品質、鉄筋の直径、トンネル内外の環境条件、セグメントの製作精度等を考慮して定める。
  • f)セグメントは、ぜい性的な破壊性状を示さない鉄筋量を配筋する。
  • g)継手金物や注入孔等の周囲には用心鉄筋等を適切に配置し、応力集中その他によるひび割れを防止する。

2)継手構造 - セグメントの継手構造は、施工時及び完成後の作用に対し所要の強度と剛性を有するとともに、組立てでの確実性、作業性及び止水性を考慮して定める。

3)継手の配置 - 継手の配置は、覆工構造に要求される強度や剛性が確保されるように考慮するとともに、セグメントの製作性、組立て時の施工性及び止水性に配慮して定める。

4)縦リブ構造 - 鋼製セグメントでは、ジャッキ推力が適正に伝達でき、スキンプレートに作用する土水圧を主桁へ確実に伝達できるように、縦リブの配置を考慮する。

5)注入孔 - セグメントには、裏込め注入が均等にできるように必要に応じて注入孔を設ける。

6)吊手 - セグメントには移動、運搬、組立て等の目的で吊手を設ける。

7)その他の設計細目

  • a)溶接は所要の品質が確保できる作業方法や手順によって正確かつ丁寧に行う。
  • b)鋼製セグメントに二次覆工コンクリートを打設する場合、縦リブにはあらかじめ空気抜きを設ける。
  • c)鋼製セグメントではセグメント継手板を補強し、継手剛性を高めることを目的とした補強板を必要に応じて設ける。
  • d)鉄筋コンクリート製セグメントでは、原則として面取り等の欠け防止策を施す。
  • e)セグメントには、止水性の確保を目的として必要に応じてセグメント継手面にシール溝を設け、これにシール材を貼付する。
  • f)セグメントの内面には、止水性の確保、漏水の導水、端部の割れや欠けの防止等を目的に必要に応じてコーキング溝を設ける。

標準

セグメントの主断面及び主桁構造は、必要な強度を有するとともに、製作性、施工性及び止水性を考慮して定めることを基本とする。

(7)二次覆工

考え方

二次覆工は、トンネルの用途や施工箇所等に応じて以下の事項に留意し設計を行う必要がある。

二次覆工を施さないトンネルの場合は、一次覆工に二次覆工が担うべき機能を持たせなければならないため、そのようなトンネルの一次覆工の設計でも参考となる。

二次覆工は、一般的に現場打ちコンクリート等を巻き立てる場合が多い。この場合、一次覆工は土圧や水圧等の外荷重の主体構造として設計する一方、二次覆工は防水、内面平滑性の確保等、一次覆工とは異なる役割を持たせて設計し、構造部材としては評価しないのが一般的である。

標準

二次覆工は、以下に示す項目について検討を行い、対象となるトンネルの用途や施工箇所等に応じた機能等を満足することを基本とする。

1)二次覆工の機能

2)二次覆工の形式

3)二次覆工が必要となる箇所

二次覆工が必要となる施工箇所については、鋼製セグメントを使用する箇所、内水圧が作用するトンネル、取付け覆工部等が考えられる。

例示

トンネル標準示方書[シールド工法編]・同解説では、トンネルの用途別の二次覆工の機能について、以下のとおり示されている。

解説 表 2.10.1 トンネルの用途別二次覆工の機能(参考)

※ ◎は主目的である機能、○は付加的あるいは特殊な場合の機能。

<出典>トンネル標準示方書[シールド工法編]・同解説、平成28年8月、(公社)土木学会.

