3.5 水深による波の変形の算定

3.5.1 水深による波の変形の算定の基本

波が深海波の波長の1/2以下の水深に進行すると、波高、波長、波速、平均水位が変化するとともに、波の非線形性の影響が顕著となるため、これらの現象を考慮することを原則とする。

(1) 浅海域における波の変化

深海波が浅海域に入ってきた場合、波は海底の影響を受けて波向、波高等が変化する。

(2) 微小振幅波の水深のみによる波高及び波速並びに波長の算定

分散関係式は式 2-3-27 で表される。

σ2=gktanh(kh)(式 2-3-27)\sigma^2 = gk\tanh(kh) \tag{式 2-3-27}

浅水係数は式 2-3-28 で求められる。

Ks=HH0=C02nC,n=12(1+2khsinh(2kh))(式 2-3-28)K_s = \frac{H}{H_0'} = \sqrt{\frac{C_0}{2nC}}, \quad n = \frac{1}{2}\left(1 + \frac{2kh}{\sinh(2kh)}\right) \tag{式 2-3-28}

図 2-3-10 浅水係数の算定図

図 2-3-11 浅水における波の特性(微小振幅波)

3.5.2 浅水変形

波が深海波の波長の1/2以下の水深に到達した地点から、水深・換算沖波波高比が概ね4.0の水深帯では、波の浅水変形を考慮することを原則とする。

図 2-3-12 水深による波高変化

3.5.3 不規則波砕波を考慮した水深のみによる波高の変化

水深・換算沖波波高比が概ね3.0の水深帯では、波の非線形性が顕著になるとともに、波峰にエネルギーが集中して砕波するため、波の不規則性を考慮したうえで非線形性による浅水変形及び砕波を考慮することを標準とする。

砕波高・砕波水深

砕波高は式 2-3-29、砕波水深を式 2-3-30 を非線形浅水係数の式と組み合わせて計算を繰り返すことでも計算できる。

HbL0=A{1exp[1.5π(hb)incipientL0(1+11tan4/3β)]}(式 2-3-29)\frac{H_b}{L_0} = A\left\{1 - \exp\left[-1.5\frac{\pi(h_b)_{incipient}}{L_0}(1 + 11\tan^{4/3}\beta)\right]\right\} \tag{式 2-3-29}
Ks=Ksi+0.0015(hL0)2.87(H0L0)1.27(式 2-3-30)K_s = K_{si} + 0.0015\left(\frac{h}{L_0}\right)^{-2.87}\left(\frac{H_0'}{L_0}\right)^{1.27} \tag{式 2-3-30}

図 2-3-13 有義波高の最大値の出現水深の算定図

図 2-3-14 有義波高の最大値の算定図

3.6 波による平均水位の上昇

砕波帯内では、砕波に伴う水位の上昇及び振動が生じるため、原則としてこれらの現象を考慮する。

(1) 平均水位の上昇及び低下並びに振動

運動量フラックスの保存が成立することから、波の砕波に伴って平均水位が上昇する。この現象をウェーブセットアップ(wave set-up)と称している。一方、波が沖から砕波帯へ進行するに連れて浅水変形により波高が増大することから、平均水位は低下する。この現象をウェーブセットダウン(wave set-down)と称する。

(2) 砕波後の平均水位上昇量の算定

波の不規則性を考慮した砕波に伴う平均水位の上昇量は、図 2-3-15 から算定してよい。

図 2-3-15 平均水位の上昇量

3.7 越波量と打ち上げ高と伝達波高

3.7.1 越波量

越波量は、既往の知見又は水理模型実験等により、適切に算定することを原則とする。

越波量とは堤体を越波した水の総量であり、越波流量は単位時間当たりに越波する水の平均容積 QQ(m³/s)である。

(1) 直立護岸と消波工付護岸の越波流量

直立護岸と消波工付護岸については、合田らが不規則波による水理模型実験を行っている。

(2) 遊水部付き消波工を有する護岸の越波流量

遊水部付き消波工を有する護岸は、消波工付護岸よりも越波流量低減効果が高いことが証明されている。

図 2-3-16 遊水部付き消波工を有する護岸と消波工付護岸との越波流量の比較

(3) 許容越波流量と限界越波流量

護岸の設計における越波流量としては、0.02m³/m/sを設定している場合が多い。

3.7.2 打ち上げ高

打ち上げ高は、既往の知見又は水理模型実験等により、適切に算定することを原則とする。

3.7.3 伝達波高

伝達波高は、既往の知見又は水理模型実験等により、適切に算定することを原則とする。

(1) 伝達波 — 防波堤や透過式堤体では、越波や透過により伝達波が発生し、これにより港内静穏度が悪化する恐れがある。

(2) 波高伝達率に関する既往の水理模型実験結果

① 直立堤

a) 非砕波の場合(重複波型越波)

