第6章 流れ

6.1 流れの基本

流れは、設計対象施設の設置位置における実測値又は推算値をもとに、流速及び流向を適切に設定するものとする。

漁港・漁場の施設の設計にあたっては、定常流とみなされる流れの影響がある場合、その影響を考慮することを原則とする。

漁港・漁場及びその周辺における流れは、海浜流、潮流(潮汐流)、海流、吹送流、河口流等からなるが、実際に測定される流れは、これらの流れに波動流が複合した非常に複雑なものである。

6.1.1 海浜流

海浜流は砕波帯周辺において生じる流れの総称である。波が汀線方向に進行すると、波による質量輸送による流れが岸に向かって生じる。これを向岸流という。

6.1.2 潮流

潮流は、潮汐によって発生する流れであり、場所によって大きく異なるが、周期性があり、経験的な手法(調和解析)により予測が可能である。

6.1.3 海流

海流は、黒潮、親潮、対馬海流などの地球規模でおこる海水の水平方向の流れの総称である。

6.1.4 吹送流

吹送流は、海上を吹く風と海面との摩擦によって生じる流れである。その速度は、海面付近で最大で、深さ方向に減少し、設計の実用上、50m以上では無視してよい。通常、海面では風速の2〜4%程度の流速が生じる。

6.1.5 河口流

河口流は、河川の流れ及び感潮区間の入退潮に起因する流れの総称である。

6.1.6 波動流

波動流は、波浪下で生じる振動流である。局所的な流れとしての波動流速は、水面波形が正弦波で近似できる場合は、微小振幅波の式 2-3-2 により算定できる。

6.2 流れの諸元

漁港・漁場の施設の設計に使用する流れの諸元は、設計対象施設の設置位置における実測値又は推算値に基づいて最も厳しい条件を設定することを原則とする。

構造物の設計に用いる流れの諸元は流向、流速であり、下記の事項を参考にして設計対象施設の設置位置における実測値又は推算値に基づいて最も厳しい条件を設定することを原則とする。

  1. 実際に測定される流れは種々現象を含んだ複雑なものであるので、十分にその内容を分析することが必要である。
  2. 干満差の著しく大きな箇所、海峡、水道、潟湖の水路等では潮汐流が卓越している場合が多い。
  3. 長い水道、海峡等では、風による吹送流が卓越している場合がある。
  4. 相当大きな河川が流入する所においては、河口付近で河口流(河川流を含む)及びその補流によって支配される場合がある。

6.3 水中の構造物に作用する流れの力

水中の構造物に作用する流れの力は、【流れ】及び【波】の規定に従って設定した流れ及び波の諸元、部材及び構造物の形状、粗度等を考慮して、適切に算定するものとする。

定常流とみなせる流れによる水中の部材及び構造物に作用する流れ方向の力は、抗力と呼ばれ、流速の2乗に比例する関数の式 2-6-1 で算定することができる。

FD=12ρCDSAUc2(式 2-6-1)F_D = \frac{1}{2}\rho C_{DS} A U_c^2 \tag{式 2-6-1}

非定常流中では、流速の2乗に比例する抗力のほかに水粒子加速度に比例する慣性力が作用し、その力は式 2-6-2 で表されるモリソン式により求められる。

F=12ρCDAuu+ρCMVut(式 2-6-2)F = \frac{1}{2}\rho C_D A |u| u + \rho C_M V \frac{\partial u}{\partial t} \tag{式 2-6-2}

揚力は抗力と同様に流速の2乗に比例する関数で表され、式 2-6-3 を用いて算定される。

FL=12ρCLAU2(式 2-6-3)F_L = \frac{1}{2}\rho C_L A U^2 \tag{式 2-6-3}

ここに、FDF_D: 抗力(kN)、ρ\rho: 水の密度(t/m³)、CDSC_{DS}: 定常流中での抗力係数、AA: 物体の基準面積(m²)、UcU_c: 定常流の速度(m/s)、CDC_D: 非定常流中での抗力係数、CMC_M: 慣性力係数、VV: 物体の基準体積(m³)、CLC_L: 揚力係数、uu: 水粒子速度(m/s)

定常流中の抗力係数と揚力係数は式 2-6-4 で定義されるレイノルズ数の関数であることに留意して、既往文献又は実験により適切な値を定める必要がある。

Re=UcDν(定常流の場合)(式 2-6-4)Re = \frac{U_c D}{\nu} \quad \text{(定常流の場合)} \tag{式 2-6-4}

ここに、DD: 物体の代表幅(m)、ν\nu: 水の動粘性係数(1.00×1061.00 \times 10^{-6} m²/s)