(8)覆工の耐久性

考え方

一次覆工であるセグメントは覆工の主体構造であり、一般に十分に管理された工場で製作されるため、品質も均一で耐久性も高い製品である。しかしながら、長期にわたる供用中にセグメントの所要の耐久性が低下すると、トンネルの用途に応じた構造上の安全性等、セグメントの機能に影響を与える。したがって、セグメントの設計、製作及び施工に当たっては、事前にセグメントの長期にわたる耐久性について十分に検討する必要がある。

1)止水 - セグメント本体部は、水密性を確保する。セグメントの継手面には、シール材等による止水工を施す。立坑やトンネル開口部等、トンネルと異種構造物との接続部には、止水性を確保する。

2)ひび割れ幅の検討 - トンネルの供用期間中の機能及び使用目的等を損なわないように、セグメントに発生するひび割れ幅について十分な検討を行う。

3)防食及び防せい - セグメントには、必要に応じて防食及び防せいの処理を行う。鋼製セグメントや合成セグメントには必要に応じて防食や防せいのための処理を行う。防食及び防せいの処理は一般に塗装による場合が多いが、腐食代を設定する場合もある。

標準

一次覆工(セグメント)及び二次覆工は、トンネルの用途、トンネル内の環境、周辺地盤の環境を考慮して、耐久性を確保することを基本とする。

(3)開削工法

(1)設計の基本

考え方

開削工法によるトンネルは、自然条件、社会条件、施工性、経済性、環境性等を考慮した使用目的に応じ、所要の性能が発揮されるよう、合理的な構造体として設計する。このためには、計画段階において用途に応じた適切な線形、勾配、内空断面等を決定するとともに、施工中及び完成後の構造物の強度、変形、安定等について、状況に応じた作用を選定して検討を行い、構造物に要求される性能を確保するように設計を行う必要がある。

標準

開削工法によるトンネルの設計では、構造物の使用目的に適合するための要求性能を設定し、設計耐用期間を通じて要求性能を満足するか照査することを基本とする。

(2)部材の設計

考え方

開削工法によるトンネルを構成する各部材は、各部材ごとに単体及び部材が構成する構造全体として、所要の性能と安全性等を確保でき、かつ経済的となるよう、適切な構造解析手法、構造理論、経験から定められた設計手法により設計する必要がある。設計に当たっての主な留意点は以下のとおりである。

1)はり - a)構造解析、b)スパン、c)T形ばりの圧縮突縁の有効幅、d)連続ばり、e)ディープビーム

c)T形ばりの圧縮突縁の有効幅

曲げモーメントに対するT形ばりの圧縮突縁の有効幅は、一般に次式により求めてよい。

両側にスラブがある場合(図 10-4 参照)

be=bw+2(bs+l/8)b_e = b_w + 2(b_s + l/8)

ただし beb_e は両側スラブの中心線間の距離を超えない。

片側にスラブがある場合(図 10-4 参照)

be=b1+bs+l/8b_e = b_1 + b_s + l/8

ただし、beb_e はスラブの純スパンの 1/2 に b1b_1 を加えたものを超えない。

ここに、ll は、単純ばりではスパン、連続ばりでは反曲点間距離、片持ばりでは純スパンの2倍とする。

また、bsb_s はハンチの高さに等しい値より大きくとらない。

図 10-4 T形ばりの圧縮突縁の有効幅

<出典>トンネル標準示方書[開削工法編]・同解説、平成28年8月、(公社)土木学会.

d)連続ばり

連続ばりの中間支点上の負の曲げモーメントは、次式により低減してよい。

Md=Modrv2/8ただし、Md0.9ModM_d = M_{od} - rv^2/8 \quad \text{ただし、} M_d \geq 0.9 M_{od}

ここに、

  • MdM_d:中間支点上で低減された設計曲げモーメント
  • ModM_{od}:支承として求めた中間支点上の設計曲げモーメント
  • RodR_{od}:中間支点の設計支点反力
r=Rod/vr = R_{od}/v
  • vv:断面の図心位置における支点反力の部材軸方向の仮想分布幅

e)ディープビーム

スパンとはり高さの比が次の値以下のはりで、詳細な検討を行わない場合には、ディープビームとして扱う。

種類条件
単純ばりl/h<2.0l/h < 2.0
2スパン連続ばりl/h<2.5l/h < 2.5
3スパン以上の連続ばりl/h<3.0l/h < 3.0

ここに、ll:はりのスパン、hh:はりの高さ

2)柱 - 柱の設計は、部材の形状及び剛性、接合する部材との剛比、接合部の構造並びに載荷の状態等を考慮した構造解析により算定した軸方向力、曲げモーメント及びせん断力等に基づいて行う。