波高伝達率は式 2-3-31 で求められる。

Kt=HtH=0.5[1sinπ2α(RH+β)](式 2-3-31)K_t = \frac{H_t}{H} = 0.5\left[1 - \sin\frac{\pi}{2\alpha}\left(\frac{R}{H} + \beta\right)\right] \tag{式 2-3-31}

図 2-3-17 直立堤の波高伝達率(重複波型越波)

b) 砕波の場合(砕波型越波)

Kt=HtH=0.70ez(式 2-3-33)K_t = \frac{H_t}{H} = 0.70e^{-z} \tag{式 2-3-33}

図 2-3-18 直立堤の波高伝達率(砕波型越波)

② 傾斜堤(人工リーフを含む)

a) 消波ブロック堤

越波がない場合(R/H1R/H \geq 1):

Kt=HtH=1(1+1.135(Bs/d)0.66(H/L)0.5)2(式 2-3-35)K_t = \frac{H_t}{H} = \frac{1}{(1 + 1.135(B_s/d)^{0.66}(H/L)^{0.5})^2} \tag{式 2-3-35}

b) 捨石堤

図 2-3-19 捨石傾斜堤の波高伝達率

c) 人工リーフ

図 2-3-20 人工リーフの諸元

人工リーフの波高伝達率は式 2-3-40〜2-3-43 で求められる。

Kt=HtH=KbKfKe(式 2-3-40)K_t = \frac{H_t}{H} = K_b K_f K_e \tag{式 2-3-40}

③ 混成堤

図 2-3-21 混成堤の波高伝達率

④ 消波ブロック被覆堤

Kt=HtH=0.3(1.1RH)(式 2-3-44)K_t = \frac{H_t}{H} = 0.3\left(1.1 - \frac{R}{H}\right) \tag{式 2-3-44}

図 2-3-22 消波ブロック被覆堤の波高伝達率

3.8 航走波

航走波を考慮する場合には、既往の知見等により、適切に算定することを原則とする。

3.8.1 航走波

航走波は航跡波ともよばれ、港内の擾乱を引き起こし、漁船やプレジャーボート等の小型船を動揺させ、陸揚や出漁準備の妨げとなることがある。したがって、特定目的岸壁などがあり、大型船が航行する漁港においては、航走波を考慮する必要がある。

3.8.2 航走波の特性

一般に航走波の波高は、船の速度の3乗に比例するが、12ノット以下の速さであれば大型船の場合でも波高は一般に60cmを越えない。

航走波の概略波高の算定にあたっては、式 2-3-45 を用いてもよい。

H=(LsSsinθ0)1/3EHPW/7352.2LsVKα(VVK)3(式 2-3-45)H = \left(\frac{L_s}{S}\sin\theta_0\right)^{1/3}\sqrt{\frac{E_{HPW}/735}{2.2L_sV_K}}\alpha\left(\frac{V}{V_K}\right)^3 \tag{式 2-3-45}

ここに、HH: 航走波の波高(m)、LsL_s: 船の長さ(m)、SS: 任意点から航跡中心線までの距離(m)、θ0\theta_0: 測定点と航跡中心線とのなす角、VKV_K: 満載航海速力(ノット)、EHPWE_{HPW}: 造波馬力(PS, W)、α\alpha: 浅水効果による波高増大係数、VV: 実際の航行速力(ノット)

造波馬力の算定法は次による。

{EHPW=EHPEHPFEHP=0.6SHPmEHPF=ρ2SV02CFV0S2.5LsCF=0.075/(logV0Lsν2)2(式 2-3-46)\begin{cases} E_{HP\,W} = E_{HP} - E_{HP\,F} \\ E_{HP} = 0.6 S_{HP\,m} \\ E_{HP\,F} = \dfrac{\rho}{2} S V_0^2 C_F V_0 \\ S \fallingdotseq 2.5 \sqrt{\nabla L_s} \\ C_F = 0.075 / \left(\log \dfrac{V_0 L_s}{\nu} - 2\right)^2 \end{cases} \tag{式 2-3-46}

ここに、SHPmS_{HP\,m}: 連続最大軸馬力(SP, W)、ρ\rho: 海水の密度(kg/m³)、V0V_0: 満載航行速力(m/s)V0=0.514VKV_0 = 0.514 V_KCFC_F: 摩擦抵抗係数、ν\nu: 水の動粘性係数(m²/s)ν1.2×106\nu \fallingdotseq 1.2 \times 10^{-6}\nabla: 船の満載排水量(m³)

また、波高増大係数 α\alpha の算定方法は以下の通りである。

{α=(VV0)2V=V0tanhghV02(V0<gh)=V0(V0gh)(式 2-3-47)\begin{cases} \alpha = \left(\dfrac{V'}{V_0}\right)^2 \\[6pt] V' = \dfrac{V_0}{\sqrt{\tanh \dfrac{gh}{V_0^2}}} \quad (V_0 < \sqrt{gh}) \\[6pt] \quad = V_0 \qquad\qquad (V_0 \gg \sqrt{gh}) \end{cases} \tag{式 2-3-47}