3)スラブ一般 - スラブの曲げモーメント、せん断力、ねじりモーメント及び支点反力は、スラブの支持状態、スラブの形状、載荷状態等を考慮して、薄板理論により求める。

4)壁 - 壁は、その形状及び荷重の作用する方向によって、柱、スラブ又は、はりに準じて設計してよい。

5)アーチ - アーチ構造物は、曲線状の骨線を持ったスラブと壁、柱等で構成された構造物とみなし、ラーメンとして解析してよい。

6)プレキャストコンクリート - プレキャストコンクリートは、単体として、またそれを使用した構造物として、所要の性能と安全性を確保でき、かつ経済的となるように設計する。

標準

開削工法によるトンネルを構成する各部材は、各部材ごとに単体及び部材が構成する構造全体として、所要の性能と安全性等を確保でき、かつ経済的となるよう、適切な構造解析手法により設計することを基本とする。

(3)構造細目

考え方

開削工法によるトンネルは、一般に鉄筋コンクリート構造で地下水位以下に造られることが多いため、トンネル躯体の水密性には十分に留意する。このため、トンネル躯体を水密構造にする方法又は防水物質でトンネル躯体を被覆して防水層を造り水密構造にする方法等によりトンネル躯体の水密性を保持する手段がとられている。防水工は躯体が直接水圧を受ける面に施す。

トンネル内部の施設を地下水の浸透から保護するとともに躯体の劣化防止を図り、トンネルの機能を保持するため、開削工法によるトンネルには防水工を施す必要がある。

コンクリート打継ぎ目地は、コンクリートの打設により生じる不可避な目地で、コンクリートの硬化収縮、温度変化等に伴って防水上の弱点となりやすい。不特定な位置に発生するひびわれを、定めた位置に強制的に発生させるために設ける目地で、あらかじめ所定の間隔で断面欠損部を設け、ひびわれ発生箇所を制御するのを目的としている。

したがって、トンネル躯体のコンクリート打継ぎ目地、ひびわれ誘発目地は、防水上の弱点とならないようにする。

隅角部及び部材接合部は一般に応力が大きくなるばかりでなく、応力の流れが不規則になる場所でもある。したがって、ラーメン隅角部及び部材接合部にはハンチを設けるとともに、ハンチに沿って用心鉄筋を配置し、十分な補強をする。

砂粒を含む流水、交通により損傷を受ける構造物、あるいは化学的に浸食を受ける構造物等で、すりへり、腐食、衝撃等の激しい作用を受ける部分については、特に高い耐久性能を持たせる場合には、木材、良質な石材、鋼板、高分子材料等の材料でコンクリート表面を防護する必要がある。

標準

開削工法によるトンネルの構造は、以下の事項を反映することを基本とする。

1)トンネル躯体は、その水密性に対して十分に留意する。

2)トンネル躯体には、必要に応じてトンネルの構造や形状、施工方法及び施工環境に応じた防水工及び排水工を考慮する。

3)トンネル躯体のコンクリート打継ぎ目地、ひびわれ誘発目地は、防水上の弱点とならないようにする。

4)開削工法によるトンネルの隅角部及び部材接合部にはハンチを設ける。

5)すりへり、劣化、衝撃等の激しい作用を受ける部分では、耐久性能を確保するために、適切な材料でコンクリート表面を防護する必要がある。

(4)地下連続壁を本体利用する場合の設計

考え方

開削工法によるトンネルや立坑では、深い掘削を行うことが多く、大きな側圧を受けることから、土留め壁には高い剛性を有する地下連続壁を用いることがある。その際、地下連続壁を構造物幅の縮小、掘削土量の低減、工事費の節減の観点から、永久構造物として本体利用する場合には、仮設時に発生した部材応力の本体設計における取扱い、施工時と完成後の作用の違い等について、特別な配慮を行う。なお、特殊な構造や施工方法を採用する場合は、別途、判断を要する。

標準

地下連続壁を本体構造物の壁体全部あるいは一部として利用する場合は、施工条件、作用条件、及び構造形式等を考慮して設計することを基本とする。

(5)仮設構造物の設計

考え方

開削工法の施工に用いる土留め壁等の仮設構造物は、仮設構造物の安定が保たれるように検討し、仮設構造物の設計においては許容応力度法を適用している。この設計手法においては、これまでの数多くの実績から仮設構造物として必要な性能を保持していることが明らかになっている。

具体的には掘削底面の安定、土留め壁の変位及び応力、支保工部材の応力と変位、周辺地盤や地下水など周辺への影響検討等を行う。設定した土留め壁の長さ、断面や支保工の構造等が、それぞれの検討において許容値を満足することを確認する必要がある。

標準

仮設構造物は、作用荷重、地形及び地質、土留め工の種類、掘削深さ、近接する構造物、周辺環境等を考慮して、安全かつ経済的となるように設計することを基本とする。

10.6.2 呑口部・流入施設

(1)呑口部

考え方

開水路形式において、計画流量をトンネル本体へ確実に分流し、流水を安定した状態でトンネル本体へ導入させる施設を呑口部という。(図 10-5)

トンネル構造による河川は、ゴミ・土砂等による閉塞が最も危険なため、河道特性に応じてスクリーン、除塵機、防除パイル等の防除対策を行う必要がある。また、接続する河川の流下土砂量が多い場合には、適当な沈砂池を設けることを検討する必要がある。

呑口部は、形状等が急変する所であり、流水の乱れが大きくなるため、トンネル本体の保護を目的に、護床工及び取付護岸を設ける必要がある。また、トンネルへの流入量が大きい場合は、接続する河川への影響を検討し、接続する河川を保護する護床工及び取付護岸を検討する必要がある。それらの範囲は、土質、水深、流速、流量、周辺の状況、トンネル本体の規模等を考慮し検討する必要がある。

トンネル本体の断面は一般に馬蹄形が多く、接続する開水路は矩形が多いため、流水をなめらかに流下させるために、遷移区間(トランジション)を設けることを検討する必要がある。特に、トンネル本体を2本以上とする場合は、均等に乱れなく分流させるために導流壁を設ける必要がある。

導流壁を設計する際には、必要に応じて水理模型実験を行う必要がある。

呑口部とトンネル本体の接続部は、屈とう性のある伸縮材(止水板及び目地材)を使用し、構造上の変位が生じても水密性を確保する必要がある。

なお、呑口部の設計において、水理検討が必要な場合は、水理公式集等を参照する。

図 10-5 呑口部の例

1)防除施設 - 流木や浮遊物などの流入により、トンネル断面が閉塞することを防止、あるいはポンプ運転に支障を与えないために、導水路部に設ける必要がある。

2)分流堰 - 計画流量を堰により分流させる方式として、正面越流方式と横越流方式とがあり、さらに構造上の分類としては可動堰と固定堰に分けられる。計画流量を確実に分流できるようにする必要がある。分流堰の設計は、「第1章第7節堰」を参照する。

3)導水路 - 導水路の設計は、「第1章第8節樋門」を参照する。

4)水門 - 水門の設計は、「第1章第9節水門」を参照する。

5)沈砂池 - 沈砂池の設計は、「第1章第11節排水機場」を参照する。

6)護床工、護岸 - 護床工は、「第1章第9節水門」、護岸の設計は、「第1章第4節護岸・水制」を参照する。

標準

呑口部の設計に当たっては、以下の事項を反映することを基本とする。

1)呑口部は、計画流量をトンネル本体へ確実に分流し、流水を安定した状態で導入できる形状とし、トンネル構造による河川全体として水理的な安定性が確保できるよう設計することを基本とする。

2)呑口部には、河道特性に応じて、ゴミ・土砂等に対して防除対策の必要性を検討することを基本とする。

3)呑口部が接続する河川においては、流入による洗掘や河床変動を防止し、接続する河川の安定性を確保するため、必要な範囲に護岸及び護床工を設けることを基本とする。

(2)流入施設

考え方

圧力管形式において、計画流量をトンネル本体へ確実に分流し、流水を安定した状態でトンネル本体へ導入させる施設を流入施設という。(図 10-6)

流入施設の形状は、流水が安定した状態で流入し、トンネル構造による河川全体として水理的な安定性が確保できるようにする必要がある。

トンネル構造による河川は、ゴミ・土砂等による閉塞が最も危険なため、河道特性に応じてスクリーン、除塵機、防除パイル等の防除対策を行う必要がある。また、接続する河川の流下土砂量が多い場合には、適当な沈砂池を設けることを検討する必要がある。

図 10-6 流入施設の例

1)防除施設 - 防除施設の設計は、「10.6.2 呑口部・流入施設(1)呑口部」を参照する。

2)分流堰 - 分流堰の設計は、「10.6.2 呑口部・流入施設(1)呑口部」を参照する。

3)導水路 - 導水路の設計は、「第1章第8節樋門」を参照する。

4)水門 - 水門の設計は、「第1章第9節水門」を参照する。

5)沈砂池 - 沈砂池の設計は、「第1章第11節排水機場」を参照する。

6)減勢施設 - 高低差(落差)を伴う流水の導入をする場合、空気の混入や高速流の影響を考慮し、流入する流水のエネルギーを減勢する施設が必要となる。減勢施設は立坑と一体となった構造とし、その基本形式として、落下式、斜路式、階段式等がある。これらの形式は、用地の制約、流入する流水の状況、空気の混入、減勢効果及びトンネル構造による河川への影響等を総合的に考慮し選定する必要がある。減勢施設の設計に当たっては、その効果を確認するために必要に応じて水理模型実験を行う必要がある。

7)護床工、護岸 - 護床工は、「第1章第9節水門」、護岸の設計は、「第1章第4節護岸・水制」を参照する。

標準

流入施設の設計に当たっては、以下の事項を反映することを基本とする。

1)流入施設は、計画流量をトンネル本体へ確実に分流し、流水が安定した状態で導入できる形状とし、トンネル構造による河川全体として水理的な安定性が確保できるよう設計することを基本とする。

2)流入施設には、河道特性に応じて、ゴミ・土砂等に対して防除対策の必要性を検討することを基本とする。

10.6.3 吐口部・排水施設

(1)吐口部

考え方

開水路形式において、流水をトンネル本体から接続する河川へ安定した状態で排水させる施設を吐口部という。(図 10-7)

吐口部の構造については、接続する河川に影響を与えないよう、すり付け部の形状や接続する河川への影響範囲を含めた水理検討を行う必要がある。

水理検討の結果を踏まえた上で接続する河川への影響(洗掘、河床変動、流況の変化等)を考慮し、減勢工、護床工及び取付護岸範囲を検討する必要がある。

吐口部とトンネル本体の接続部は、屈とう性のある伸縮材(止水板及び目地材)を使用し、構造上の変位が生じても水密性を確保する必要がある。

なお、吐口部の設計において、水理検討が必要な場合は、水理公式集等を参照する。

図 10-7 吐口部の例

1)減勢工 - 減勢工の設計は、「第1章第6節床止め、第7節堰」を参照する。

2)樋門、水門 - 樋門の設計は、「第1章第8節樋門」、水門の設計は「第1章第9節水門」を参照する。

3)護床工、護岸 - 護床工の設計は、「第1章第9節水門」、護岸の設計は「第1章第4節護岸・水制」を参照する。

標準

吐口部の設計に当たっては、以下の事項を反映することを基本とする。

1)吐口部は、流水が接続する河川へ安定した状態で排水できる形状とし、トンネル構造による河川全体として水理的な安定性が確保できるよう設計することを基本とする。

2)吐口部が接続する河川においては、排水による洗掘や河床変動を防止し、接続する河川の安定性を確保するため、必要な範囲に護岸及び護床工を設けることを基本とする。

(2)排水施設

考え方

圧力管形式において、流水をトンネル本体から接続する河川へ、安定した状態で排水させる施設を排水施設といい、一般に排水部(調圧水槽等)、機場部(ポンプ設備等)、吐出部(吐出水槽、樋門水門等)からなる。(図 10-8)

排水先が海域の場合には、波浪に伴う土砂堆積による影響を検討するとともに、高速流及び土砂を含む流水による船舶航行等の水面利用、漁業に与える影響について配慮する必要がある。また、河川の場合には、合流部の河床洗掘、護岸洗掘等の影響について考慮する必要がある。

図 10-8 排水施設の例

排水機場のポンプ規模の検討に当たっては、計画排水量、外水位(接続する河川)と内水位(トンネル本体側)との関係、トンネル構造による河川の特性(断面、防除施設、減勢施設による損失水頭等)を考慮した計画実揚程を設定し、経済性や維持管理の容易性等から適切なポンプ諸元(ポンプ容量、台数、形式等)の設定を行う必要がある。

なお、排水施設の設計において、水理検討が必要な場合は、水理公式集等を参照する。

1)調圧水槽 - 調圧水槽の必要面積・容量は、ポンプの始動に要する時間並びに再稼動時に必要となる容量等を考慮して設定する必要がある。また、ポンプの急停止又は急稼動時に発生するウォーターハンマー現象による水位変動から調圧水槽の規模を適切に設計する必要がある。ここで算定されたウォーターハンマー現象によって、各流入口部から洪水が逆流し、接続する河川に水害が発生するおそれがある場合には、調圧水槽の規模を大きくする等の対策を検討する必要がある。なお、調圧水槽のみでは対応が困難な場合には、ポンプの運転開始水位を下げる等の配慮を行う必要がある。また、設計に当たっては、「第1章第11節排水機場」を参照する。

2)吐出水槽 - 吐出水槽の設計は、「第1章第11節排水機場」を参照する。

3)排水機場 - 排水機場の設計は、「第1章第11節排水機場」を参照する。

4)樋門、水門 - 樋門の設計は、「第1章第8節樋門」、水門の設計は「第1章第9節水門」を参照する。

5)護床工、護岸 - 護床工の設計は、「第1章第9節水門」、護岸の設計は「第1章第4節護岸・水制」を参照する。

標準

排水施設の設計に当たっては、以下の事項を反映することを基本とする。

1)排水施設は、排水機場のポンプ規模、ウォーターハンマー現象が各構造に与える影響等を十分検討し、トンネル構造による河川全体として水理的な安定性が確保できるよう設計することを基本とする。

2)排水施設が接続する河川においては、排水による洗掘や河床変動を防止し、接続する河川の安定性を確保するため、必要な範囲に護岸及び護床工を設けることを基本とする。

10.6.4 立坑

考え方

1)山岳工法の立坑

立坑及び斜坑の位置の選定に当たっては、地形、地質、立坑及び斜坑の延長や維持管理を考慮し、施工性、経済性、安全性に優れた場所を選定する必要がある。特に、湧水を伴う不良地山での作業用の立坑及び斜坑では作業効率が低下し、大幅な工期の遅延や工費の増大を招くおそれがあるため、多量の湧水が予測される場所は避ける。ただし、避けられない場合には掘削工法に配慮し、施工設備については多少余裕のある容量のものを選定する必要がある。

施工に際しては、立坑及び斜坑では足元が切羽という特殊な状況にあることや湧水が掘削工に悪影響を及ぼすので、これらに対し事前に対策を立てておく必要がある。

立坑及び斜坑は、水平坑と異なり運搬作業に巻き上げ装置等を用いる等の上下方向での作業となるため、特に安全性に十分配慮した適切な施工計画を立てる必要がある。

工事完成後の作業用の立坑及び斜坑を本設備(換気坑、排水坑、非常用通路等)に転用しない場合は、トンネル本体及び地表に影響を及ぼさないよう補強や埋戻し等により適切な処置を講じる必要がある。

図 10-9 山岳工法の立坑の例

2)シールド工法の立坑

立坑は、シールド工法によるトンネル区間の端部、流入と排水や分水地点、内空断面の段階的な変化を伴う不良地質地点に立坑の位置を決めることが多い。シールド工法によるトンネルの施工延長が長い場合は、工期や施工性から立坑の位置が定められることもある。その上で、立坑用地の取得の難易度、掘削土や材料の搬出入にかかわる道路交通の状況や公共用地の有無等を考慮して、なるべく経済的かつ効率的となるように、立坑の位置を選定する必要がある。

通過型の中間立坑とは別に、シールド工法によるトンネルと地上もしくは地表付近の施設とアクセスするためにシャフト形式の小型立坑が、シールド工法によるトンネルの長距離化や大深度化の進展に伴い増えてきており、トンネル構造による河川における用途として、河川水の流入や排水用としての利用が考えられる。シールド工法によるトンネルの直上や、その脇に設けられ短い横坑で接続するといった構造形式が多く、シールド工法によるトンネルとは切拡げ施工で接合することが多い。なお、シールド工法によるトンネルと立坑は、坑口において異なる構造が地中で接合することから、接合部における止水性の確保とともに、地震時には相互に影響を及ぼすことから必要に応じて耐震性の検討を行う必要がある。

図 10-10 シールド工法の立坑の例

立坑及び斜坑の施工には各種工法(掘削工法)や方式(ずり出し)があり、使用目的に応じた断面の大きさ、深度、地山条件、工期、施工性、経済性等を総合的に検討して、適切な掘削工法やずり出し方式を選定する必要がある。立坑の平面寸法は、完成後の使用目的と施工時の機能等を考慮して決める必要がある。発進立坑では、シールドの投入と組立、掘進時の掘削土砂の搬出と資材の投入空間等、また、到達立坑では、坑口等の到達用仮設備とシールドの引き抜きや残置処理等を考慮する必要がある。中間立坑や方向転換立坑では、前述した到達と発進に必要な寸法のほか、ビット交換等の作業やシールドの方向転換等に必要な寸法を考慮する必要がある。立坑の深さは、トンネルの縦断線形、坑口寸法と底版躯体の厚さ、発進と到達等の施工に必要な寸法から決まる。立坑の縦断線形は、地盤条件、排水ピット等の施設も考慮して定める必要がある。

標準

立坑の設計に当たっては、完成後の洪水の流入、排水、換気等の機能、施工時の機能を考慮し、適切な位置や形状寸法を設計することを基本とする。

10.6.5 維持管理のために必要となる主たる施設

考え方

トンネル構造による河川は、巡視や監視、観測により覆工欠落、クラックの発生、インバートの破損、落盤の兆候等、トンネル構造による河川を構成する各施設の不具合等の状況を随時把握可能なように設計する。そのため、平常時にトンネル内をドライな状態にできる水門の施設を設置し、容易にかつ安全に巡視又は維持修繕工事ができるように、巡視員及び車両の通行と監視・観測設備等の整備を検討する。また、維持修繕工事を施工するために、上下流のいずれかに資材搬入路等が確保できるように必要空間を確保する必要がある。

吐口部・排水施設が堤防を横断する場合や平常時に接続する河川から流水がトンネル内に逆流するおそれがある場合は、水門及び排水工(トンネル内の湧水等を排除するためのもの)を設ける必要がある。

なお、洪水後にトンネル内の残留水を維持管理用のポンプで排水する場合、一般的には SS(浮遊物質量)が高い懸濁水であるため、必要に応じ沈殿等の処理を検討する必要がある。さらに、残留水等による臭気等が発生するおそれがあるため、施設内の作業環境、及び周辺の生活環境を保全するため、換気設備、脱臭設備の設置について検討する必要がある。

標準

維持管理のために必要となる施設の設計に当たっては、以下の事項を反映することを基本とする。

1)平常時に、容易かつ安全に巡視等が可能な構造とする。

2)平常時に、容易に土下流からトンネル内への河川水の流入をしゃ断できる構造とする。

3)維持修繕等の工事のための資材搬入路等が、確保可能な構造とする。

推奨

トンネル構造による河川においては、完成後の施設の機能が確実に発揮されるよう、周辺環境に十分配慮しつつ、以下項目に留意して、必要な維持管理を行うことが望ましい。

1)洪水後の残留水の排水と処理システム

2)洗浄、清掃設備

3)換気設備等

4)搬入、搬出、昇降設備

5)騒音、振動対策設備

10.7 構造に関するその他事項

考え方

1)ICT や BIM/CIM の利用

i-Construction 推進の一環として、ICT による建設生産プロセスのシームレス化が取り組まれている。レーザースキャナー計測等で得られる3次元点群データを活用することでトンネル内部の形状を把握することができ、新設する施設の3次元モデルを作成し活用することで、構造に関して関係者の理解と合意形成が促進される。このため、設計段階での地盤構造物への影響検討、施工段階の坑内計画、維持管理段階の点検・補修・修繕の段階においても BIM/CIM を積極的に活用し、トンネル構造による河川を構成する各構造物を適切に維持管理していくことができるように、設計、施工の成果を3次元モデルに反映しておくことも有用である。

国土交通省では、トンネル等の道路構造物の点検の効率化・高度化を推進するため、基本となる近接目視による点検を支援する新たな技術として、「点検支援技術性能カタログ(橋梁・トンネル)」を公表している。本カタログは、知識と技能を有する者が定期点検を行う際に、機器等の特性の比較整理に当たって参考とすることができるようになっており、画像計測技術、非破壊検査技術、計測・モニタリング技術、データ収集・通信技術から構成されている。トンネル構造による河川の点検等の効率化に当たっても、これらの技術を参考とすることも有用である。

2)点検の効率化・高度化の推進

国土交通省では、トンネル等の道路構造物の点検の効率化・高度化を推進するため、基本となる近接目視による点検を支援する新たな技術として、「点検支援技術性能カタログ(橋梁・トンネル)」を公表している。

3)安全・安心な施工等

トンネルは、性状を完全な形で把握することの困難な地山や地盤の中に構築されるため、地盤の不確実性とその影響を正しく認識し、設計・施工・維持管理といった様々な事業の段階において適切に対応することが必要であり、施工や維持管理に当たっての留意点の引継ぎを重要な留意事項として、調査や設計で得られた情報を正確に施工の主体に引き継ぎさせるとともに、さらに、施工時に得られた観察・計測データ等から必要に応じて設計の変更を行い、施工を進めることがトンネル設計・施工の特徴であることに留意する。この設計の変更の主体も含めて維持管理の主体に引き継ぎ、安全・安心な施工や維持管理を行えるようにすることが重要である。

トンネル施工時における安全確保(切羽安定、湧水対策等)や周辺環境の保全(地下水対策、地表面沈下、周辺構造物への影響等)に対して、必要に応じて補助工法等を用いて対策する必要がある。また、トンネル施工時にトンネル内に本川の流水が流入することがないよう、必要に応じて仮締切工等の設計を行い、安全で確実・円滑な施工が可能となるよう十分に配慮して設計する必要がある。

参考となる資料

ICT や BIM/CIM の利用については、下記の資料が参考となる。

1)ICT 施工の普及と拡大に向けた取組、令和5年9月、ICT 導入協議会.

2)BIM/CIM 活用ガイドライン(案)、令和4年3月、国土交通省.

3)点検支援技術性能カタログ(橋梁・トンネル)、令和7年4月、国土交通省.

トンネルの安全・安心な施工等については、下記の資料が参考となる。

4)シールドトンネル工事の安全・安心な施工に関するガイドライン、令和3年12月、シールドトンネル施工技術検討会.

5)東京外環トンネル施工等検討委員会報告書、令和3年3月、東京外環トンネル施工等検討委員会.

6)神奈川東部方面線新横浜トンネルに係る地盤変状検討委員会報告書、令和2年8月、神奈川東部方面線新横浜トンネルに係る地盤変状検討委員会.

7)トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会報告書、平成25年6月、トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会.

8)トンネル覆工のはく落発生抑制技術ガイドライン(案)、令和5年3月、国土交通省.

9)土木事業における地質・地盤リスクマネジメントのガイドライン、令和2年3月、土木事業における地質・地盤リスクマネジメント検討委員会.